第136話 事件の収束と、その真相
「あれほどの高等魔法、あんな小娘に使える訳が……」
「まね。私の魔法だもの。あの子に預けてたの」
「最初から仕組んでたって訳かい。やられたよ。完敗だ」
そう、アコはこの作戦が実行に移された時、オハルから伝説の魔女を倒す魔法を託されていたのだ。校長が力を失った事で、連動していた魔神像のエネルギーも消失。像はその場で崩れ、砂の山へと変わっていった。
戦闘を続けていたアレサ達は、この突然の状況の変化に戸惑うばかり。
「うえっ……?」
「これは一体?」
2人が状況を確認しようと講堂の中を改めて見回すと、集まっていた魔女生徒達は全員気を失って倒れていた。さっきまでアコと熾烈な魔法バトルを繰り広げていた生徒会長のカーシュもまた、気を失って倒れている。
まだこの結果を受け入れて切れていない2人に、オハルはニコニコ笑顔で近付いた。
「2人共、お疲れ様」
「どう言う事なんだ?」
剣を鞘に収めながら、アレサは納得の行かない顔を見せる。オハルは両手を肩の位置まで上げるジェスチャーをしながら、真相を口にした。
「みんな校長が操ってたのよ。だから校長が力を失えば一気に全部パーになるって訳」
「な、なるほど。惜しかったなー。後一撃、必殺剣技をお見舞い出来てたらあいつを倒せてたのに」
「俺だって、最終奥義のパンチを繰り出すところだったんだよ。あれさえ当たれば……」
アコが校長を倒したそのおこぼれで魔神像が倒れた事を素直に認められない2人は、ここでやたらと胸を張ってミエミエの強がりをしてみせる。
その分かりやすい反応に、4人はお互いの顔を見合わせて笑い合った。
その後、校長は逮捕され、こうして1200年をかけた計画は水の泡と化した。無事に全てが終わり、アレサは魔法庁で依頼終了の書類を受け取る。
「お疲れ様。あなた達のおかげで上手く行ったわ」
「結局どう言う事だったんだ?」
「うーん。本当は部外者には話せないんだけど、いいわ、話してあげる。他言無用ね」
オハルは、今回の功労者達に敬意を評して、事の真相を話し始めた。始まりは、伝説の魔女カロ・デフィリウスが魔法遺跡の調査中、まだ生きている魔法機関を発見した事にあったらしい。
「そこから彼女は魔女文明を復興を目指すようになった訳」
「魔女文明って?」
「かつてこの大陸で栄えていた魔女が支配する一大帝国の事。つまり、分かりやすく言うと彼女は世界を支配しようと企んだ訳よ」
オハルは得意げに自説を展開させていく。アレサ達一行がやってのけたのは、世界の危機を救った一大捕物なのだとか。
とは言え、そこまで単純化されてしまった事で、逆にアレサは考え込んでしまう。
「冒険者の失踪とか、賢者の森の事とかが、その話にどう繋がるの?」
「うんうん、良い質問だねアレサ君……」
すっかり先生気取りのオハルは、最近起こった出来事についての話をし始めた。魔法薬の調査をしていた冒険者ウルカは、カロに捕まり魔法遺跡で人体実験をされていたところをオハルとアコが救助。
そこですぐにアレサ達がやってきてしまったため、姿を消したのだと言う。
「まぁ一応隠密行動だったからねー。身元がバレるのは避けたかったのよ」
「それより変なのは魔法を教える家の件ですよ。魔女学校の許可証とか、メル先生とか」
「あ、メル先生って私。変身魔法で変わってたの。あの頃はアコの活動を秘密にしたかったのね。存在がバレると対策されちゃうかもだったから」
オハルの話によれば、アコの事を知る2人が彼女の行動の全てを知ってしまうと、そこから情報が漏れると警戒したらしい。そのための策で、わざと混乱させるような事をしたと言う事なのだとか。
魔女強盗の件については、アコの魔法修行の一環だったとの事。
「これで大体分かった?」
「ま、まぁ……大体は……」
「そ、良かった」
オハルの屈託のない笑顔に見送られながら、アレサ達は魔法庁を後にする。玄関を出たところで待っていたアコと合流した。
このあまりに自然な展開に、アレサは目を丸くする。
「アコ?」
「私もこうして力を得て自信も付きましたし、改めてよろしくお願いします!」
「ああ、こちらこそ大歓迎だよ!」
ユウタスはアコの合流を大歓迎。アレサもすぐのこの状況を理解して、頼りになる仲間の合流を喜んだ。
こうしてまた3人組は復活。その足で仲良くギルドへと向かうのだった。
その後、オハルが新しい校長になって魔法学校を再建。こうしてまともな魔女学校になった事で、学校の評判も良くなったのだとか。
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