第79話 海の主の弱点
「このランテってのがあの海の主じゃねーか?」
「可能性は高そうですね」
「何々……? こいつの弱点は……」
ランテの項目に書いているのは大きさと特徴と、後は――。記載されている文章を丁寧に読み進めると、弱点らしき項目が浮かび上がってきた。
「ええっと……ランテは体を特殊な魔法粘液で守っていて、攻撃は何も通さない。この粘液を溶かすには、対となる魔法粘液をぶっかけるのが有効……だって」
「そんなのどこにあるんだ?」
「灰色イソギンの粘液が有効らしいですね」
「ほほう……」
その後、灰色イソギンについて書いてある資料も集め、とある海賊がそれを瓶に詰めてどこかに隠したと言う情報を手に入れる。灰色イソギンの粘液はどんな病気にも効くと言う魔法薬の材料になり、高く売れていた時代もあったのだとか。
今は別の方法で魔法薬が作られるようになり、結局、その海賊のお宝は放置されてしまったのだと。
「このお宝、大昔に海賊がハロワンビーチのどこかに隠したって伝説があるそうです。信憑性が不安ですけど」
「取り敢えずそれを探してみようぜ。見つかったらラッキーじゃん」
「ですね、探してみましょう」
こうして、海の主を倒すためのお宝探しが始まった。その海賊の伝説を頼りに海岸沿いを歩き回るものの、それらしきものは発見出来ず、2人は頭を悩ませる。
「それっぽいものは見つからねーなぁ」
「簡単に見つかるならもうとっくに発見されてるでしょうしね」
「もっと情報を集めないとだな」
「ですね」
その後、更に図書館に通ったり、例の長老に話を聞いたりして、海賊がお宝を隠したのはビーチから少し離れた離れ小島の洞窟にあるのではないかと言う話に辿り着く。
その説を口にした長老は、2人に向けて真剣な顔で警告した。
「じゃが、あそこは今やモンスターの巣窟になってしまっておる。死にたくなければ近付くでない。いいな!」
長老の気迫はただの噂話ではない信憑性を感じさせ、2人は顔を見合わせてうなずきあう。
「その洞窟にきっとお宝があるに違いないぜ」
「私達2人ならモンスターなんて楽勝ですよね!」
「当然だろ! 早速行ってみようぜ!」
モンスターが出没すると言う事で、まずしっかり武器とかを装備した2人は、その離れ小島に向けて出発。島自体は割はすぐに見つかったので、小舟を借りてえっちらおっちらと進んでいく。すると、行く手を阻むように海上からぬうーっとまたしても触手が襲ってきた。濃い紫の無数の触手が船を漕ぐ2人に向かって迫ってくる。
操船をアコに任せ、海上の様子をうかがっていたアレサはこの不意の攻撃に速攻で反応し、剣を抜いた。
「この海には触手のモンスターしかいないのかよーッ!」
最初に海で襲われたときは丸腰だったために何も出来なかったアレサも、自慢の剣を手にした今回は水を得た魚で、襲い来る触手をサクサクと斬り倒していく。
どうやら海の主と違い、襲ってきた触手は魔法粘液を体に分泌させてはいないようだ。攻撃手段の触手をほぼ斬られたモンスターは、ぷかりとその姿を海上に表した。
今回の触手モンスターもやはりイソギン系でぬぺっとした体をしている。直接襲う事を止めたそのモンスターは、残った触手をこすり合わせていた。
その特徴的な動作から次の攻撃を予測したアコは叫ぶ。
「アレサ、ちょっと櫓をお願いします!」
「わ、分かった。どうするんだ?」
「あのイソギン、魔法を使おうとしているので先に焼きます!」
アコは懐から魔法の杖を取り出すと、速攻で炎の精霊魔法を行使した。精霊を呼び出す呪文を唱えると、杖の先から爆炎が発生。宣言通り、イソギンモンスターが魔法を使う前に丸焦げにする事に成功する。
生命活動を停止したモンスターは、そのまま海の底に沈んでいった。
香ばしい匂いをさせながら目前で退場していくイソギンの成れの果てを目にしたアレサは、船を漕ぎながら好奇心を踊らせる。
「アレ、食べたら美味しいのかな」
「止めた方がいいですよ。多分お腹を壊すか死にます。毒があるはずなので」
「そか。じゃあいいや……」
モンスターを一体撃退した事でその情報が周りにも伝わったのか、もう他のモンスターは出現しなかった。と言う訳で、2人は無事に目的の島に到着する。
島に上陸したところで、早速伝説の洞窟探しが始まった。
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