第145話 対巨大人工魔女戦!

「ヤバッ!」


 魔法弾に狙われた事を一瞬で察知したユウタスは、アコを抱きかかえて超スピードで現場を離脱。アレサも大きくジャンプして直撃を避けた。次の瞬間、巨大魔弾は床に当たり大爆発。

 この爆風に、ユウタスもアレサも派手に吹き飛ばされた。


「「「うわあああっ!」」」


 3人は2組に別れて飛ばされたものの、アコが咄嗟に唱えた対衝撃吸収魔法によってどちらのダメージも軽微。着地後、すぐに体勢を立て直したアレサが剣を構える。


「へっ、無数の雑魚よりでかい1体の方が倒しがいがあるぜ! いくぞおお!」


 一方、アコを抱えて飛ばされたユウタスは壁にぶち当たったものの、彼女の魔法のおかげですぐに復活。抱えていたアコを下ろすと、すぐにアレサに続く。


「アレサッ! 俺の分も残しておけよおっ!」


 ユウタスは背中の翼を出して巨大人工魔女の頭を狙う。その背後の気配を察知したアレサもすぐに意図を読んで魔女の足を狙った。


「必殺! 古代龍の咆哮!」

「真円斬!」


 ユウタスの気をまとったパンチが人工魔女の防御反応より早くその顔面を捉え、アレサの超速の剣捌きによって生まれた真空波が魔女の足を切り裂く。この2人の息の合ったコンビネーションによって、人工魔女は倒されるかに見えた。

 しかし、元々が群体のパーツ。ダメージを受ける前にそれぞれの結合が解かれ、2人の絶妙な攻撃も空振りに終わってしまう。


「「なんてインチキ!」」


 攻撃が空振りに終わった事で生まれた隙を狙って、人工魔女は再結合しつつ魔弾攻撃。避けるタイミングが間に合わず、2人はまともに被弾して勢いよく弾け飛んだ。


「ぐあああっ!」

「キャアアッ!」

「みんなーっ!」


 2人が壁に激突する前に、アコが個別転移魔法を発動。衝撃のエネルギーを消しつつ、自分の側に着地させる。


「アコ、有難う」

「助かった。で、あいつを倒す作戦、何かないか?」


 このアレサのリクエストを聞いたアコは指を顎に当てて、今までのパターンから作戦を立て始める。当然、答えが出るまで敵が待ってくれるはずもなく、人工魔女は集まった3人に向けて速攻で魔弾を撃ち込んできた。


「うわっ、きたぞ!」

「防ぎます! 空間凝固!」


 攻撃の気配を察して素早く放ったアコの防御魔法によって、魔弾は弾き返される。ただし、その反動で彼女の腕が少し裂けて血が滲んだ。


「痛っ!」

「だ、大丈夫かっ!」

「聞くまでもないでしょ! 腕出して。血を止めるよ」


 動揺するユウタスに対して、アレサがすぐに適切な処置を施す。治癒薬が塗布された包帯をアコの腕に手際良く巻きつけていった。

 その流れるような動きに、ユウタスは改めて感心する。


「へぇ、流石だな」

「いやこのくらい冒険者なら普通だって。それより、すぐに第二波が来る!」

「次は俺達でアレを弾くか」

「待ってください、作戦を思いつきました」


 魔弾攻撃が迫る中、アコは考えた作戦を一瞬で伝えるために圧縮思念波を直接2人の脳内に送り込む。その瞬間に作戦を理解した2人は、すぐに飛び出した。


「いい作戦だ、乗ったぜ!」

「アコの作戦、俺も気に入ったぜ」


 2人は完全に別々に動き、巨大人工魔女を翻弄する。巨大な一体の姿になったために攻撃を絞れない魔女はしばらくアレサ達の動きを補足していたものの、やがて右手と左手で別々に魔法を使い、2人を倒そうと魔弾を放ち始めた。

 アレサもユウタスも、この攻撃をギリギリの紙一重で避けていく。


「どんな作戦も無駄です。攻撃は全て無に帰すでしょう」


 管理システムは自分の計算に自信があるようで、アレサ達の行動を秒で否定する。攻撃を避けるのに必死の2人は、そんな安っぽい挑発には乗らなかった。人工魔女はちょこまかと動く2人を正確に補足しようとするものの、相手が避けに専念しているために完全に補足する事に苦戦する。

 そうして、すっかりもう1人の存在を計算から外してしまっていた。


「デカブツ、早く俺達にその魔弾を当ててみろよ!」

「結局口先だけだなっ!」

「何故だ、何故計算が間に合わない……」


 管理システムは攻撃が完全に避けられている事に動揺して、攻撃の精度を落としていく。魔導ブーストの効果もあって、完全に避けだけに徹すれば人工魔女を翻弄出来るとアコは見抜いていたのだ。

 更に2人のアドリブの挑発もあって、管理システムは正常な作動が出来なくなってきていた。


「魔都のシステムも案外ちょろいな」

「本当だな。この程度かよっ」

「何故だ何故だ、何故お前達はずっと避けるばかりなのだ!」


 管理システムは2人の行動原理を見抜いたものの、その理由が分からずに必死で計算を続ける。アレサ達は自由奔放に動いて、攻撃を避けながら次の合図を待っていた。

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