第103話 魔王封じ大作戦!
「キャアアアー!」
「ぐわああー!」
「うわああー!」
吹き飛ばされた瞬間に全員が意識を失ったために、受け身を取る事も出来ず、そのまま遺跡の硬い地面に激突。しばらくの間、誰1人身動きが取れなかった。
「ふん、この程度か。つまらん」
魔王はそのまま3人に向かって悠々と歩いてくる。まだ誰もまともに動けない中、魔王はまずユウタスを蹴った。その体はさっきの攻撃と同じくらいに宙を舞う。
彼が地面に落ちる音が響く頃、今度はアレサを蹴る。同じ要領で最後にアコを蹴った。
「何だ何だ、張り合いがなさすぎるぞ。もっと遊ばせろ。殺すぞ」
3人を平等に蹴った後、魔王は魔法で全員を強制的に目覚めさせる。勿論ダメージは残したままだ。無理やり目を開かされ、3人共一旦は立ち上がるものの、すぐに片膝を付いた。アコに至ってはそのまま前のめりに倒れる始末。この状況、アレサ達に勝ち目は――ない。それでも魔王は反撃を望んでいるようで、すぐに攻撃する気配はなかった。
肩で息をしながら、アレサはユウタスの顔を見る。この時の彼女もまた蓄積されたダメージが大きく、喋るのも辛そうだ。
「で、どうする? 何か策はあるか?」
「ひとつだけ……ある」
「じゃあ、それを頼む……」
彼女に託されたユウタスは、遺跡の地面に手をつけると意識を集中させる。この遺跡は天空人と悪魔達が戦った場所。だから、天空人達の残留思念が今も悪魔を表に出させまいと邪悪な意思を封じている。
彼はそこに目をつけ、この偉大なご先祖様達の力を借りようとしていたのだ。
「この地に眠るご先祖様、俺達に力をお貸しください!」
この動きを魔王が気付かない訳もなく――。
けれど、更なる刺激を欲していた魔王は、邪悪な笑みを浮かべながらユウタスの行為を容認していた。
「ほう、面白い事を考えたな……」
やがてユウタスの祈りは遺跡に届き、この地を守っていた残留思念は開放されていく。その見えないエネルギーは、遺跡全体から魔王のいる中央広場にどんどん集まってきた。
自分の祈りが届いた手応えをしっかりと感じ取ったユウタスは、勢いよく顔を上げる。
「魔王よ! いにしえの天空人達の思念により再度その力を封じる!」
「カハハハ! いいぞ! やってみろ!」
魔王は腕組みをしたままふんぞり返り、逃げる素振りすら見せなかった。不敵に笑みを浮かべているところなど、流石は魔王と言ったところだろうか。
やがて、古代の天空人達のスピリットは大きなひとつのエネルギーとなり、そのまま標的に向かっていく。その強大な圧はゲリアスに憑依している魔王の魂だけを押さえつけた。
そのために本体の意識が表に現れ、悪魔は頭を押さえながら肩膝をつく。
「ぐうう……。我が魔王の意識が……」
「よし! 今がチャンスだ! みんな、行くぞ!」
作戦の成功を確信したユウタスがみんなに向かって声をかける。この呼びかけにアレサとアコも無言でうなずいた。そうしてそれぞれが攻撃の構えを取ると、怒涛の勢いで、それぞれの得意技を目の前で苦しむ悪魔の向かって狙い放つ。
「真摯・
「剣技!
「精霊よ、杖に宿れ! 大いなる風の
3人3様の個性的な技が同時にゲリアルに襲いかかる。隙を突かれた事もあり、苦しんでいる悪魔はこれらの攻撃を全く受け流す事が出来なかった。ユウタスの拳を受け、アレサの剣に斬られ、アコの魔法を浴びる。
その真っ黒な身体は見た目こそ傷の有無が判別出来ないものの、かなりのダメージを与えたに違いなかった。
「どうだ?」
「手応えはあったはず」
「どうか効いていて……」
合体技を放った3人はこの作戦の成功を祈る。そうして、遺跡はしばらくの間、沈黙に包まれた。
「だあああーっ!」
そこに突然響き渡る悪魔の咆哮。3人の冒険者の得意技を受けきった悪魔は、まるで何事もなかったかのように立ち上がる。
一方、全力を出し切った3人は、自分達の技を受けて平然と立ち上がってきた悪魔に動揺の色を隠せない。
「嘘だろ……大会の決勝用に残していた俺の最強奥義だぞ……」
「あの剣技が効いてない?」
「私、もう魔力残ってないです……」
ゲリアスはキッと3人をにらむと、ゆっくりと右手をかざす。何かの攻撃の前触れだ。それが分かっていて、疲れ果てていた冒険者達は誰も動けなかった。
「俺の野望を邪魔したお前らに死を与えてやる! ゲヒド!」
悪魔がその言葉を口にした瞬間、超巨大な爆発が発生する。そのありえないほどのエネルギーの直撃を受けた3人は、またしても簡単にふっとばされた。
「キャアアアー!」
「ぐわああー!」
「うわああー!」
今回の爆発は前回のファブスより更に強烈で、この遺跡全体にかけられていた封印の結界すら破壊してしまう。
巨大なクレーターの中心でひとりピンピンしているゲリアスは、何かが吹っ切れたのか悪魔らしい不気味な笑顔を浮かべた。
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