コトノハよ、まわれ。まわれ。

日向月

「ねぇ、肝試ししない?」

「ねぇ、肝試ししない?」

某SNSアプリの着信と共に送られてきた一つのメッセージ。

8月1日。

7月が終わったにも関わらず何も手がつけられておらずただ積み上げられた大量の宿題。

けたたましく騒ぐ蝉や子。

我先にと涼しい部屋に入り込もうとする暑さ。

何が原因か、全部が原因か。

頭が今の現状から解離したいらしく、いつもは死んでも行きたくないはずのそれを受け入れたがっていた。

理性は仕事をしておらず、本能の赴くまま返事を投下する。

すぐに着信が鳴る。


「OK。じゃあ7時に学校近くの裏山ね。」











藤色から赤みのかかった橙色のグラデーションがかかった空。

私を含めて四人、遊歩道の手前の道に集まっていた。

皆山の中に入ると言う事で何かしらの虫対策はして来ているようだった。

遥か遠くの山頂の前を烏が二羽通りすぎていく。

ここには一つ有名な都市伝説の様なものがある。


この山道の途中の分れ道に古びた神社がある。

鳥居の入り口にある蝋燭と途中にある五つの灯籠、計六ヶ所に火をつける。

そして本道にお参りしに行った後、その蝋燭を消して帰ると願いが叶うと言われている。

途中で帰ったり、蝋燭の火を消し忘れたり、蝋燭を全て着けないで本道についたりしたら、呪われるらしいが実際逃げ帰った子に実害は無かったので怖さを倍増させるための嘘だろうと言われたり言われなかったり。


「それじゃあ、行こうか。」

「ねえ、待って。これ一人ずつ行ったほうがいいんじゃない?」

「え、何で?」

「ほら」


例の神社の入り口の鳥居の近くにある木で作られた看板を指差す。

一人が懐中電灯で照らした。


ある日、四人の村人が一夜様に願いを申しに来た。


一人は、富豪。

一人は、恋愛成就。

一人は、亡き人への再会。

一人は、干天慈雨。


しかし、その後7日立つたび、消えていく。

人々は、陰陽師や僧に助けを乞うが、それも虚しく消えていく。


ただ一人、干天慈雨、誰かを助けることを望んだ人は7日たっても消えなかった。


家族が安心した矢先、その二日後のその人もまた姿を消してしまった。



ってあるけど。」

「でも三人は自分の事を願ったからで、誰かの役に立ちたかった最後の一人は7日、一週間を過ぎても消えなかったんでしょ、大丈夫じゃない?それに一人ずつ行ってたら、帰る頃には補導対象だよ。」

「それはそうだけど・・・本当に大丈夫?」

「大丈夫だよ、だって、途中で放棄した子も何もなかったんでしょ?」


確かにそうだ。

他の二人もその事には何も言えなくなる。

結局、話は『四人で行く』と言うことで意見がまとまった。

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