第139話 軍隊の動員と依頼の変更

 3人が買い物に夢中になっていたその頃、依頼の目的地である魔都から謎のビームが発射される。そのビームはとんでもなく高出力なもので、直撃した山が一瞬で跡形もなく消滅してしまう程。

 そのあまりの威力に、ギルドばかりか大陸にある各国も大騒ぎとなる。


 山を軽く消し飛ばす威力のビームの標的がいつ自分達の国を狙ってくるか分からないと言う事で、各国の軍隊が動く事態にまで発展。大陸は大きく分けて4つの国で成り立っており、この非常時においてその各国は団結し、連合軍を派遣する事になった。

 こうして事態が大規模なものとなり、アレサ達も否応なくこの混乱の渦に巻き込まれる事となる。


 魔都出現は各地で大きな話題になっていたのもあって、魔都の近くに空間移動用の魔法ゲートも開設されていた。アレサ達はそれを使って移動をショートカットするつもりでいたのだ。

 準備を整えて待ち合わせた3人はあふれる好奇心を抑えきれず、談笑しながらゲートへと向かう。少し歩いて目的の場所に着いたところで、そのトラブルは発生。ゲート場の扉に貼っていた張り紙を見て、アレサは激怒する。


「直通ゲートが封鎖ってどう言う事だよ!」

「魔都を軍隊が攻撃する事になったから危険だって書いてあるな……」

「私達、タイミングが悪かったみたいですね。あ、でも軍隊が動くなら巻き込まれずに済んで良かったって言えるのかも」

「ざけんなよ! ここまで準備してそれがパーとかねーだろ!」


 怒り狂うアレサをなだめながら、3人は今後の事について依頼主のもとに向かう事にした。ゲートが封鎖されていると言う事は、ゲート以外の手段で向かったとしても追い返されてしまう事は確実だからだ。

 軍が動いていると言う事は、もう冒険者の出る幕ではないのかも知れない。それらの事情も含めて、話し合うためでもあった。


 魔法学校に着いた3人は、生徒会長に案内されて校長室へと向かう。死闘を繰り広げた相手だけにアコは少し身構えたものの、生徒達は皆前校長の野望に従っていた頃の事を全く覚えておらず、何事もなく目的の場所まで辿り着く。

 校長室の豪華そうな椅子には、仕事モードのオハルが待ち構えたような笑みをたたえながら座っていた。


「いらっしゃい。待っていたわ」

「あの、俺達はどうすれば……」

「丁度いいわ、着いてきて」


 ユウタスの言葉を受け、オハルはすっと立ち上がると校長室の床に簡易のゲートを開く。3人もまた促されるままにそのゲートの中に入って空間移動した。

 ゲートを抜けた先にあったのは、3人共見覚えのある景色――。


「ここは、魔法庁?」

「そ、懐かしいでしょ。で、あなた達にには改めてお願いがあるんだけど……」


 魔法学校の校長ではなく、魔法庁のエージェントの姿となったオハルは、早速事情を説明する。


「魔都から放たれたビーム。あれは魔都が正常に動き始めた証と見ていいわ。もう知っての通り軍隊も動いている。多分その動きは敵も想定済みのはず。だから軍では抑えきれない。私達はその裏をかかないといけないのよ」

「ちょっと待ってください。敵って、あの魔都には何かがいるんですか?」

「いくらカロが何か仕込んでいたとしても、自動的に遺跡は復活しない。復活させた何者かがいて、そいつがビームを撃ったのは間違いない」

「じゃあ俺達がそいつをぶっ倒せばいいんだな!」

「いくらあなた達が強くてもまず無理ね。それは私達に任せて」


 興奮するアレサを抑えながら、ユウタスはオハルの言葉に疑問を抱く。


「魔法庁はどうやってあの魔都を抑えるつもりなんですか」

「いい質問ね。今、魔法庁はあの復活遺跡を封じる大規模術式の構築に取り掛かってる。魔法で生まれた文明は魔法で終わらせる事も出来るはずなの。軍隊が動いたらこちら側の被害も甚大なものになるのは間違いないし、敵の真の目的はそれかも知れない。だから軍が本格的に動く前に終わらせたいの。ここからは時間との勝負ね」

「で、俺達が出来る事は?」

「封印術式を完成させるには、まだ魔都のデータが足りないのよ。だからそのデータを入手して欲しい。これが新しい依頼だけど、出来る?」


 オハルはそう言うと挑戦的な笑みを浮かべる。アレサはこの挑戦を受け取った。

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