第123話 賢者の森の罠と魔女学校
賢者の森に近付くに連れ、モンスターとのエンカウント率は上がっていく。必死に倒している内に、いつの間にか2人は森の中に入り込んでいた。森に入ってもモンスターはひっきりなしに襲ってくる。襲ってくる種族は森らしく虫系のものがそのほとんどをしめていたものの、やはり2人の敵になるほどのものではなかった。
とは言え、その数はやはり脅威だ。無数の虫系モンスターに襲われ続けて戦闘を繰り返していく内に、2人は現在位置が分からなくなってしまう。
「しまった、迷ったぞ」
「今はそれどころじゃねぇ! 何だこの虫の数!」
「このままだと消耗するだけだ、まずはここから逃げよう」
「くそっ、逃げるのは嫌なんだけど……」
嫌がるアレサの手を握って、ユウタスは駆け出した。モンスターがいない方向いない方向と極力戦闘を避けて走っている内に、2人は森から出てしまう。
「あれ?」
「森から出てどーすんだよ。魔女の家を探さなきゃだろ。もう一度だ!」
「あ、ああ……」
その後も2人は何度も森の探索を試みるものの、どうしても大量のモンスターに邪魔されてしまい、十分な森の調査は出来なかった。
この不自然とも思える程の大量のモンスターの襲来に、ユウタスは首をひねる。
「これって……もしかして魔女が仕掛けた罠なんじゃ?」
「かもな。いくら何でもモンスターが多すぎる」
「それに平衡感覚や方向感覚も狂わされている気がするんだ。気が付くと森の外に出てしまってる気がする」
「こんな仕掛けがあるって事は、伝説の魔女はやっぱりまだこの森にいるのかも……」
森をしっかり調査出来ない理由が魔法による妨害なのだとしたら、こうなる事を想定していなかった2人ではどうしようもなく、探索はあきらめる事になった。
2人で反省会と言う名目でランチタイム。そこで前菜のスープを飲み干したアレサが切り出した。
「しかし、ここで詰まったら調査も終わりだな」
「俺らだけじゃどうしようもないもんな……」
「で、どうする? 2人だけで何か依頼を受けるか?」
「それより、アコの様子を見に行ってみようぜ」
こうして話はまとまり、魔法修行中のアコの様子を見に行く事に決まる。魔女組合の受付の魔女のおねーさんに聞いていた指導者の魔女の家に、2人はアポなしで向かった。
辿り着いたその家は個人で魔法の初歩的な技術を教えるところで、私塾のようなアットホームな雰囲気。所在地も街の少し外れたところにあって環境も悪くない。教えている生徒も数えるほどのようで、対象の魔女も子供達が多く賑やかな声が聞こえてきた。
魔女の家のイメージと違っていたため、2人は何度も住所とメモを見比べる。
「ここ……で、いいんだよな?」
「ああ、間違いないだろ?」
2人が戸惑っていると、その気配に気付いたのか家の主がドアを開ける。出てきたのは、いかにも魔女っぽい風貌でボリューミーなスタイルの魔女だった。
「あら、誰かと思ったらアコちゃんの友達ね。分かるわよ。だってあなた達、初めて見るんだもの」
「で、あの……アコは?」
「折角来てくれたのに悪いけど、アコちゃんはいないのよ」
魔女の先生はそう言うとため息をつく。すぐに会えると思っていた2人は、この予想外の答えに肩を落とした。
「あの、いないってどう言う……?」
「あの子、結構才能があったから私から魔女学校に推薦したの。だから学校に行っていると思うわ」
「じゃあ、その学校の連絡先とか教えてもらえませんか!」
「ふふ、そうね。ちょっと待っててね」
アレサの熱意に打たれた魔女先生は、笑いながら一旦家の中に戻る。そうして、すぐに紙を持って戻ってきた。
「ここに魔女学校があるわ。見学許可はこの紙を見せればいいから」
「有難うございます」
「あなた達の事はアコちゃんから聞いてるわよ。いい仲間みたいね」
こうして気の良さそうな魔女先生に見送られながら、2人は魔女学校へと向かう。魔女学校とは、文字通り魔女が通う学校で、魔女以外は許可がないとそれを見る事すら出来ない厳重な結界に守られている。
その結界を破るほどの実力があれば無許可でも辿り着く事が出来るものの、そう言う実力者はほどんどいないし、そもそもそんな人物は魔女学校そのものに興味を抱かない。と言う訳で、セキュリティはほぼ完璧なのだとか。
何故そこまでセキュリティが高いのかと言うと、魔法の力が強力だから。そんな力が悪用されないように、しっかり守られていると言う訳だ。
それはそうと、魔女先生の紹介もあって2人は魔法学校に通じるゲートを見つけ、通る事に成功する。魔女学校自体はどこにあるのかも謎とされていて、各地域にあるゲートを通らないといけない仕組みだ。
ただし、ゲートさえ通れば学校は見える位置にある。最寄り駅から徒歩3分くらいの近さに、学校側のゲートはあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます