第72話 到着! ハロワンビーチ
こうして2人は魔法の
その慣れの速さに、アレサが若干戸惑ってしまう程。
「本当に運転初めてなのか?」
「そうですよ、でも楽しいです」
「ノッてるのはいいんだけど、安全運転で頼むぜ……」
アコの運転は安定していて少しも揺れる事はない。それでも、初めて体感するスピードにアレサですら若干の恐怖を覚えてしまう。歩きなら3日はかかるその距離を、アコの運転する絨毯は1時間程度で到達してしまったのだ。
その速度で飛ぶ鳥がいない程の速さで、気がつけば目的地に辿り着いてしまう。
陸路なら地形に影響されるので必要になるナビも、上空を飛ぶ場合は目的地まで直線で向かえるためほぼほぼ必要がなかった。アレサは流れる眼下の景色に目を回しながら、ビーチが近付いた時に一言伝えただけ。ほとんどアコだけの力で移動は完了する。
2人共、旅の風情でもある移動中の景色堪能はあまり楽しめなかったようだ。
「ふう、スリル満点でしたね」
「アコ、調子に乗ってただろ。早すぎるよ」
「ごめんなさい、楽しくてつい」
「まぁいいや、適当なところで降りよう」
2人が目的地に決めたハロワンビーチは常夏の海水浴場。なので、平日でもそれなりにお客さんで賑わっていた。
絨毯を街の広場に降ろした2人は、すぐにそれをしまうと、早速観光客で賑わう浜辺に向かって歩き出した。
「アコはハロワンは初めて?」
「はい、アレサは?」
「俺も初めてだ。観光地って毎日がお祭りみたいなんだな」
「ですね~。ワクワクしちゃいます」
ハロワンビーチはさすが有名観光地らしく、浜辺に向かうまでの道中にも様々なお店がひしめいていて、お土産物だとか、海水浴の便利グッズだとか、地元の名産品だとか、カフェだとか、レストランだとか、とにかく魅力的なお店がズラッと並んでいた。
アレサもアコも初めて来たと言うものあって、各店舗をじっくりと眺めてしまって中々先に進めない。道を歩く観光客の数も多く、2人は少し人酔いをする始末だった。
「すごいお店の数ですよねぇ~。人もいっぱいです。平日なのに」
「金持ちが多いんだろ。金持ちは休みたい時に休めるからな」
「あ、あのお店、可愛いもの売ってますよ!」
「買い物は後、まずは海に行こうぜ!」
アレサはお店に引き寄せられるアコを引っ張る感じで、今回のバカンスの一番の目的地に向かって強引に歩いていく。そう、その道の先にあるビーチだ。
大陸一番の海の観光地であるハロワンビーチは、そりゃあもうとても素晴らしい景観を誇っていた。真っ青な空に、クリアな海。真っ白な砂浜、耳をなでる潮騒の音。
見渡せば海の家もズラッと立ち並び、楽しい音楽やら美味しそうな匂いやら。ビーチを歩く観光客の姿も多く、みんなそれぞれのペースでこの大自然を楽しんでいた。
「へぇ、すごいな。俺、こんなに賑わっている海は初めてだよ」
「私もです。このまま飛び込みたくなっちゃう」
「待て待て! まずは水着に着替えんと」
「ですね。行きましょっか」
2人はまず更衣室のある海の家に向かい、すぐにそれぞれ準備していた水着に着替える。
アレサの水着はは筋肉質でナイスバディなスタイルに似合うような派手めでちょっと大胆な赤いビキニ。対象的にアコの水着は大人し目のスタイルに似合う控えめなセパレートタイプの地味めなデザインの青い水着。
「やっぱりちょっと恥ずかしいですね」
「何でだよ、みんな水着じゃんか」
「でも、私、スタイルが……」
「そんなアコにいい言葉を教えるぞ。気にしたら負け、だ!」
アレサの堂々としたその一言で、ようやくアコも吹っ切れ、2人はビーチに繰り出した。海に来たら泳ぐよねと言う流れで、そのまま真っすぐ波打ち際まで進む。
いざ海に入ろうとしたところで、アコの肩をアレサが掴んだ。
「いきなり入ったら危ないだろ。まずは準備体操」
「あ、そうでした。危ない危ない」
アコは右手で軽く自分の頭を叩く。そうしてアレサのする動作を真似て、入念に準備体操をして体をほぐした。
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