天空武闘会

第85話 ユウタスからの呼び出し

 バカンスも十分に楽しみ、女子2人は地元に戻ってきた。その後、魔法通信で連絡を取り合って3人は3週間ぶりに合流する。待ち合わせ場所はやはりと言うかギルドの喫茶スペース。先に来たのはアレサ、アコのバカンスを楽しんだ女子組だった。

 2人がそれぞれ好みの飲み物を飲んでいると、ユウタスがひょこっと現れる。


「お、先に来てたのか」

「おっそい! ユウタスが呼び出したんだろ」

「いや悪い悪い。準備に手間取っちゃって」

「準備って何ですか?」


 アコはユウタスのその言葉に首を傾げる。彼はその質問を待ってましたとばかりに深呼吸すると、真剣な顔つきに変わる。


「あのさ、俺、ちょっと抜けるから。それを言わなくちゃと思って。こう言うのは直に話さなきゃと思ったし」

「は? 何それ?」

「俺は元々天空島の武闘家なんだ。今度大きな大会があって、そこに出る事になったから」


 ユウタスは自分の都合を優先するため、地上の冒険者の仕事はしばらく休業する、そう2人に説明した。武闘家にとってこの大会がどれほど重要なものかとか、大会が終わったらまた戻ってくるとか、この決断を自分勝手だと思われないように、それはそれは熱心に熱心に喋り続ける。


「……だから、どうか理解して欲しいんだよ」

「分かった。じゃあ俺もお前の勇姿を見てやんよ」

「へ?」

「わ、私も応援に来ます!」


 必死になって話すユウタスを見て、女子2人はそこまで彼が情熱を傾ける天空武闘会に興味を持ったようだ。仲間からの応援の熱意に、ユウタスは胸が熱くなる。


「2人共有難う。あはは、無様な試合は見せられないな」

「優勝しろよ、ユウタス!」

「簡単に言うなぁ……」


 アレサの激励にユウタスは首の後を触りながら苦笑い。自信なさげな彼を見たアレサは椅子から立ち上がり、右手を握って前に突き出してニヤリと笑う。


「俺が見たところ、お前は強い、自信を持て!」

「そっか、ありがとな。じゃあ、チケットとか準備しておくよ」

「俺らを退屈させんなよ」

「ああ、善処する」


 言うべき事を全部言い終わると、ユウタスはその場から立ち去ろうとする。その姿を見て、背中越しにアコが声をかけた。


「あの、もう出発するんですか?」

「ああ、体を天空島に馴染まさないといけないからな。それじゃ」

「えっと、頑張ってください。健闘を祈ります」


 こうして、ユウタスは地元である天空島に帰っていった。2人は彼をそれとなく見守って、姿が見えなくなるとまたギルドに戻る。


「天空武闘大会かぁ……。武闘大会ってどんな感じなんだろうな」

「私、行った事ないです」

「俺もだよ。あいつの戦う姿も早く見てみたいな」

「楽しみですよね」


 2人の天空談義はその後も天空島の事やら、天空人の事やらネタが次々に浮かんで、中々終わらなかったと言う――。

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