第116話 アレサ、合流
その島に向かうには船で行くしかないと言う事で、依頼主の用意した船に乗って無人島を目指す。その船は依頼主の所有物で、操船は専用のスタッフが担当していた。島に着くまでは冒険者はお客さんで、島に着いてからが冒険者の仕事と言う段取りだ。だからしばらく冒険者はする事がない。
望むなら船から海の景色を眺めて楽しんだりしても良かったものの、今後の冒険の事を考えたアレサはその時がくるまで休んで体力を温存する事を選択する。
数日後、優秀なスタッフの操船で件の島が視界に入ってきた。ギルドで話題になっていた神々の戦いはまだ続いている。
このままでは船が近付くのも危険だと言う事で、寝室で眠っていた彼女は無理やり起こされた。そうして、そのまま操舵室まで案内される。
「このまま近付くのは大変危険です!」
「分かった。見えるところまで近付けたなら十分。ここでゲートを広げるから、しばらく待機していてくれないか?」
「了解です」
アレサは至近距離なら空間跳躍が可能な簡易転送ゲートを持参していた。この事態も想定はしていたのだ。船内にスタッフは数人いるものの、島の調査には誰もついてきてはくれない。なら、今からゲートで現地に転移しても何の問題もない。
彼女はすぐに装備を確認し、ゲートとなるシートを床に広げる。
「ゲートよ、我を望みの場所まで導き給え!」
ゲート稼働の呪文を唱えるとすぐにゲートは稼働。正常運転している事を確かめ、アレサは躊躇なくその中に飛び込んだ。次の瞬間、彼女は問題の島への転移に無事成功する。
その場所は島の端っこである浜辺。この場所ならまだ神々の戦いの被害は届いていない。アレサは持参した装備に欠けがないのを確認すると、調査を始める前にまずは空を仰いだ。
「さて、ここからどうするか……」
ずっと浜辺にいるなら取り敢えず安全なものの、それだと依頼である調査も進まない。依頼をこなしつつ、この島にいるかも知れない仲間を同時に探すのが今回のアレサのミッションだ。
なので、彼女は頬を叩いて気合いを入れると、危険な島の中央部に向かって歩き出した。ところどころに出来ているクレーターを避けながら進んでいると、早速強力なエネルギー波がアレサに向かってまっすぐに飛んでくる。
「うわあああーっ!」
この想定外の展開に彼女は何の対処もする事が出来ず、そのまま呆気なく吹き飛ばされてしまった。強烈な爆風で飛ばされる中、流石のアレサも死を覚悟していると、ふわっと優しい感触が彼女を優しく抱きとめる。
「誰かと思ったよ。どうやってここに?」
「えっ? ユウタス?」
そう、アレサを救ったのはユウタスだった。彼はそのまま安全な場所に移動すると彼女を降ろす。そうして、救出に来た仲間の姿をしっかりと目に焼き付けた。
「で、何でこの島に?」
「2人を助けに来たんだよ! アコは? アコも無事なんだろうな?」
「呼んだ? あ、アレサ! 何でこの島に?」
救出予定の2人から同じ質問をされて、さすがのアレサも頭を抱える。このコントを続けている間も、島では神と悪魔が力比べを続けていた。
轟音の響く中で、アレサはもう一度自分がこの島に来た理由を語る。
「俺は2人を救いに来たんだ。依頼を受ける形でな」
「依頼ねぇ。それってこの島の調査とかなんだろ? こんな状況だし」
「そうだよ! こんな危険な所、早く逃げようぜ!」
アレサは島にいた2人に対して脱出を勧める。助けたい2人と既に合流出来たのだから、もうこんなヤバい島にいる必要はないと言う訳だ。
その正論に対して、ユウタスもアコも首を縦には振らなかった。焦っているアレサに対して、ユウタスはずいっと真剣な眼差しを向ける。
「……じゃあ、協力して欲しい」
「は?」
「俺達が脱出するのはアレサの力を借りれば簡単かも知れない。でも、今この島で行われている戦いに決着がついた時、勝った方がどう動くか分からない……」
ユウタス曰く、この戦いの勝者が今度は世界を混乱に陥れるかも知れない。そんな不安の種を野放しには出来ないと――。
言いたい事は分かるものの、それが実現可能とは到底思えなかったアレサはすぐに反論する。
「何言ってんだよ、アレに勝てるのか? 何か策が……」
「あると……言ったら?」
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