第157話 パワーVSパワー

「ふんぬううう!」

「やるじゃないか。天空人の戦士は魔法を気合で相殺出来るのかい!」

「私は地上で傭兵もしていてね。魔法使いとの戦いも経験済みなのさ」

「ふん、私をその辺の雑魚と一緒にされちゃ困るよ!」


 カロは、超スピードで突進して殴りかかってきた父親の攻撃をテレポートでかわす。空振りに終わった事ですぐに方向転換した父親は気配を読み取り、次にカロが出現する場所に当たりをつけて飛ぶ。

 カロが姿を表したタイミングで父親は殴りかかり、防御の間に合わなかった魔女はそのまま地上に叩きつけられた。


「ぐえっ!」

「どうした? その程度かな?」

「ふん、なら対等な相手をしてやろうじゃないか」


 父親に挑発されたカロは、まるでほぼダメージを受けていない風にすっと立ち上がると、ロッドを握っていた右手を上げる。何か仕掛けてくると父親が身構える中、ロッドが魔都のエネルギーを集め始めた。そうして一際大きく光を発してそれが収まった時、魔法使いとしてのカロはそこにいなかった。父親と同じ、武闘派スタイルに変わっていたのだ。

 そのあまりの変わりように、ユウタスは目を見張る。


「な、何だアレ!」

「ほう、魔法を捨てたか」

「あなたに敬意を表して同じスタイルで戦ってあげるわ」


 スタイルチェンジしたカロはまるで女子プロレスラーのような衣装になり、その身には魔都の魔力を纏わせていた。その魔力によって、筋力をブーストさせているのだろう。


 本来のカロは長い年月を生きて既に老いた肉体のはずなのに、ブーストした状態の今の姿はとても若々しく、まるで20代前半のような体型だ。武闘派スタイルのカロは、まるで歴戦の戦士のように格闘の構えを取る。

 その様子を目にした父親は、ほうと軽く感心した。


「同じ土俵に上がってくれるとは、見上げた心意気だ。いいだろう。誠心誠意相手をしよう」

「今度はあなたがひれ伏す番よ!」


 カロはそう言った途端に姿を消す。勿論今度のは魔法ではない。超スピードで移動して視界に捕らえられなかったのだ。勿論それはこの戦いを見守る側の感想に過ぎない。

 対峙していたユウタスの父親は目に見えなくとも、研ぎ澄まされた感覚で相手の動きをしっかりと把握していた。


「むうううん!」


 死角からの攻撃を、最初から分かっていたかのように腕でガードする。超スピードで繰り出した拳をあっさり防がれたカロは、反撃が来る前にすぐにその場から距離を取った。


「あの攻撃を見切るとは、流石だね」

「中々いいものを持っているな。今度は私から行くぞ」


 父親はすぐに攻撃に移る。天空島の戦士の中でも有数の実力者である彼は、さっきのカロのスピードに匹敵する速さで一気に距離を詰めた。しかし相手も今は同等の能力を持っているため、中々攻撃の間合いに持ってはいけなかった。

 この超スピードの攻防に、ユウタスは目が離せない。


「次元が違う……参考になりまくるぜ」

「でもこれ、お父さんが倒されるって事はない?」

「大丈夫、実は俺もまだ一度も師匠の本気を見た事はないんだ。今日はそれが見られるかも知れない……」

「そ、そうなんだ……」


 興奮するユウタスにアコは困惑。その後も超次元の格闘戦は続き、徐々にカロにもユウタスの父親にも生傷が増えていく。


「光輝パンチ!」

「ぐえっ!」


 何度目かのやり取りの後、父親の拳がカロの頬にダイレクトヒット。彼女はそのまま吹っ飛び魔都のビルひとつが崩れ去った。そこまでの攻撃を受けてなお、カロは何事もなかったように起き上がる。魔力ブーストのおかげだ。

 そうして、またしてもそこで姿を消した。

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