第138話 都市の正体と、3人への依頼
「久しぶり。何だかみんな不景気な顔してるじゃない?」
「オハルさん?」
やはり最初に声が出たのは、一時期彼女と行動を共にしていたアコ。残りの2人も早すぎる再会に言葉がすぐには出てこない。なので、更にアコが続けた。
「どうしてギルドに?」
「そうね。まず聞くけど、3人は今何か仕事の依頼は受けてるの?」
「それがさあ、やりたい依頼はあるんだけど争奪戦で負け続きなんだよ」
「ちょ、ユウタス!」
アレサは彼が余計な事を言わないようにすぐに釘を刺す。その様子を見ていたオハルはクスクスと笑い出した。
「何だ。良かった、まだフリーなのね」
「ちょ、何がいいんだよ!」
「それは当然……っと、あなた達がやりたい依頼ってあの都市の調査?」
「そうだよ、俺達は冒険者だからな。未知の場所があったら冒険したくなるのが冒険者ってもんだ」
オハルの質問にアレサは胸を張って堂々と答える。その様子を見たオハルはうんうんと満足気にうなずいた。
「あの都市はね、カロ元魔法学校校長が復活させようとしていた魔女文明時代の首都なの」
「ほ、本当ですか?」
彼女の話す衝撃の事実にアコが驚いて口をあんぐりと開ける。と、ここでユウタスの頭に素朴な疑問が思い浮かんだ。
「でも、あの時に校長は力を失って計画は潰れたんじゃ……」
「おっユウタス君、よく覚えてました。でも、あの人が目論んでいたのは首都だけじゃない、魔女文明そのもの、つまり大陸全土に散らばる全魔女文明遺跡の完全復活だったの。計画が失敗したから、復活したのがあの首都だけで済んだのよ」
「なんでそんな話を俺達に?」
本来機密事項であるはずの都市の秘密を一般人にペラペラと喋るオハルに、アレサは首をかしげる。
「ふふん。それは当然、あなた達に仕事を依頼するためよん。もうとっくに別の仕事を受けていたら計画を練りなすところだったけど、フリーで良かったわん」
オハルはそう言うとアレサ達に向かってドヤ顔でサムズアップ。3人はお互いに顔を見合わせた。最初に口を開いたのはアレサだ。
「どうするみんな? この話に乗る?」
「俺はいいぜ。誰の依頼だろうと冒険が出来るならな」
「わ、私も賛成です」
こうして意見はまとまり、3人はオハルの依頼を受ける事にした。仕事の内容は当然あの魔都の調査。オハルからの注文は、何か気付いた事があったら全て記録して報告して欲しいとだけ。後はどう調査しても構わないとの事。この自由すぎる内容に、アレサもまたサムズアップで応えた。
話が決まったと言う事で早速冒険の準備をするために席を立ったアレサ達だったものの、その様子をじっとニコニコと見守っているオハルにアコは違和感を覚える。
「オハルさんは同行しないんですか? こう言うの好きそうなのに」
「うーん、私も一緒に行って調べたいのは山々なんだけど、ほら、私には学校もあるからね」
今のオハルは魔法学校の校長。だから勝手に動く事は許されないらしい。こうして依頼者側の事情にも納得したところで、3人は装備と道具を整えるためにギルドを出ていった。
アレサ達がやっと動き始めたその頃、先に魔都に向かって調査を始めていた冒険者達の先遣隊が次々に謎の失踪を遂げていく。何とか生還した冒険者はボロボロになりながら、自分達が調査していた謎の都市の危険性を訴えた。
「あそこは恐ろしい場所だ……。奴らに見つかったら生きては帰れない……。これは警告だ。誰もあの街には行くな!」
この証言と謎の失踪を重く捉えたギルドはそれ以降、この件についての依頼の凍結を決定。状況が変わらない限りギルドは関わらない事になる。
そんな事が起こっているとは知らないアレサ達は、能天気に武具屋で武器や防具の調達、道具屋で傷薬などのアイテムを購入して入念に準備を整えていた。
「うーん、この拳当て、コスパがちょっとなぁ……やっぱ天空島のお店で買うか」
「この剣、前から欲しかったやつだ! ちょっと高いけど買うか! いや待てよ? 他の店ならもっといいのがあるのかも……?」
「このローブ、対魔法性能がこの店一番だ。やっぱこのくらいの準備はしなくちゃだよね」
3人はギルドは出てからは個別に行動していて、各々がそれぞれの判断で必要な物を調達していた。ユウタスは拳闘士らしくその攻撃力を高める装備を中心に。アレサは剣士らしく剣の吟味に余念がない。アコはアコでやはり防御重視の買い物を楽しんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます