第161話 魔都、封印!
「ふう、ギリギリだった……」
「それよりアコ、出来たって?」
「はい、この水晶を媒介に魔都のシステムの一部を動かせます!」
「ちょ、俺にねぎらいの言葉は?」
2人が自分の功績を認めてくれない事に、ユウタスはがっくりと項垂れた。その2人の内の1人、魔法担当のアコは水晶を握るとそこに魔力を注ぎ始める。
「我が魔力に答えよ!」
この言葉に水晶が反応し、魔都の迎撃システムが動き始めた。作動を確認したアコの顔が途端にほころぶ。
「成功です。これで白龍のサポートが出来ますよ!」
「よし、でかしたアコ!」
幸い、龍の戦いは3人の視認出来るところで続いていた。完全にシステムを掌握したアコは、まだ生きている魔都の全攻撃力を黒竜に向けて放つように命令を下す。
「全砲門開け、目標は黒竜!」
この指令を受け、魔都の残存攻撃エネルギーが全て黒竜に注がれた。カロの時とは違い、集中砲火を受け続けた黒竜は流石に無傷では済まなかったようだ。
「うぐぐ……まさか魔都のシステムを使いこなす人間が他にもいるとは、誤算だったぜ」
身体のあちこちから体液を吹き出しながらグーヴは周囲に幾つもの魔法円を構築、魔都の攻撃システムへの攻撃を開始する。
その行動を読んだアコは、すぐに迎撃の指示を下した。
「破壊はさせない!」
グーヴの攻撃と魔都の魔法砲の威力はほぼ同じ。ただし、魔都は現時点で既にかなりエネルギーを使っていたため、我慢比べが続けば黒竜側が有利になってしまう。
そう言う事情もあって、アコは短期決戦で戦いを終わらそうとしていた。
「最大出力! この街の本気を見せて!」
「うおおお! 俺様の力を舐めるなあ!」
グーヴの意識が完全に魔都破壊に向いたその時、白龍のホワイトブレスが邪悪な黒き竜の体を包み込んだ。この全くの不意打ちに、グーヴは断末魔の叫び声を上げる。
「グォアアアアーッ!」
既に魔都からの攻撃であちこち傷だらけになっていたのもあって、闇を浄化する白い炎をまともに浴びた黒竜の身体は、その体を維持出来なくなっていた。
少しずつ体が消えていくのを確認したグーヴは、自らの手を見つめながら最後の時を悟る。
「まさか、ここれ終わるとはな……あはは……こんなものかよ……」
「グーヴ……お前の罪もこれで許されるだろう」
「はっ! 罪だと? お前がそれを……ふふ……あっはっはっは……」
白龍セランが見守る中、黒竜グーヴは笑いながら白い炎の中に消えていった。こうして全てが終わったところで、魔都全体を包み込む魔法組成が一気に急変する。この異常事態は魔法感覚の薄いアレサやユウタスでも分かるほど。
今から何かとんでもない事が起こる雰囲気を感じた2人は、この謎のプレッシャーに耐えきれず挙動不審になる。
「な、なんだこれ……」
「やばい、これはヤバイよ」
恐怖で仲間の語彙力が喪失する中、唯一冷静だったアコに魔法庁からのメッセージが直接脳内に届いた。
(早くみんなそこから逃げて、術式が発動する!)
(オハルさん? 何で? 発動は私達の合図があってからじゃ……)
(ごめん、説得出来なかった。とにかく急いで)
思念波はここでいきなり途切れる。かなり切迫した事情を察したアコは、ゲートの準備をしつつ混乱する2人に声をかけた。
「2人共、術式がはつ……」
アコが全てを伝え終わる前に魔都の中心に黒い玉が発生し、一気に都市全体を包み込む。その途端にいきなり極小のブラックホールが発生し、魔都そのものが消失。大陸から呆気なく姿を消してしまった。
魔都があった場所はそっくりそのまま抉れ、クレーターのような深い穴があるばかり。
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