第102話 復活した魔王
「キョエエエエー!」
「な、何だ?」
「あれ! 魔法陣の活動が再開されています!」
「えええっ?」
アレサとユウタスがこの突然の状況に困惑する中、アコは冷静に事態の変化を読み取っていた。魔法陣の活動が再開されたと言う事は、魔王復活の儀式はまだ完全に失敗に終わった訳ではないと言う事。
奇声を上げたゲリアルはヨロヨロとさっきまでユウタスが座っていた椅子に座ると、不敵な笑みを浮かべた。
「こうなったら俺が我が王にこの身を捧げるのみ!」
「やばいです、早くあの悪魔を止めないと!」
「わ、分かった! アレサ!」
「ああ!」
アレサとユウタスは魔王復活を阻止するため、お互いの武器を構えながらゲリアルに向かって突進する。
「真摯・
「剣技! 流水の極み!」
2人の必殺技はほぼ同時に椅子に座った悪魔に直撃。その直後に謎の爆発が発生する。その爆風に吹き飛ばされた2人はきれいな放物線を描いて30メートルほど飛ばされ、そのまま受け身も取れずに地面に激突する。
この一部始終を見守っていたアコは、すぐに彼らのもとに駆け寄った。
「アレサ! ユウタス!」
「いててて……何だあれ」
「くそっ、拳が届かなかった」
「とにかく、ポーションを飲んでください!」
傷ついた2人に回復薬を渡しながら、アコは背後の爆心地に顔を向ける。すると、そこにはさっきまでとまるで別人の悪魔が立っていた。
「嘘でしょ……そんな……」
アコが震えながら両手を口に当てる。その漏れ出す負のオーラから、ゲリアルが目的を達成した事が離れていてもはっきりと分かったのだ。
「フハハハハ! ついに蘇ったぞ! 我を封じた天空人共を根絶やしにしてくれるわ!」
ゲリアル、もとい、魔王は復活早々それっぽいテンプレ台詞を口にして高笑い。全身真っ黒なのは変わらないものの、体の大きさはゲリアル時の二倍ほどに膨張している。背中の羽は更に大きく派手に広がり、まるでその力を誇示するかのよう。その顔も更に邪悪に変貌していた。それはまさに魔王と言うべきフォルム。
アコがガタガタ震える中、武闘派の2人は逆に闘志をメラメラと燃やしていた。
「いーじゃねーか、悪魔の王。これは倒し甲斐があるぜ」
「ご先祖様が封じた存在だ。決して勝てない訳じゃない」
「ちょ、アレサ? ユウタス?」
アコが戸惑っていると、2人は速攻で魔王に向かって飛び出していく。
「我に挑むか。まぁいい、その身で身の程を知れ!」
「剣技! 神速斬り!」
「真摯・ハイパー連撃パンチ!」
2人は魔王に息つく暇も与えずに攻撃を次々に打ち込んでいく。怒涛の連続攻撃に魔王も反撃が出来ないのか、ジリジリと後ずさっていた。
最初こそこの戦闘を無謀なものと思っていたアコも、一方的なこの戦況に考えを改める。
「2人共その調子です! 私も援護します!」
アコは杖を取り出すと魔王に標準を定め、今使える最強の呪文を口にした。
「精霊よ、我が杖に宿り力を与えよ!
呪文と供に杖から放たれた強力な電撃は狙い通りに魔王に直撃する。そこに2人の攻撃が合わさり、合体技として魔王に大きなダメージを与えていた。
「貴様ら……この我を後退させるか…」
「もう一度全員で攻撃だ!」
合体技に味をしめたアレサは、改めて後の2人に声をかける。ユウタスもアコもすぐにうなずき、その作戦に従った。
「剣技!
「真摯・
「精霊よ、杖に宿れ!
3人は全員で息を合わせ、それぞれ現時点での最強技を繰り出した。剣撃と拳撃、それに攻撃魔法。3つの力が合わさった時、お互いに影響しあって共鳴現象を生み出し、単発の威力の数倍、いや、数十倍の破壊力を発生させる。
この3人が現時点で繰り出せる最強の技の複合攻撃によって、周囲はまぶしい光と激しい熱に包まれた。
「うわっまぶしっ」
「やったか!」
「何も見えませーん」
3人がそれぞれ自慢の最強技を繰り出したのもあって、この攻撃がとどめになったと全員がそう確信していた。光が収まった時、そこにまるで無傷な魔王の姿を確認するまでは――。
「う、嘘……だろ?」
「そんな馬鹿な……」
「あの合体技で……無傷だなんて」
3人は自分達の無力さを実感してうなだれる。魔王は肩をコキコキと鳴らし、すっとアレサ達の前に手をかざす。
「いい目覚めの運動になったぞ。では、お返しをしなくてはな。ファブス!」
魔王は軽く呪文を唱え、その瞬間に3人の目の前の空間が爆発。さっきまで優勢だったはずの冒険者達は、成す術もなく簡単に吹き飛ばされた。
アレサも、ユウタスも、アコも膨らみすぎて破裂した風船のかけらのようにすごい勢いで空を舞う。その力の差は歴然だった。
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