第146話 管理システム、セーフティモード起動
「2人共時間稼ぎ有難うございます! 響け! 空間凝縮!」
アコが右手を上げると、掴んでいた杖から時空間魔法が発動し、巨大人工魔女の周囲の空間の動きが凝縮されていく。自身の体を空間ごと圧縮された人工魔女は、まるで芸術作品のように左右バラバラの攻撃ポーズのまま完全に固定化された。
そのタイミングを読んだ2人が、ここで改めて攻撃に転じる。
「必殺! 古代龍の咆哮!」
「真円斬!」
一度防がれた時と同じ攻撃によって、今度こそ巨大人工魔女はあっさりと崩壊していく。その現実を前にして、管理システムは自分の計算を超えた結果を受け入れられずにフリーズした。
「ままままままさかそそそそそんなバカななななな……」
「よし、このまま本体も破壊だ!」
「今ならあの変な壁もぶわあっ!」
人工魔女の完全破壊に成功したアレサ達は改めて管理システムの破壊に舵を切ったものの、当然ながらシステムを守る見えない壁は健在。
なので、思い切りぶつかった2人はまた気持ちいいくらいに弾き飛ばされた。
「「うわあああああ!」」
「アレサ、ユウタス!」
アコは素早く飛ばされた2人の元に駆け寄る。ダメージを食らった2人に治癒魔法をかけながら、まぶたを閉じたその瀕死の顔に向かって必死に呼びかけた。
「アレサ、ユウタス、しっかりしてください。ここで倒れたらダメです!」
「……いてて、あの壁消えてなかったのかよ」
「アレサ! 良かった……」
「壁対策、何とかしなきゃだな……」
先にアレサが目を覚まし、ユウタスもゆっくりとまぶたを上げる。弾き飛ばされたダメージはアコの魔法でかなり回復したようだ。2人共ゆっくりと起き上がると、心配そうに見つめる魔法使いの顔をじいっと見つめた。
「何かいい作戦はないか、アコ」
「さっきみたいに有効な魔法か何かないか?」
このユウタスのリクエストに、アコはもう一度顎に手を乗せる。少しの間考え込んだ彼女は、カッと目を見開いた。
「その方法、使えるかもです!」
「よし、作戦を教えてくれ!」
何か閃いたらしいアコに向かって、アレサがずいっと顔を近付ける。口にするとそれを察知されて対策されるかも知れないので、またさっきと同じようアコは思念派で2人に作戦を伝えた。
このメッセージを受け取った2人は、途端に表情を曇らせる。
「いいのか、それで?」
「俺達にも何か出来る事が……」
「いいんです。お2人の出番はその後でたっぷりと」
「分かった、それで行こう!」
アコの作戦に納得したアレサが、ニッコリ笑ってサムズアップ。こうして、改めて対管理システム戦の幕が上がる。
「ふふ、いくらでも変わりの魔女は呼べます。無駄な足掻きですよ」
「ゲートオープン!」
「何?」
「すかさず炎魔法!」
アコは空中に移動ゲートを展開させると、すぐに魔法を発動。見えない壁を無視して直接本体の直方体に攻撃を加える。熱せられた管理システムは熱暴走を起こし、機能停止に至った。その直後に見えない壁も消失。
この気配を感じ取ったアコが、待機していた2人に合図を送った。
「今です!」
「よし! 古代龍の咆哮!」
「喰らえっ! 真円斬!」
遮蔽物がなくなった事で今度こそ2人の技は管理システムに直撃。流石に一撃では倒せなかったものの、その表面にヒビ割れを発生させる事に成功する。
しっかり攻撃が届いた事が確認出来て、アレサとユウタスの表情がほころんだ。
「やったぜ!」
「これなら倒せる!」
ただし、その衝撃によってシステムが再起動。無機質な機械的な音声が静かな室内に響き渡る。
「セーフティモード起動。不純存在ヲデリートシマス」
「な、なんだ?」
「さっきとは違うぞ」
「気を付けてください。何か変です!」
管理システムの雰囲気が変わった事に3人が戸惑う中、室内の魔導濃度が一瞬上がる。アコが気付いた時には、その攻撃は発射されていた。そう、今度はシステム自体が魔法攻撃を始めたのだ。
この予想外の展開に、防御の間に合わなかった2人は魔法攻撃を直に浴びてしまう。
「「うわあああああ!」」
管理システムの放ったのは強力な電撃魔法。アコは対魔法攻撃に備えたアンチマジックローブを装備していたので自動的にこの攻撃を弾き返せたものの、直撃を受けたアレサとユウタスはこのたったの一撃で気絶してしまう。
一撃を防げたアコでさえ、マジックローブがその負荷に耐えきれず効果が切れてしまっていた。
「アレサ! ユウタス!」
アコは倒れた2人の側に駆け寄る。そうして、システムからの第二波が来る前にと、対魔法用の防御結界を素早く展開させた。
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