活躍する賞金稼ぎ達
伝説の魔女は復活の夢を見る
第121話 謎の失踪事件
とある真夜中、闇の中で何かをしていた人影が突然倒れた。と、そのタイミングで謎の建物で奇声が響き渡る。星の見えない夜。少しだけ風がざわついている。
人里離れた場所での事件は誰にも知られる事はなかった。そうして、辺りの気配が落ち着いた頃に1匹のコウモリが飛び去っていく――。
その数日後、ギルドではこの時の事件が話題になっていた。そう、行方不明になったのは冒険者だったのだ。彼が受けた依頼は、とある魔女の調査。噂では人知れず多くの人間をさらい、魔法の実験に使っているとか何とか。
その魔女とは、400年以上前に魔女の反乱が起きた時に数十人の魔女を相手に1人でそれを収めた伝説の魔女カロ・デフィリウス。
かつて魔女達の暴走を抑えた彼女が世を乱す行為をするはずがないと、噂が出た時は誰も信じていなかったのだけれど――。
事件の詳細が明らかになり、多くの冒険者が怖がる中、やる気を出す冒険者も中にはいる訳で。
「なぁ、面白い事になってんな。この依頼、俺達で引き継がねぇか?」
「ちょ。アレサ、いきなり怖い事言わないで……」
そう、それはアレサだった。怖いもの知らずの彼女を怖がりなアコが止めようとしている構図は、ギルドではもうお馴染みのもの。もう1人の仲間のユウタスはと言うと、アレサほどではないにしても、依頼そのものには興味を抱いていた。
「まずはもっと詳しい情報がいるな。どうして尾行がバレたのか、どうやって殺されたのか……、まずは手口が分らない事には」
「ユウタスもあんまり興味を持たないでくださいっ!」
と、こんな感じでアレサ達がこの事件に興味を抱いたところで、ギルド内での盛り上がりは一時的なものにしかならなかった。何故なら、依頼が冒険者の失踪と言う最悪な形で終わったのもあって、依頼自体が取り消しになってしまったからだ。報酬が出ない事に冒険者は動かない。誰だってタダ働きはしたくないのだ。
この事件は治安部隊が勝手に捜査して適当な結果をでっち上げて終わるだろう。相手が伝説の魔女なだけに、そんな簡単に尻尾を掴ませてくれるはずもない。
伝説の魔女の犯罪を立証するには、それ相応の実力者がその隠蔽工作を暴かなければ――。
「でもアコだってこの事件には興味あるだろ? 好奇心がうずくだろ?」
「そりゃ少しは……でも依頼もなくなりましたし」
「俺の勘では、これはこの後に起こる大事件の序章だとにらんでる。今の内に色々と調べた方がいいと思うんだよな」
アレサは独自の嗅覚を持って、この事件の裏に何かあると考えているようだ。ユウタスも彼女の考えに賛同している。
「確かに、このままでは終わらない気がする」
「ユウタスまで?」
「この後にもっとヒドい事が起こったとして、アコはそれを止められなかった事を後悔しないか?」
「うー。またそうやって私に責任を押し付ける。分かったよ。でも絶対危ない事はしないからね!」
こうして、3人のお金にならない独自調査が始まった。この動きに他の冒険者は無反応。3人の考えに共感する者すらいなかった。よって、誰の協力もなく、3人だけの孤独な調査となる。
魔女が関わる事件と言う事で餅は餅屋、まずは街の魔女組合に3人は顔を出した。
「あの事件にカロ先生が関わっている? そんな訳ないでしょ。デマよデマ」
「じゃあ、犯人は一体?」
「そこは私達でも意見が割れていてね。と言ってもどの意見も推測でしかないんだけど……」
どうやら、魔女達の中でもこの事件について詳しい人はいないようだ。アレサ達はどんな小さな情報も手がかりになると考え、彼女達の推測の話に食いついた。
「どう言う説があるんですか?」
「話してもいいけど、ただの噂よ? 裏付けも何も……」
「それでいいんです。お願いします」
「はぁ、あんた達もモノ好きねぇ」
魔女組合の受付の人は軽くため息を吐き出すと、今魔女達の間でささやかれている説のいくつかを口にする。犯人は伝説の魔女の信奉者で、彼女が疑われている事を知って不愉快になって依頼そのものをキャンセルさせようと事件を起こした説。犯人が事件を起こした後で、伝説の魔女に罪をなすりつけようとしている説。魔術の実験自体が国家機密的なアレで、それが明るみになりそうだったので伝説の魔女のせいにしようとした説――。
魔女達の語る様々な説を聞いた中で、アコは隠蔽説を強く支持した。
「わ、私もカロ先生は誰かに利用されていると思います!」
「でしょ! あなた、気が合うわね。名前は?」
「わ、私はアコです」
「ねぇアコ。見たところあなたにも魔法の素質があるわね、でも独学でしょ? 私が基礎を教えてあげてもいけど、どう?」
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