第144話 対管理システム戦、開始!
「失望しました。やはり人間は変わっていない……」
「って言うか、じゃあお前の目的は何なんだ? もう魔女が支配していた時代じゃないんだ」
「それです。私は随分長い間眠っていました。約束の時に復活するためにです。そして、ようやくその時が来ました。人間達よ。世界を魔女に返すのです」
システムは感情の伴っていない合成音声で3人に向かって上から目線の命令を下す。当然、その言葉を素直に受け入れるメンバーは1人もいなかった。
「お前、何様だよ! 世界は魔女だけのもんじゃねーよ!」
「……どうやらあなた方は人間の代表と言う訳ではなさそうですね」
「だったら何だって言うんだ」
「この街の破壊を目論む異分子は排除します」
こうして話し合いは決裂。当然のように戦闘は始まった。相手は人工魔女達を操り、ゲートの出口すら捻じ曲げる魔女文明が生み出した技術の最高傑作。苦戦は避けられないと、3人の緊張感も一気に高まった。
「皆さん、準備はいいですか?」
「ああ、頼む」
「ヤバいヤツをくれよ!」
アレサとユウタスに託されたアコは、魔法の杖を頭上に掲げると高らかに宣言した。
「魔導ブースト・マキシマム!」
既に術式を杖の中のクリスタルに構築済みだったので、一瞬で魔法は発動。全員の基本能力が大幅にパワーアップする。この底上げされた戦闘力で、アレサとユウタスは管理システムに向かっていった。
超高速で走りながら、各々がこの場にふさわしい技を繰り出す。
「必殺 無明斬り!」
「龍爪 光穿拳!」
剣技と拳技、ふたつの力が無機質な板に届く前に、見えない壁があっさりとその暴力を否定した。攻撃を弾き返された2人は、撃ち込んだ勢いの分だけ呆気なく弾き飛ばされる。
「「うわああ~っ!」」」
「愚かな……人間は相変わらず成長しませんね。勝てない戦いに臨むなどと……」
「勝てないかどうかは、やってみないと分かりません! カリア・ボウ!」
管理システムを守る物理攻撃無効の見えない壁。アコはそれを打ち砕こうと魔力を込めた矢を撃ち込んだ。魔力を宿す特殊素材で出来た矢は壁に突き刺さったものの、次の瞬間にガラスが割れるようにあっさりと砕け散る。
「嘘……」
「あなたは魔法を使うようですね。ならば、何故力の差を理解しないのです。そのような攻撃では、我が絶対の壁を破壊出来るはずがありません」
「でも、時間稼ぎにはなった……」
アコの攻撃で生じた隙に物理攻撃担当の2人は見事に立ち上がっていた。魔導ブーストの効果によって、防御力と回復力も底上げされていたからだ。
「へっ、絶対の壁か。大層な名前じゃねーか」
「こっちもまだまだ本気は出してねーぜ、なぁユウタス!」
「ああ、一撃で壊れないなら何度でも攻撃するまでだ!」
ユウタスもアレサも一度技を防がれたくらいではへこたれない。更に闘志を燃やし、お互いに技の構えをとった。2人がまた攻撃に転じようとした瞬間、部屋に大勢の人工魔女が乱入。3人を取り囲んだ。
「どうですか? あなた方は私のしもべ達に倒されるのです」
「へへ、雑魚が何人来ようと無意味な事を教えてやるぜ」
「だな、せめていい準備運動になってくれよ」
「みなさん、私が精一杯フォローします」
管理システムは自らの攻撃手段を持たないのか、人工魔女でアレサ達を倒す作戦を選択。対する3人もすぐに戦闘パターンを切り替える。人工魔女対策はさっき有効だった方法を踏襲。すぐにアコの魔法で超スピード化した2人が魔女達が攻撃する前にサクサクと倒していく。
そうして、呆気ないくらい簡単に約百体の人工魔女を行動不能にしてしまった。全ての敵を楽勝で倒したところで、アレサが鼻息荒くドヤ顔になる。
「機械が俺達を倒そうなんざ100年早いぜ!」
「ふふ、私はあなた達のデータを収集していただけですよ。最も効率よく壊すためにね……」
「は? そんな強がり……」
「アレサ、魔女達が!」
彼女が最後まで挑発を言い終わる前に、ユウタスの声がそれを上書する。機嫌を悪くしたアレサが振り返ると、そこには倒した人工魔女達がどんどん合体していく姿が目に入った。思わず彼女はその異様な光景に指を指す。
「な、何アレ?」
「私のしもべ達に計算結果を伝えたまでです。群体よりもこちらの方が良さそうですのでね」
「アレサさん、気をつけてください! 今度は巨人化して攻撃を仕掛けてきます」
「う、嘘だろ……」
ものの数秒で合体し終わった人工魔女は、巨大な一体のモンスターと化して3人に対して襲いかかる。巨大化しても魔女は魔女、殴りかかるような物理攻撃ではなく、飽くまでも魔法攻撃で目の前の冒険者達の排除を実行に移していた。
そうして、すぐに詠唱なしでの巨大魔法弾が3人を襲う。
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