第158話 カロ戦決着! しかしまた問題が……

 父親も感覚を研ぎ澄ますものの、今度は迫りくる攻撃に防御が追いつかなかった。


「魔導キーック!」

「うぐうう……」


 カロの重いケリをその身に受けた父親は、観戦していたユウタスの近くまで吹っ飛んだ。そうして、自分の息子が側にいる事に気付いた彼はある作戦を思いつく。


「ユウタス、来い」

「は、はいっ!」


 師匠の言葉に素直に従ったユウタスはすぐに駆け寄る。そこで、父親は懐からある物を手渡した。


「これは?」

「それが本物の天空神の加護だ。今のお前になら使いこなせるだろう。2人で倒すぞ!」

「はいっ!」


 師匠からのとっておきのプレゼントに、ユウタスのテンションは上がりまくる。彼が加護をセットしている間に、この企みに気付いたカロが超スピードで迫ってきた。


「させないよおっ!」


 超スピードで迫ってくるアマゾネスに対し、その行動を読んでいた父親は息子を抱えると背中の羽を羽ばたかせて一気にその場から離脱。カロの攻撃は紙一重で不発に終わる。


「ちいっ!」

「準備は出来たか?」

「はい!」


 本物の天空神の加護を身に着けたユウタスの戦闘力がみるみる上がっていく。それを見た父親は、コクリとうなずいて息子の顔を見た。


「では、いくぞ!」


 2人はお互いにうなずき合い、息を整える。そうこうしている内に、怒りに震えるカロもまた迫ってきていた。武闘派天空人親子は冷静にタイミングを見極め、殴りかかってきたアマゾネスに見事なカウンターをぶち当てる。


「「激烈・龍星多段撃!」」

「ギャアアアーッ!」


 息の合った拳を同時に受けたカロはそのまま魔都のエリア外まで吹っ飛んでいった。魔都の魔力の加護を失えば、地面に叩きつけられたダメージはダイレクトにカロの身体に伝えられる。これでもう彼女は再起不能だろう。

 こうして、伝説の魔女との戦いはしっかりと決着がついたのだった。


「やったな」

「てへへ」


 武闘家親子は満面の笑みで肘を軽くぶつけ合う。その後、2人はしばらく勝利の余韻に浸っていたものの、魔法庁でのやり取りを思い出したユウタスはすっと真顔になった。


「師匠、ここはもうすぐ封印されるんだ。だから離れないと」

「なるほど、そう言う段取りなのだな。分かった。ユウタス、天空島で待っているぞ」

「うん、またたくさん土産話を持って帰るから」


 ユウタスは去っていく父親を見えなくなるまで見送った。そうして、自分達も帰ろうと振り返ると、思いの外焦っているアコの姿が目に入る。


「何かあった?」

「アレサが! いないんです!」

「えっ?」


 どうやらユウタスの父親とカロの戦いに2人が夢中になっている間に、アレサは別行動を取っていたらしい。大事な仲間を見失ってしまった事に、ユウタスはがっくりと肩を落として落胆する。


「俺達がここに戻ってきたのは、アレサを連れ戻すためだったのに……」

「反省は後です! 探しましょう。きっとまだ近くにいるはずです!」

「ああ!」


 こうして2人はいなくなったアレサを探すべく、無人の魔都を駆け回った。彼女がどこに行ったのか、まるで見当もつかないまま――。

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