第77話 海の主撃退計画
「う、嘘でしょ……」
電撃は通じていないものの、魔法攻撃を受けた事でモンスターは激高。体の上部にある無数の触手を動かしてアコとアレサを強く弾き飛ばした。その衝撃は大きく、2人は10メートル以上も飛ばされる。
下が砂地じゃなければ即死したかも知れないほどのダメージを受け、2人は落下後しばらく体を動かせなかった。
「こ、これはちょっと無理だな……」
「ちょっと相手を舐めてました……ね……」
アレサとアコが死を覚悟する中、イソギンモンスターはさっきの攻撃で満足したのかそのままどこかへと去っていく。こうして2人は何とか生き延びられたのだった。
モンスターが去って安全が確認されたところで、観光協会の人が倒れた2人を回収。病院で魔法治療を受けて無事に回復する。
その後、2人は退院して、予約していたホテルへと向かう。ホテルにあるトレーニングルームで体の調子を取り戻そうとストレッチをしていると、そこに観光協会長が残念そうな表情を浮かべながら現れた。
「お二方でも無理でしたか……」
「いえ、まだです! 次こそはあいつを倒してみせます!」
「しかし……」
会長は昼間の戦いの惨敗振りを見て、2人に対する期待をすっかり失ってしまっている様子。そこで、アレサは力こぶを見せつけると全力で断言した。
「任せてください。しっかり準備すればあんなモンスター、チョチョイのチョイですよ!」
「そ、そうですか? では引き続きお願いします。ですが、決して無理はなさらないでくださいね」
「私達はプロですよ! 勝てない戦いはしませんから!」
会長が去ってストレッチとトレーニングを終えた2人は部屋に戻り、早速明日以降の作戦会議を始める。
「何か手はないかな」
「まずはあのモンスターの情報を集めないとですね」
「ああ、普通の攻撃が効かなくても弱点とかはあるかも知れないもんな」
「じゃあ明日は聞き込みですね!」
こうして話し合いの結果、まずは情報収集をする事になる。この場所に現れる以上、誰かが何かを知っている可能性に賭けたのだ。噂話でも昔話でも言い伝えでも何かしらの情報を地元の人が持っている可能性は高い。それらの情報を集めて改めて攻略を考える。
そう決まったところで、2人は早めに就寝した。早朝から聞き込みを開始するために。
次の日、2人は朝日と共に目を覚ました。素早く着替えて朝食を済ませると、すぐに行動を開始する。早朝に出歩くのは主に老人だ。老人こそ生きた情報の宝庫。
2人は手分けして、この現地の生き字引達に話を聞いていく。
「あの、すみません、ちょっといいですか?」
「うん? 何かねお嬢さん」
「あの昨日海に出没したモンスターについてなのですが……」
「ああ、あんなの儂も初めて見たわい」
2人はそれぞれモノ知りそうな人を中心に聞き込みを進めるものの、反応はみんな同じで、詳しい事を知っている人物には辿り着く事が出来なかった。
日も高くなり、出歩く老人もいなくなって来たところで、2人は取り敢えず合流して情報交換をする。
「どうだった?」
「こっちは全然ダメ。アレサは収穫あった?」
「いや、一緒だよ。困ったなぁ……」
早朝から4時間ほど動き回って、全く成果が現れない事に2人は落胆した。お互いに腕を組んで、今後どう動けばいいか悩んでいたところで、アコが何かを閃く。
「やっぱり無作為に聞いていたのが非効率だったんじゃないかな?」
「と言うと?」
「この辺りの長老に直接聞きに行こうよ」
「その手があったか! アコ頭いいな!」
と言う訳で、この辺り一帯で一番の物知りの人を探す作戦に変更。この作戦自体は数人の御老体に話を聞くだけで達成されれる。
偶然にも、この地の長老の知り合いに3人目で当たったからだ。
「うん、そう言う事なら私が話をつけてあげよう」
「お、お願いします!」
そのおじいさんの案内で向かった先にあったのは長老と言う割に割と地味な普通の家。家の佇まいを見たアレサは納得行かない顔で首を捻る。
「ほ、本当にここなんですか?」
「ああ、別に物知りだからって権力者とは限らんだろ。私の親友は結構な変わり者でね。だから地元の歴史にも詳しいのさ」
「そ、そうですか。すみません」
「あはは、別に気にしやしないよ。とにかく、私が話を通すから、後は好きに聞くといい」
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