第141話 冒険者開放作戦、開始!
この接近する謎の存在を敏感に察知したアレサ達は、すぐに臨戦態勢を取る。襲い来る緊張感の中、3人それぞれの頬を一筋の汗がつーっと流れた。
「おいおい待てって。俺達も冒険者だよ」
「えっ……」
「お前達もあいつらから逃げ回ってんだろ。俺達のチームはバラバラで逃げたんだけど、それから俺はずっと1人でさ、心細かったんだよ」
「先行して調査していた冒険者の人?」
アレサ達に近付いてきたのは、先に魔都に来て調査の依頼をこなしていた冒険者の1人だった。敵でない事が分かり、3人共戦闘態勢を解除する。
「俺はハウィン。お前達は知ってるぜ、ギルドでも有名人だもんな」
「あ、ども」
「それでな、お前達の強さを見込んでひとつ頼みがあるんだよ」
ハウィンはそう言うと、真剣な眼差しで3人をじいっと見つめる。その重い雰囲気に、自然とアレサ達も無言になった。
「頼む、仲間を助けてくれないか。この魔都のあちこちに捕らえられているんだ。あの機械の魔女に捕まって連れて行かれた」
「そう言う事なら任せろ!」
「ああ、喜んで協力する!」
「わ、私も異論ないですぅ」
こうしてハウィンの頼みを聞いた3人は、彼の案内で捕らわれの冒険者の開放に動き始めた。無断侵入者が捕らわれている施設は魔都のあちこちにあって、感知システムに頼り切りなのか見張りはいない。
認識阻害のマジックアイテムを使って慎重に近付いた4人は、周りの状況を確認して、一気に捕らわれの冒険者の開放に動いた。
「アレです」
「よし、アコ!」
「座標位置固定、ゲート開きます!」
アレサ達の解放作戦は実に単純だ。まず座標が確認出来る場所まで近付いて簡易ゲートを開き、ゲートを通じて冒険者を開放すると言うもの。監視システムはマジックアイテムを検知するようには出来ていないらしく、近付けさえすれば簡単に冒険者を開放する事が出来た。
こうして、ハウィンの仲間を開放した後もアレサ達は自発的に捕らわれの冒険者達を開放していく。
「助かったよ。有難う……ってアコ?」
「シイラにリル! あなた達もこの魔都の調査の依頼を受けてたんだ」
「え? 知り合い?」
「うん、前の仲間」
この救出作戦の
「ねぇ、まさかただで助けてもらったとか思ってないよね?」
「えっと、お金……ですか?」
「いやいや、そりゃお金も欲しいけど、あなた達も調査していたんだよね。それ、ちょっと教えてくれないかな」
「えっと、あんまり詳しくは分かってないんだけど……」
アレサはオハルから依頼された魔都のデータ収集への協力を、助けた冒険者達全員に求めていた。調査を目的としてこの街に訪れていた冒険者達はみんなそれぞれに独自の調査方法で3人が欲しがっていた情報を得ており、救出との対価としては十分すぎるものも多い。
シイラとリルもまた優秀な冒険者であり、彼女達から得た情報もアレサ達の依頼の達成にとても役立ったのだった。
「……私達が知ってるのは、このくらいです」
「うん、有難う。とても助かった」
「じゃあ、私達、帰ります」
「そこのゲートが出口まで繋がっているから使って。気をつけてね」
こうして、2人はアレサ達が用意した脱出ゲートを使って帰っていく。力なく手を振るアコを目にしたユウタスが声をかけた。
「良かったのか? 色々話したい事とかもあったんじゃ……」
「ううん。あの子達には迷惑しかかけてないから……」
「そっか」
「何暗い雰囲気になってんだよ! 次行くぞ次!」
捕らわれの冒険者達を開放しながら、見返りとして自分達の依頼もこなしていく。アレサの立てた作戦はうまく行き、大きなリスクを犯す事もなく事は上手く運んでいった。
「しかし、魔女文明なのにマジックアイテム対策がザルなのも笑えるよな」
「魔女文明の時代に、マジックアテムはなったのかもです」
「マジか、受ける」
「でも、今後何が起こるか分からないんだから気は抜くなよ」
3人は雑談をしながらも、しっかりと気配を殺して次の開放ポイントまで辿り着く。今度はアレサが簡易ゲートを開いた。
しばらくすると、ゲートの存在に気付いた最初の脱出者が3人の前に現れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます