第106話 調査隊の救出依頼

 始まりは2人が無人島に着く数日前に遡る。その日、アレサを含めた3人はとある依頼を選び取った。それは連絡がつかなくなった遺跡調査隊の救出と言うもの。調査隊のスポンサーがかなりの額の報奨金を出していたので、速攻でアレサが飛びついた格好だった。

 3人はすぐに準備を整えて、その時の調査隊が調べていた遺跡へと向かう。


 遺跡は鬱蒼と茂った木々が乱立する広大な森の中にあり、ジャングルの中を苦戦しながら進む事になった。目指す遺跡自体の規模も小さな町程度の広さがあるらしい。

 慣れないジャングル移動と言う事もあり、遺跡の入口に着いた時点で3人は既にかなり疲弊していた。森の中と言う事で、やたら湿度が高いと言うのもその理由のひとつになるだろう。


 遺跡の入口には、まるで目印のように象徴的な大きな像が建てられていた。見ようによっては悪魔にも見えるような代物だ。

 疲れていたアレサは、その像に軽くもたれかかる。


「やっと着いた……。今から探さなきゃいけないってどんだけだよ」

「とりあえず少し休むか」

「ですね、そうしましょう!」


 アレサはすぐにでも遺跡に入りたがっていたものの、残りの2人は休憩を提案。多数決により、少し休憩してから本題の調査隊の救出に向かう事となった。

 休憩がてら、ユウタスが遺跡の地図を広げてみんなに見せる。


「えっと、確か調査隊が行方不明になって3日経ってるんだっけ?」

「調査隊が用意した食料の状況から言って、今日か明日中には見つけないとヤバいっぽいんだよな……」

「何とか頑張って今日中に見つけましょう!」


 話し合った結果、急いで調査隊を見つけると言う結論になった。20分ほど休憩して調子を取り戻した3人は、呼吸を整えて遺跡へと足を踏み入れる。

 最初の内は順調に進めていたものの、道が崩れていたり、木々が行く手を阻んでいたりして、事前にもらった地図が役に立たなくなってきていた。そうして、ただ進む事だけに3人が集中してしまった結果、お約束の事態になってしまう。

 それに気付いたのは、先行するアレサの後をついていたユウタスだ。


「ちょ、アレサ待った! アコがいない!」

「またぁ……?」


 彼の報告を聞いたアレサは振り返って呆れた表情を浮かべる。とは言え、このまま見捨てる訳にも行かず、アコの探索をする事に。以前天空島で使った便利アイテムの追跡コンパスを使おうと作動させたものの、遺跡内の何かが原因なのか森全体がそうなのか、何故だか全然役に立たなかった。

 ぐるぐる回るコンパスの針を見ながら、アレサは首をかしげる。


「あれ? 何でだ?」

「アイテムが使えないんじゃ仕方がない。手分けして探そう」

「分かった。じゃあ俺はこっちを探す。ユウタスは向こうだ。後で合流しよう」


 こうして遺跡に入って早々、3人はバラバラになってしまった。アレサは右の通路を1人先走って歩いていく。ユウタスはその独断専行に対してため息をひとつ吐き出すと、指示通りに左の通路を歩くのだった。

 どちらの道も、ツタや雑草などの植物に覆われて簡単に進めそうにない。


 アレサは邪魔になる植物を切り崩しながら、ユウタスは背中の羽を出して空を飛びながら探索を続ける。流石に上空を飛びながら探せばすぐに見つかりそうなものの、鬱蒼とした植物によって上から見下ろしただけでは動く影を見つけ出す事すら困難を極めてしまう。


「参ったな。これじゃあ空を飛べても……」


 上空でユウタスが腕組みをしている頃、アレサは意味ありげな大扉の前に辿り着いていた。押しても引いてもびくともしない。そこで、依頼を受けた時に貰った魔法の鍵を使う。これは鍵に込められた魔法の力でどんな扉も開けられると言う代物だ。ただし、使い切りアイテムなので無駄遣いは出来ない。

 アレサは、この扉の奥に重要な何かが隠されていると勘で嗅ぎ取ったため、躊躇なくこの貴重なアイテムを使ったのだった。

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