第148話 質問攻めを受けるアレサ

「なるほどな。確かに返させてもらったぞ」

「な、いつの間に……」

「それじゃあな。1人で夢でも見てろ!」

「ま……」


 グーヴが手を伸ばしたところでセランは消えた。転移魔法を使ったようだ。後一歩と言うところで美味しい餌がなくなり、悪魔は伸ばした手をだらんと下げた。


「ふん、この俺様から逃げられると思うなよ……」



 こうして悪魔の魔の手から3人を救い出したセランは、魔都の外れの辺りに現出。すぐにアレサ達の拘束を解く。

 すると、自由になった事で3人共うっすらと意識を取り戻した。


「あれ? ここは?」

「うーん……」

「むにゃ……後5分……」


 3人3様の反応を見せる中、起き上がったアレサはキョロキョロと辺りを見回した。今自分のいる場所を何となく把握したところで、視界に入った意外な人物の顔に驚きを隠せない。

 そんな彼女の顔を見たセランは、気さくに右手を上げる。


「よっ、アレサ。さっきぶり」

「せ、セラン?」

「もうすぐ悪魔、グーヴがここにやってくる。君達は早く逃げるんだ」


 彼はアレサ達にこの場を離脱するように告げると、すぐに振り返って警戒態勢を取った。管理システム戦の終了時に倒れた3人は、悪魔の事をまだ誰も知らない。

 なので、アレサはどこか釈然としない顔をしながら魔都に来た理由を盾にしてこの場に留まろうとした。


「で、でもデータが……」

「ほら、これで揃うはずだ」

「あ、ありがと……」


 セランはデータの入った小型水晶を放り投げる。アレサはそれを見事にキャッチするものの、その手際の良さにまたしても動揺してしまう。

 その理由を彼女が聞こうと口を開きかけたところで、セランが顔の向きを前方に戻した。そこには悠々と歩く悪魔の姿が――。


「来たな」

「お、俺達も戦う……」


 まだ前の戦いでのダメージの抜けきってない状態で、よろよろと立ち上がりながらアレサが剣を構える。セランは顔の向きを変えずに、そんな彼女に忠告する。


「今の君達では無理だ」

「でも、セランだって……」


 2人が押し問答をしている間に、悪魔、グーヴが至近距離にまで近付く。そうしてセランの顔を軽くにらみつけた。


「そいつらは俺様の獲物だ。返してもらうよ」

「君達は早く逃げろ!」


 セランは声を張り上げ、動こうとしていたアレサを手を伸ばして止める。その流れでグーヴに向かって強いにらみを利かした。そのにらみによって発生した謎の力で、余裕たっぷりのグーヴの身体が爆発する。


「ウボォ!」


 セランの秘められた力を初めて目にしたアレサは、昔の印象とまるっきり違っていた事に目を丸くした。


「えっ」

「今の内だ、アレサ、早くデータを魔法庁へ」


 爆発で倒したはずなのにセランの表情は崩れない。それどころか更に真剣な表情を浮かべ、アレサ達を急かした。それでも、まだ3人は全く状況が把握出来ていない事もあって誰ひとり動こうとしない。この場合、動けないと言うのが正解なのだろう。

 口で説明する時間がないと考えた彼は、3人の背後に転移ゲートを開く。そして魔法で全員を無理やりねじ込んだ。


「アレサ、君は自分の仕事をしろ!」

「セラーン!」



 セランの作ったゲートを通ってアレサ達は魔法庁へと転移する。3人は見覚えのある場所に戻った事についても、すぐには理解が追いついていなかった。


「……ここ、魔法庁だよな」

「セラン、どうして……」

「あの人も、魔法庁に仕事を依頼されていたのでしょうか?」


 セランについて何も知らない2人は、関係のありそうなアレサに質問攻めを開始する。


「セランってどう言うヤツなんだ?」

「お、俺もよく知らないよ。不思議なヤツだった。昔仕事で共闘した事があるだけ……」

「本当にそれだけなんですか? 昔の恋人だったりとか?」

「いやねーし! 何でそっちに話が行くかな」


 3人がセラン話に盛り上がっていると、その騒ぎを聞きつけて正装したオハルがやってくる。彼女は戻ってきた3人を見て目を輝かせた。

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