第130話 突撃! 異界の魔法学校!

「……分かりました。アコが無事だからもうそれでいいです」

「アレサちゃんも物分りが良くて助かるわん。じゃ、これからの事は移動中に話しましょ」


 こうして、オハルと3人は魔法学校に乗り込む事に。4人は部屋を出て魔法庁の庁舎内の転移部屋に向かい、そこのゲートから一気に魔法学校前まで転移する。

 ゲートから出たアレサは、以前と全く違うその景色に言葉を失った。


「おい、学校がないぞ!」

「あら、アレサちゃん、そっちが地? 結構ワイルドねぇ」

「いや、この際それはどーでもいいだろ! どうなってんだよ」


 そう、以前ゲートで転移した時は、その場から魔法学校の大きな校舎が見えていた。なのに、同じ場所に転移したはずの4人の前には、その特徴的な校舎が綺麗サッパリなくなっていたのだ。

 この非常事態に対して、エージェントのオハルだけはそれも想定内だったと言わんばかりに全く動揺していなかった。


「逃げたって事は、やっぱり私の読みが当たってたって事ね」

「オハルさん、どうするんですか?」

「んふふふ、まーかして!」


 ユウタスに急かされたオハルは、すぐに杖を取り出して地面に魔法陣を描き始める。杖の先から出る光の粒子が地面に定着して、一分ほどで精巧な魔法陣が描き上がった。

 彼女は完成した魔法陣にぴょんと軽く飛び乗ると、描き上がる様子を見守っていた3人に向かって軽く手招きをする。


「じゃ、行くよ。乗って」

「さあ、みなさん、行きましょう」

「あ、ああ……」

「ここからが本番だよな」


 こうして4人が魔法陣に乗ったところで効力が発動し、転移が始まる。その転移先にあったのは、さっきあっさりと消えてしまっていた魔法学校の校舎だった。

 オハルの実力を多少疑っていたアレサは、この見事な成果に思わず口を滑らせる。


「本当にすごい魔法使いだったんだ」

「おっ、やっと認めてくれた? シルフ嬉しい♪」

「……」


 ここでオハルが謎のぶりっ子可愛子ちゃんアピールをし始めたので、アレサは思わずジト目になった。目的地の目の前でまたしても気まずい雰囲気になってしまい、ユウタスはこの空気を何とかしようと話題を切り替える。


「ほ、ほら。こうして学校も見つかった訳だし、早く行きましょう」

「うんうん。じゃあみんな、行くよ」


 彼に急かされたオハルは、軽いテンションのまま学校に向かって歩き始める。依頼主が動き始めたので、3人も慌てて後をついていった。転移した魔法学校は守衛さんの姿も見当たらず、とても不気味な雰囲気だ。


 そもそも、転移したこの場所自体が現実の世界と言うか、異空間みたいな場所だった。空は厚い雲が覆っているし、小鳥達の声すら聞こえない不気味な静寂に満たされている。そんなホラーな雰囲気な中の4人は歩いていた。

 このメンバーの中で平常心を保っていたのはエージェントのオハルのみ。アレサ達冒険者組は、アコも含め謎のプレッシャーに精神を押し潰されそうになっていた。


「しかしこの気配、キツイな……」

「ああ、何だかすごく気持ち悪い……」

「私もです。前より瘴気が更に重くなってます」


 3人がお互いにこの雰囲気の感想を言い合っていると、今まさに校舎に入ろうとしている先頭のオハルが不意に振り返る。


「みんな、今から校舎に入るけど、多分生徒達が襲ってくるから気をつけてね」

「りょ、了解です……」


 緊張感から喉がカラカラになっていたユウタスは、ゴクリとつばを飲み込む。そうして、校舎に入った途端、その忠告通りに黒ずくめの魔法学校の生徒達がアポなしでやってきた4人の侵入者に向かって容赦なく襲いかかってきた。


「侵入者、排除!」

「来たわねぇ~」


 オハルがこの可愛い警備魔女に向かって挑発的な表情を浮かべたところで、ユウタス達が前方に躍り出た。


「俺達が守ります! そう言う依頼ですので!」

「2人は下がってて!」


 ユウタスはすぐにファイティングポースを取り、アレサも素早く剣を抜く。対魔法使い戦用に、その剣は魔力コーティングが施されていた。

 この戦闘でまず最初に動いたのはユウタスだ。彼は拳に力を込めて、その気を襲いかかる魔女生徒に向かって繰り出した。


「拳技、銀狼の咆哮!」


 拳から打ち出された生体エネルギーが魔女生徒に向かってまっすぐに飛んでいく。直接の打撃よりは弱いものの、直撃すれば女の子を気絶させるくらいの威力がある攻撃だ。ユウタスはこれで襲ってきた彼女達を無力化しようとしたのだ。


 けれど、ここで計算ミスが発生する。彼の放った気は魔女生徒をすり抜けてしまったのだ。そうしてノーダメージのまま、彼女達は更に近付いてくる。

 次に動いたのはアレサ。彼女は剣を構え、この場に相応しい技を選択した。


「剣技、三日月の舞!」


 その技は、これも剣圧で遠隔攻撃する攻撃だった。三日月状の真空の刃が魔女生徒に向かって飛んでいく。しかし、この攻撃もすり抜けてしまった。

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