第101話 ユウタスの洗脳を解くたったひとつの聖なる方法
「このままじゃユウタスに魔王の魂が宿っちゃう! 早く止めないと!」
「な、なんだってー!」
「もう止める事は出来ん。お前らには我が王の復活の瞬間を見ていてもらおうか」
ゲリアルは捉えた地上人を見下ろして、得意げな表情を浮かべている。魔王が復活したら一体何が起こってしまうのか……。少なくとも大きな争いが起こり、多くの血が流れる事は間違いないだろう。
アレサはどうにかそんな未来を回避しようと、体に渾身の力を込めた。
「ぐぬぬ……絶対に復活なんてさせない!」
「無駄だ。その拘束は人の力では……」
「ユウタス、起きろ! そんな悪魔に負けるな!」
「無駄な事を……。さっき戦って分かったろう。あいつはもうとっくに俺の傀儡よ」
アレサは必死に声をかけるものの、椅子に座ったユウタスがまぶたを上げる事はなかった。ゲリアルの行う魔王の封印解除の儀式は完了に近付いている。遺跡内に闇の力が漏れ出し始め、その臨界点が近い事を感じさせていた。
アレサは拘束を外そうともがきながら、無反応のユウタスを見つめる。
「くそっ、何か手はないのかよ……。このままじゃ……」
「そうだ! ここは天空島。悪魔の力より天空人の力の影響力の方が強いはずですよ!」
ほぼゲリアルの思惑通りに事が進む中、何かに気付いたアコが声をかける。それを聞いたアレサは、すぐには意図が理解出来ずに首を傾げた。
「それってどう言う……」
「アレサはそれを託されましたよね?」
このヒントを聞いたアレサはついに答えに辿り着き、更に気合を入れて悪魔の施した拘束をぶち破る。
「ふんす!」
「何ィ!」
「ユウタス、目を覚ませえーっ!」
手足の自由を取り戻した彼女は、トルスから預かった天空神の加護を懐から取り出すと、ユウタスに向かって思い切り投げつけた。アコの思いついた話が正しいなら、これでユウタスにも何らかの変化は起こるはず。
この時、ゲリアルは天空神の加護そのものを知らなかったようで、動揺すらしていなかった。
「また無駄な事を……王の復活は止められぬわ」
そのおかげで、全く邪魔される事なく天空人パワーアップアイテムはユウタスの体に接触する。魔法を弾き返す術式をかけられているのにも関わらず、この便利アイテムはその発情条件を満たさなかった。逆に、天空神の加護の方がユウタスにかかった『呪い』に反応する。
何と、ユウタスの体に触れた加護はその瞬間に大爆発を起こしたのだ。その影響で、彼はついに目を覚ます。
「うわあああっ!」
「な、何だ?」
爆風に巻き込まれたゲリアルは何が起こったのか把握出来ていなかったようで、顔を腕でガードしながらうずくまっている。ただ、この現象を予測出来なかったのはアレサ達も同じで、2人共ポカーンと口を大きく開けて呆然としてしまっていた。
で、爆発を直接その身に受けた当人はと言うと――。
「イテテテ……アレサ、何すんだよ」
「しょ、正気に戻ったー!」
「やりましたね、アレサさん!」
爆発は派手だったものの威力はそこまででもなかったらしく、ユウタスは健在。しかも洗脳が解けると言うおまけ付きだ。目覚めたばかりの彼は、状況こそ理解出来ていなかったものの、すぐに違和感を感じて椅子から降り、急いで仲間のもとに駆け寄る。
当然、その行為を目にした悪魔はキレた。
「ちょ、お前何やってんだ、戻れ!」
「お前こそ誰だ?」
「な、嘘だろ? 術が解けたってのか?」
自分の言葉に従わない姿を見て、ゲリアルは膝から崩れ落ちる。ユウタスはそんな悪魔をちらりとも見る事なくアレサ達と合流、アコの拘束を解いた。
「あ、有難うございます」
「俺、一体何をやらかしたんだ?」
「あいつに操られてたんだからユウタスに罪はないよ」
アレサはそう言いながら顎を動かす。その先にいたゲリアルは、頭を抱えて何か小声でブツブツと喋っていた。苦悩する悪魔の姿を見て、ユウタスは自分が連れ去られていた事を思い出す。
「あーっ! 大変だ、あいつ魔王を復活させるつもりだぞ!」
「いや、それはあいつから聞いたから」
「そうなの? いやだから、止めないと!」
「うん、だから阻止は出来たよ。お前を正気に戻せたからな」
アレサは腕を組むとドヤ顔になってふんぞり返る。ユウタスはしばらくその言葉の意味を理解しようと動きが止まったものの、やがて得心が行ったのかポンと手を打った。
「ああ!」
「感謝し給えよ。俺が世界を救ったんだからな」
「でもどうやって?」
「あー、それは……」
アレサがユウタスの洗脳を解いた話をしようとしたその時だった。さっきまで放心状態だったゲリアルがいきなり発狂する。
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