第128話 謎の組織との攻防
全身黒ずくめで、ご丁寧に黒い覆面をした怪しさ100%の団体は突然現れた部外者を無言で取り囲む。その異様な雰囲気に、アレサもユウタスも完全に飲まれてしまった。うかつに武器を構えるのも危険と判断したアレサは腰の剣を抜けないでいる。
そうした緊張感の中で、黒尽くめの団体の中の1人がじろりと2人をにらむ。
「……お前達は何者だ」
「いやそれこっちの台詞っ! お前ら何者だよ!」
「どうやら何も知らないようだな……ならば好都合」
「だから、何なんだよ、ここはどこなんだよ!」
謎の団体の質問にアレサとユウタスはそれぞれキレ気味に叫んだ。混乱して気が狂いそうになっていたのだ。けど、この場にその訴えをまともに聞く相手はいない。
さっき質問したリーダーっぽい人――声からして女子――は冷静なトーンで勝手に喋り始める。
「この失敗は世に漏れてはいけない。我らの痕跡も知られてはならない……」
「いや、意味分からんのだけど?」
「お前達は最初からこの世にはいなかったのだ!」
その決定的な一言を言い終わると同時に、リーダーは2人に向かって杖をかざした。その杖から電撃的なエネルギーが発生し、2人はそれを直感で避ける。
冒険で鍛えた俊敏さで何とか回避に成功はしたものの、紙一重のギリギリさだった。
「マジで殺す気かよ!」
「……アレを避けた? どうやらただの冒険者ではないようですね。皆さん!」
リーダーは攻撃を避けられて少しだけ
10人がそれぞれ個性的な魔法を使って攻撃を始めたので、2人は多少被弾しながらも致命傷を避けつつ部屋からの脱出を図る。
「逃しませんっ!」
リーダーの号令と共に複数の魔法が絡み合い強力な魔法エネルギーが龍のような姿を形取り、2人を追尾して襲ってきた。さっきまでの真っ直ぐ飛ぶだけの攻撃とは違い、こればっかりは避けきる事が出来ない。回避不能と悟った2人は必死で身を守ろうと防御態勢を取る。
そんな2人に向かって、魔法のエネルギー龍は容赦なくその破壊エネルギーを直撃させる。
「キャアア!」
「グアアア!」
この調査を始めた時に、念のためにと魔法耐性の服も着ていたものの、その効果が全く役に立たないくらいの膨大な量の魔法攻撃を受けたため、2人はその場でなす術もなく倒れてしまう。
リーダーは不審者への対処が無事に完了した事で、高揚感に満たされた。
「フハハハ! 処理は終わった」
「……うぐっ」
「……ぐふっ」
2人の意識はここで途絶える。強力な魔法攻撃に全く手も足も出なかったアレサ達は、薄れゆく意識の中で死を覚悟した――。
深い深い暗闇の中、2人はそのまま夢の中をあてもなく彷徨う。何もない空間をずうっと歩き続けていると、目の前から光が漏れ出してきた。その光に向かって駆け出していくと、光はどんどん強くなっていき、ついにはそのまぶしさにまぶたを上げる。
「え?」
「ここは?」
ベッドに寝かされていた2人はほぼ同時に目を覚まし、自分の置かれた状況を把握しようと顔を動かした。最初に飛び込んできた景色は知らない天井。そうして横を向いた時にはお互いに寝かされている事を確認する。病院の医務室ではない、普通の家の普通の部屋にベッドがふたつ並んでいた。
意識の戻った2人はすぐに身体を動かそうとするものの、アレサもユウタスもまだ魔法攻撃のダメージが残っているのか、思うように身体を動かせない。
そんな状況の中、突然部屋のドアが開いてよく知る顔が近付いてきた。
「もう、ダメじゃないですかー」
「「アコ?」」
そう、2人はアコに助けられていたのだ。彼女がどうやってあの怪しい集団の中からアレサ達を助ける事が出来のか、横になっていた2人の頭に様々な疑問が浮かび上がる。
「まーったく、無茶なところはアコの話の通りなんだから」
次に部屋に入ってきたのは、これまた見覚えのある女性。あの魔女組合の受付の魔女のおねーさんだった。この予想外の展開にすぐにアレサの口が開く。
「一体どう言う事なんですか! いてて……」
「まだ動かないで。致死量の毒魔法も受けたのよ」
「マジですか……」
「アコの処置が早かったから大丈夫だけどね」
おねーさんはそう言って朗らかに笑う。次に口を開いたのはユウタスだ。
「アコ、あれは一体何だったんだ? 危ない事に首を突っ込んでんじゃないのか?」
「危ないのはお2人の方ですよ。この件に普通の人は手を出しちゃダメです」
「何だかよく分からないけど、俺達にも何か手伝わせてくれ」
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