第160話 アコの考えたとっておきの作戦
「魔都のシステムを利用しましょう!」
「出来るのか!」
「末端のものなら何とか……出来るかも知れません」
「よし! それで頼む!」
アコの作戦を聞いたアレサは目を輝かせる。こうして、白龍セラン必勝計画が発動した。まずは、システムに接続するために無事な端末探しから始まる。
周囲は龍同士の戦いで破壊の限りを尽くされていたので、少し離れた地域を探す事になった。乗り気なアレサとアコに引っ張られる形で、ユウタスも後を追いかける。
「ちょ、俺を置いていくな~っ!」
幾つかの建物を回っていると、奇跡的に破壊を逃れた小さな一軒家くらいの大きさの建物が見つかった。3人は吸い込まれるように中に入っていく。中はどうやら昔はお店だったようで、商品を並べる棚がきれいに並べられられていた。残念ながら既に商品は何も並べられてはいなかったけれど……。
建物に入ってすぐに、アレサは顔を素早く左右に振った。
「ここにその端末は?」
「えーっと……」
「ああもう、こうしている内にセランが倒されたらどうすんだよっ!」
「アレサさん、落ち着いて……あった!」
何とかお目当ての端末を見つけたアコは、そこに行ってペタペタとあちこち触り始める。しばらく触って感覚を掴むと、懐から小さな水晶玉を取り出して端末のくぼみにセットした。
この様子を見たアレサは首をひねる。虹色に光るその水晶玉は、この時に彼女が初めて目にしたものだったからだ。
「それは?」
「さっきアレサさんを探している時に拾ったんです。何かに使えるかと思って」
「まあいいや、使えそうか?」
「多分使えるはずです、ほら」
アコが操作をしていると、やがて端末が稼働し始める。そうして、いきなり上空の2体の龍が戦う映像が映し出された。
アレサは身を乗り出して、その様子を凝視する。
「おい、これ!」
画面上の2体の龍はほぼ互角の闘いを続けている。ただ、白龍は出来るだけ魔都を壊さないように動くのに対して、黒竜はそんなのお構いなしに破壊を続けていた。縦横無尽に動き回る2体は、やがてアレサ達のいるこの建物の側まで移動してくる。
それが分かったユウタスは、端末からずっと動かない2人を急かした。
「ヤバイよ、早くここを出ないと!」
「アコ、まだ時間かかる?」
「大丈夫、水晶玉にコントロールを移せば……」
アコは端末に向かってものすごい早さで手を動かし続ける。残りの2人はその操作の意味すら分からなかったものの、だからこそ、その行為を邪魔する事が出来なかった。
それでも時間は容赦なく過ぎていく。龍達は近付いてくる。気ままに破壊を楽しむグーヴは当然として、セランもまた3人がこの場にいる事を知らないのだ。ずっと留まっていたら、破壊のとばっちりでこの建物も無事では済まないかも知れない。
迫りくる緊張感の中、限界を超えたユウタスはアコの肩を掴んだ。
「もう時間がない。端末は別のを使おう。ここを出るんだ」
「待ってください、後もうちょっとなんです!」
「そうだユウタス、もうちょっとなんだよ!」
「こっちだって時間がないんだ!」
そんな押し問答がしばらく続く。女子2人に押し切られそうになりながらも、ユウタスだって引く事は出来ない。その時、3人の至近距離で黒竜の破壊光が炸裂する。そのタイミングでアコが笑顔で振り返った。
「出来ました!」
「間に合ええええええっ!」
ユウタスは女子2人を抱きかかえると、最高速度でその場を離脱。天空神の加護の力もあって、何とか建物が破壊される前に脱出に成功する事が出来た。
ぺしゃんこになったさっきまで自分達がいた建物を眺めながら、ひと仕事終えたユウタスは額の汗を拭う。
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