第96話 ユウタス救出作戦開始!

 コンパスの指し示す方向を目指して2人は駆け出した。道は廃墟のせいで歩き辛く、中々思うようには進めない。ただ、この先にユウタスがいると思えばこそ、2人の駆け出す足の動きは緩まる事がなかった。

 障害物のゴロゴロ転がる中を2人が歩いていたところで、アコが何かよく分からないものを踏んづける。


「わわっ!」


 その瞬間、そのよく分からないものは爆発。アコはこの爆発をまともに受けてしまう。どうやら罠が仕掛けられていたらしい。

 髪をアフロにさせながら、彼女は口から煙を吐き出した。


「ケホホ……まさかこんなところにまで罠だなんて……」

「大丈夫か?」


 黒焦げなアコの前でアレサはしゃがみこんだ。彼女はうまく爆発を回避して無傷な様子。心配されたアコはグッと手を前に突き出してサムズアップをする。


「ちゃんと爆発回避用の装備はしてましたから大丈夫です! それより、ここから先は気をつけないと」

「だな。どこに罠があるか分からんし……」


 アレサはアコの手を握ってゆっくりと立たせた。そこから先は、コンパスの指す方向を目指しながら慎重に警戒しながら歩いていく。ただし、道は大小様々な瓦礫でかなり埋まっており、そこから罠を見つけ出すのは至難の業。避けたつもりにも関わらず、2人は様々な罠に引っかかってしまう。

 基本的には2人に向かって何かが飛んでくる系のものが多く、常に上空や側面を警戒しつつ、小さな音にも敏感になっていた。


「はぁ、かなりしんどいな……」

「私がトラップ感知の魔法を使えたらいいんですけど……」

「じゃあ、次、その魔法を覚えてくれ」

「ですね、頑張ります」


 何度か罠にかかってそのパターンを学習した2人は、少し心の余裕も出来ていた。そうして探索を続けながら何気なくアコが建物の壁に触れた瞬間、そこに魔法陣が浮かび上がったと思うと真下の空間が消失。

 2人は成す術もなく、そのまま真下へと落下してしまう。


「「うわあああ!」」


 落ちた場所は遺跡の地下に広がる謎の迷宮。魔法的な罠だったので、すぐに天井の穴はふさがってしまった。ただ、落ちた先の迷宮も魔法的な明かりが灯っていたので、そこから進む事自体は問題はなさそうだ。

 落下した2人はしばらく尻もち状態で体を動かせなかったものの、大体の状況が分かったところで、まずはアレサが立ち上がる。


「アコ、平気?」

「うん。ここ、遺跡の地下だよね?」

「すぐにこんなところから出ようぜ」

「ですね!」


 アコもすぐに立ち上がって、この地下迷宮からの脱出が始まった。アレサはアコの手をぎゅっと握る。

 そうして、何のヒントもないこの迷路をずんずんと力強く歩き始めた。


「アレサ、正解のルートが分かるの?」

「こう言うのは勘だよ勘。大丈夫、きっと行ける」


 いかにも彼女らしい返事が返って来て、アコは感心するやら呆れるやら。それでも、その自信たっぷりな態度にアコも乗っかる事にした。


「……うん、分かった。アレサを信じるよ」

「アコも手を離すなよ、すぐはぐれるんだから」

「はい!」


 歩き始めた2人は分かれ道でも迷いなくアレサが選んでいく。地上はモンスターも現れたこの遺跡も、何故だか地下には何も現れなかった。だからこそ探索はスムーズに進むものの、その構造はかなり複雑で簡単に目的の場所には辿り着けそうにない。

 ここまでは別れ道の選択をアレサに一任していたものの、あまりに同じ景色が続くので、アコは引っ張られながら首をひねる。


「もしかして、同じところをぐるぐる回ってない?」

「えっ、いやまさか、そんなはずは……」

「ねえ、今度は私に道を選ばせて」

「うーん、じゃあ……」


 代わり映えしないダンジョンの景色に対してはアレサも不安を感じていたようで、アコの要求を渋々受け入れた。こうして許可を得たアコの目はキラキラと輝く。

 彼女のトレジャーハンターの実力を示すその選択の機会はすぐに与えられる。2人の目の前に3方向の道が現れたのだ。


「じゃあ、アコが選んでみてよ」

「うーん、そうしたらぁ……」


 今まではアレサが即決してきたこのシーン。間違えてはいけないと言うプレッシャーのせいで、アコは自分の答えをなかなか導き出せない。


「あっちでもないし、そっちでもないし……かと言ってこのまままっすぐと言う訳にも……」

「早く決めろよっ! 日が暮れるぞ」

「わ、分かったよっ! じゃあ……」


 急かされたアコが焦って指し示したのは一番右の道。こうしてアレサ達はその指示通りに歩いていく。すると、すぐに2人に向かって無数の矢が飛んできた。

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