第151話 怒りの魔女と厄介な邂逅
魔女は魔都のシステムをすぐさま掌握し、攻撃システムを遠隔操作。すぐさま上空で好き勝手に暴れ回るふたつの超常的存在に向けて攻撃を開始する。魔都のあちこちに設置されていた迎撃システムが白龍と黒竜を捉え、一斉に攻撃を開始。無数のエネルギー弾が上空に向かって撃ち込まれた。
周囲の建物もこの余波で次々に破棄され、一気に視界は悪くなる。
「私の魔都の攻撃力を甘く見るんじゃないよ! いくら龍だからってひとたまりもないだろう!」
魔都のシステムを信じるカロは、勝ち誇った顔で龍のいた場所をじっと見つめる。視界が回復するとその場に龍達はいなかったものの、全く別の場所で無傷の2体の龍は戦いを再開させていた。
予想に反したこの結果を目にして、カロは悔しさをにじませる。
「きーっ! この程度では無意味だとでも言うのかい! 忌々しい!」
カロが地団駄を踏んだそのタイミングで、アレサがゲートを通じ魔都に戻ってくる。その気配を敏感に感じ取った魔女は、ぐるりと来訪者の来た方向に顔を向けた。
「何だい、この忙しい時に!」
「カロ? 何故ここに?」
アレサもまた、この意外な再会に驚きを隠しきれない。彼女がカロを認識出来たように、魔女もまた自身の野望打ち砕いた存在を忘れてはいなかった。
その姿を認めた途端に、カロの顔が悪魔の形相に変わる。
「お前はあの時の! 死ねえ!」
魔女は掌握している魔都のシステムではなく、怒りに任せて自らの魔力を解き放つ。その感情が具現化された闇の魔力波は真っ直ぐにアレサに向かって飛んできた。
この展開を全く予想していなかったアレサは頭の中が真っ白になってしまい、全くの無防備状態。迫りくる命の危険を前に、ただ叫ぶ事しか出来なかった。
「キャアアアアッ!」
魔法耐性を全く考えていない装備のアレサは、カロの攻撃が直撃するその瞬間にあっさりと自らの死を覚悟する。
「アレサ! 伏せて!」
この絶対のピンチに突然聞こえてきた声に、彼女は反射的にしゃがみこんだ。次の瞬間に襲ってきたカロの怨念のこもった魔力波は、ゲートの次元跳躍システムを利用した結界が完全に吸収する。
アレサのピンチを救ったのはチームの魔法担当のアコ。彼女は仲間のピンチを救えてホッと胸をなでおろす。
「良かった、間に合って」
「アコ……ごめん、勝手に戻ってきて」
「俺もいるぞ」
アレサがアコに謝っているところにユウタスも現れた。こうして3人が揃ったところで、その様子を眺めていたカロの怒りも頂点に達する。
「おのれおのれおのれ! お前達、よく全員集まってくれたああ! まとめて丸焦げにしてやるわあああ!」
狂気に震える伝説の魔女を目にしたユウタスは、その闇のオーラに感応して背筋に冷たいものが走った。
「おいおいおい、なんか穏やかじゃないぞ」
「俺達に逆恨みしてるんだよ」
「3人で協力して戦いましょう!」
対魔女戦に消極的な2人に対し、魔法の素養のあるアコだけが鼻息を荒くする。アレサ達は伝説の魔女と対等に戦うビジョンが思い描けなかったため、必然的にその視線はアコへと降り注ぐ結果となった。
まずは、ユウタスがアコの言葉の真意を確かめる。
「戦うって、逃げるんじゃなくて?」
「逃げてもきっと追いつかれます。戦うしかないんです」
「でも勝算あるのかよ。俺達はあんな魔女と戦う準備なんて……」
アレサの自信のない訴えに、アコは顎に指を乗せる。今すぐにでもカロからの攻撃が始まるであろう緊張感の中、あまり熟考も出来ない。即断の迫られる中、アコはまず時間稼ぎをするために守りに徹する選択肢を選んだ。
「まずは魔法攻撃を防ぐのに私達の周りに魔法結界を何重にも展開させます。お2人にはブースターになっていただければ……」
「「ブースター?」」
アコの言葉に後の2人は声をハモらせた。その展開を予想出来たアコが説明をしようとしたところで、カロが両手に圧縮した魔力を次々に撃ち出す。
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