第81話 洞窟のボスは灰色イソギン
「ええーっ! 嘘でしょ?」
完全に閉じ込められた後、アコはどうにか脱出出来ないか色々と試すものの、魔法でも扉は壊せないし、他に出入り口も見つからないしで、途方に暮れてしまう。
そうして、その場にぺたりと座り込んで天を仰ぐのだった。
アコが宝物庫に閉じ込められたその頃、アレサは洞窟ダンジョンを1人さまよい歩いていた。ある程度奥まで入り込んだところで、この洞窟に住み着いたモンスターが外敵を排除しようと彼女に向かって襲いかかってくる。
洞窟らしくコウモリやら目の退化した白い大きな虫のモンスターが多く、それらをアレサは片手で難なく倒していく。その感触から言って、どうやらこの洞窟には強いモンスターはいないようだった。
「ふう。視界は悪いけど、モンスターが雑魚で良かった」
こうして、たまに襲ってくるモンスターを倒しながら更にアレサが進んでいくと、罠なのか経年劣化なのか、突然洞窟の天井が崩れ始める。
その前触れを直感で感じ取った彼女はギリで回避に成功するものの、その後も連鎖的に天井が崩れ始めたため、必死で走り抜けるしかなくなってしまった。
「何だよこれ~っ!」
落ちてくる天井に潰されないように必死に走りまくっている内に、アレサは謎の広い部屋に転がり込んだ。入った途端に部屋の周りに取り付けられていた松明に自動的に火が灯る。どうやら特殊な部屋に入ってしまったらしい。
彼女は首をキョロキョロと動かして、何が起こってもいいように最大限の警戒をする。
松明の明かりが煌々と室内を怪しく照らす中、ゆらりと大きな影が突然現れた。部屋の真ん中に描かれた魔法陣から出現したと言う事で、どうやらそれは予め仕込まれていたものらしい。
自動的に召喚されたその影はやがてしっかり実体化し、正体を剣士の前に明らかにした。
「おいおい、マジかよ……」
現れたのは灰色イソギンチャクモンスター。海の主のイソギンよりは小柄なものの、それでも全長3メートルはあろうかと言う大きさだ。このイソギンの体から分泌される粘液こそが海の主を倒すとっておきの切り札になる。
とは言え、そう簡単に採取されてくれそうにはなかった。何故なら、目の前のイソギンこそが門番モンスターであり、無断で洞窟に入った侵入者を絶対殺す罠そのものだったからだ。
「倒すしかないのかよ……」
灰色イソギンはメインの武器の触手をウニョウニョと自在に動かして侵入者排除に動き始める。その攻撃がいつ来てもいいように触手の動きをじいっと見つめていたアレサは、気持ち悪くなって吐きそうになる。
「うえええ……」
どうやら吐き気に耐えきれず少し戻してしまったようだ。灰色イソギンの触手はすぐのその吐瀉物に反応する。その触手の動きを攻撃と読んだアレサはすぐに背後に飛び退くと、素早く剣を構えた。
ただ、灰色イソギンは環境の変化を触手で感じ取りたかっただけのようで、すぐに攻撃には移らない。そこをチャンスだと判断した彼女は、先手必勝とばかりにイソギンに向かって斬りかかっていく。
「剣技! 水神剣・空絶!」
灰色モンスターの触手は海の主と違ってアレサの剣で斬り裂く事が出来た。なので、剣技でスパスパと触手を切断していく。先制攻撃を受けたイソギンは大変に痛がり、すぐにアレサから距離をとった。この時点で灰色イソギンの触手は半分以上失われている。
地面には切断された触手がまだ命を持っているのか、うねうねと動いていた。それを見たアレサはまたしても戻してしまう。
「うえええ……」
吐いている間は流石の彼女も無防備になる。その隙を狙ってイソギンの反撃が始まった。触手は剣で斬られてしまうと言う事で、今度は毒液を吐いてきたのだ。
イソギンの頭頂部から吐き出されたそれは、まっすぐにうつむいたアレサに向かう。ギリギリで反応して避けたものの、一部の毒液がアレサにかかってしまい、その部分、左肩から腕に面しての服が溶けてしまう。
「キャアアッ!」
まさかの遠距離攻撃に、アレサも一定の距離を取らざるを得なくなってしまう。毒液攻撃、服だけを溶かすのか肉体にはあまりダメージがなかったものの、吐き出す毒がそればかりとは限らないために、彼女の頬に一筋の汗が流れた。
「これじゃ、迂闊に近付けないぜ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます