第112話 サバイバル開始!

 無人島に飛ばされた事を自覚した2人は、すぐにサバイバル生活をする準備を始める。冒険で助けを呼べない状況になるのに慣れっこだったアコが、すぐに色々とその知識を生かして必要な準備をテキパキとこなしていった。


 食べ物の用意、住む場所の用意、島を探索して使えそうなものの収集。幸い、島は自然も豊かで果実類やきのこ類など、当面の食料はすぐに確保する事が出来た。水も川を発見したのでそれで事足りた。魚は海でも川でも捕る事が出来たし、火は魔法で発火出来る。

 いずれは救援も呼ばなければならなくなるだろうけれど、飛ばされた当日は流石にそこまでは手が回らなかった。


 安心して眠れるように、島の木々を集めて簡易的な小屋を作っている内に日が暮れていく。空と海を赤く染めながら沈む夕日はとても雄大なものだった。

 西日に照らされながら焚き火を焚いて早めの夕食。捕れた魚を焼いただけの単純な夕食を胃袋に収めながら、ユウタスは明日以降の事について語り始める。


「あの悪魔、何の意図もなくこの島に飛ばすなんて思えないよな」

「ですね。もしかしたら私達に何かをさせようとしてるのかも」

「明日はもっと詳しくこの島を調べてみよう」

「いいですね。こう言う冒険も私、好きです!」


 彼の計画にアコも満足げにうなずき、時間はゆっくりと過ぎていく。気がつけば空には星々が煌めき、丸くて明るいお月様が輝いていた。2人だけの夜は特にする事もなく、一日中の作業で疲れ切っていたのもあって、2人は作ったばかりの小屋に入るとすぐに横になってドロのように眠った。


 無人島に飛ばされて2日目の朝、寝るのが早かったのもあって、2人共海から昇る朝日と共に目が覚める。こうして、その日は前日に決めたように本格的な島の探索をする事になった。


 調べてみると、島は人がいないおかげで緑も多く、人が立ち入れないほどに木々の密集している場所もあった。生息している動物は小さな物が多く、不思議とモンスターの姿は確認出来なかった。島は中央辺りに大きな山がそびえている感じで、元々火山島だったような造形をしている。

 島全体の地形を確認したアコは、じいっと景色を眺めながら首をひねる。


「うーん。何て言うか、この島の地形、変だよ。普通の自然条件で出来ているように見えないって言うか……」

「やっぱり何かおかしい?」

「しっかりと調べた訳じゃないからハッキリとは言えないですけど」


 こうして2日目の探索は終わり、普通の島ではないかも知れないと言うぼんやりとした調査結果に終わる。

 この日の夜、2人がする事もなく夜空をぼうっと眺めていると、流れ星が音もなく流れていった。その星空の奇跡に、2人はこの島からの脱出を願う。やがて、どちらともなくあくびが出てきたので、2人共小屋に入ると泥のように眠ったのだった。


 3日目の朝、2人がまぶしい朝日に起こされたと同時に大地震が発生する。仮組みの小屋はあっさりと崩壊し、揺れが収まるまで2人はその場を動けなかった。

 揺れは時間にして1分くらいだろうか。不思議と津波が発生しなかったところから普通の地震ではないと直感したユウタスはすぐに上空に飛び上がり、そこで目に映った光景に驚愕する。今まで島になかったものが複数出現していたのだ。それは謎の人工的な建造物。その造形は転移前の遺跡のそれにどことなく似ていた。

 短時間でまるっきり姿を変えてしまった島の光景を目にして、彼は言葉を失う。


「ねぇ! 何が起こったの?」


 その言葉に正気に戻ったユウタスは地上に降りて、さっき目にしたものを包み隠さずに全て彼女に伝えた。この話を聞いたアコの目が輝いたのは言うまでもない。


「お願い! 私をそこまで連れてって!」


 ぐいぐいくるアコの圧に負け、ユウタスは彼女をそこまで連れていく。徒歩で行けば困難な道も飛んで上空ルートで進めば造作もない。

 抱きかかえられた彼女は、この空の旅も楽しんでいるようだった。


「すっごーい。楽しーい!」

「あんまり暴れないで、大人しくしてくれよ」

「はぁーい」


 その言葉で大人しくなったアコは遺跡に到着するまで押し黙る。現地に到着後、どこかに入り口がないかユウタスは遺跡の周りをぐるぐると旋回。

 やがて階段と、その上に出入り口らしき場所が見つかった。吸い込まれるようにそこに入ったところでユウタスはアコを降ろす。


「ありがと。さーて調べまくるよっ!」

「罠とか危ないから夢中になりすぎないでよ」

「だーいじょう……」


 アコが胸を張ったところで入ってきた扉がズシンと重い音を立てて閉じてしまった。この遺跡は生きている、2人はそれを実感して顔を青ざめさせる。


「こ、ここは、慎重に行こう……」

「そ、そだね。うん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る