第153話 魔都の力を使うカロVS仲間の力を借りるアコ
「ちょ、これって……」
「化け物だよ……。さすがは伝説の魔女だ」
「お2人共、気をしっかり持ってください。萎縮していては本来の能力も発揮出来ません」
アコは、すっかり意気消沈した2人に自らの魔力を逆流させて勇気づける。体に突然流れ込んできた生命エネルギーを実感した2人は、そこで落ち着きを取り戻した。
ユウタスは、流れくる力を精神の深いところで受け止めながらアコの顔を見る。
「俺達が平常心を保てれば、あいつに勝てるんだよな」
「勝てるかは分かりませんが……絶対に負けはしません!」
勝利を問われたアコは、拳を握りしめて精一杯のドヤ顔を見せる。その可愛らしい強がりを目にしたユウタスは、ゴクリとつばを飲み込んで覚悟を決めた。
「分かった、俺はアコを信じる!」
「お、俺だって、信じるぜ……」
ユウタスに続いて、アレサもアコに顔を向けると力強くうなずく。こうして3人の心はひとつになった。気合を入れた3つの顔が伝説の魔女と対峙する。
カロは立ち向かってくる挑戦者の面構えを認め、口の端を耳の近くまでぐいっと上げた。
「最後のお祈りは済んだかい? じゃあフィニッシュだよ!」
「来ます! 2人とも私としっかり繋がってください」
「「ああ!」」
カロはロッドをかざすと魔都の魔力を凝縮してエネルギーに転換させる。それらは無数の光の矢となってアコ達3人に向けて解き放たれた。この真っ直ぐに飛んでくる殺人光線に対し、アコは2人の協力者の力を借りて増幅させた魔力防御壁で対抗。
「くうう……っ!」
魔法で構築された壁はカロの攻撃をしのぎはするものの、徐々に亀裂が入り、とても向かってくる全ての光の矢を防ぎ切る事が出来そうな雰囲気ではなかった。
アレサは、この迫りくる無数の悪意に恐怖心を抱く。
「おいこれ持たねぇんじゃねえのか?」
「いえ、このレベルのものが来る事は想定の範囲内です!」
アコは合掌するように手を合わせると、静かに呪文を詠唱。魔法円がその場に展開していき、防御壁がその性質を変化させていった。
「光には鏡! 球体鏡面壁!」
変化が完全に終了した時、3人の周囲を守る壁は完全に光を反射する鏡面に変わり、カロの攻撃の完全無効化に成功する。
この成果に、アレサはほっと胸をなでおろした。
「良かった、助かった」
「まだまだです。すぐ次の攻撃が来ます」
「お、おう……」
いつにもまして真剣なアコにアレサは言葉を飲み込む。3人の中で敵対相手の事を一番知っているからこそ、アコは緊張を緩める事がなかった。
伝説の魔女と呼ばれたカロは無数の属性の魔法を使いこなし、そのどれもが規格外の威力と精度で他の追随を許さない。その伝説の通りに、彼女は光の矢攻撃を防がれたと分かった瞬間に別の攻撃方法を選択していた。
「光の矢は防いだかい。少しはやるね。じゃあこれはどうだい!」
カロが叫んだ瞬間、アコ達の周囲の重力が大幅に増加する。突然負荷が増大した事に対応しきれなかった3人は、それぞれが苦悶の表情を浮かべた。
「うわあああ!」
「くうううっ!」
「キャアアア!」
際限なく増大していく負荷にまずはアレサが倒れた。拳闘士として鍛えているユウタスも片膝をつく。魔法耐性がそれほどではない2人には、この見えない攻撃は体にかなりの負担をかけているようだ。アコは対魔法特化の装備をしていたためギリギリで持ちこたえていた。
攻撃の種類が分かったところでそれに対応する防御組成に切り替えたものの、2人が立ち上がったのはエネルギー負担が増してアコの呼吸が乱れるようになってからだった。
「はぁ……はぁ……」
「だ、大丈夫か、アコ……」
「な、何とか……」
アレサは立ち上がり、ユウタスも体勢を整える。そうして、彼は苦悶の表情を浮かべるアコを申し訳なさそうな顔で見つめた。
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