第156話 ムッキムキな助っ人、現る
その時、遙か上空からものすごい勢いで魔都に向かって何かが接近。その何かは今まさにアコを襲おうとしていたカロにぶつかり、地上に激突する。
地表に大きなクレーターを作ったそれは――ユウタスの父親だった。
「ふう、少し着地に失敗した」
「し、師匠?」
この意外な乱入者の登場にユウタスは目を丸くする。ユウタスの父親は頭をかきながら、驚く息子の方に顔を向けた。
「おお、ユウタス、そこにいたか。元気そうで何よりだ」
「一体どう言う事……」
「話は後だ。来るぞ!」
父親は手を伸ばして息子の話を静止する。その厳しい線の先にはさっき彼が吹き飛ばした伝説の魔女の姿。
カロは父親の不意打ちの一撃によって500メートルほど弾け飛んでいったものの、その衝撃を自身の魔法によって無力化させ、すぐに反撃に転じていたのだ。
「お前は彼女を保護して離れていろ!」
「し、師匠は?」
「私はあいつに用がある!」
父親は片手でお姫様抱っこしていた失神中のアコをユウタスに託すと、背中の羽を出して飛び立った。その進行方向の先には怒り心頭の伝説の魔女。実力者同士の戦いが今ここに幕を開ける。
「誰だか知らないけど、私の邪魔をするものは容赦しないよおお!」
「それはこっちの台詞だ! 天空島を攻撃したその罪、償うがいい!」
どうやら、ユウタスの父親は天空島を攻撃したのをカロの仕業だと思いこんでいるらしい。ユウタスはその誤解を敢えて説明しなかった。
カロもまた一切弁解をせず、この天空島からの刺客に対して真正面からぶつかっていく。
「くらええ! 魔法球無限弾っ!」
先制攻撃をしかけたのはカロの方だった。彼女の周囲の空間から無数の魔法球が出現し、向かってくる天空人に向けて次々に発射されていく。
対する父親は、それを拳ひとつで全て弾き落としていた。
「ふんふんふんふん!」
「さ、流石は師匠……」
父親の化け物じみた実力に、ユウタスは感嘆の声を漏らす。この時、彼とアレサは戦う2人から十分な距離を取って、その伝説級の戦闘を固唾を飲んで見守っていた。
「やっぱすげえな、お前の父親は」
「まぁ、師匠だからな」
「う……あれ……」
2人が戦いに見入っていると、ユウタスにお姫様抱っこされていたアコが目を覚ます。そうして、抱かれている事に気付いて頬を真っ赤に染めた。
「きゃ、きゃあっ!」
「あ、起きた? ごめん、すぐ下ろすよ」
ユウタスは丁寧にアコを下ろすと、すぐに視線を元に戻す。師匠である父親の戦いをしっかり目に焼き付けるためだ。まだしっかり状況の把握出来ていないアコは、同じ方向を向きながら目の前で展開されている景色に戸惑いを隠せなかった。
「一体、何が……」
「アコのピンチを師匠が助けてくれたんだよ。それで今はあんな有様さ」
「ユウタスのお父さんが? どうして?」
「魔都が天空島を攻撃したからね。そう言う事」
その説明に納得したアコは戦いに見入る2人同様に、その伝説の戦闘を見守る事にした。こうして3人に見守られながら、伝説の魔女と歴戦の天空人のバトルは続いていく。
カロによる複合攻撃魔法は父親の気合と筋肉によって全て弾き飛ばされ、傍目から見ればその実力差はほぼ互角に見えた。
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