第71話 魔法の絨毯屋さん
公園で合流した2人は揃って歩き始めた。目的地はレンタル魔法の
陸路なら馬車、空路なら魔法の絨毯。陸路だと山賊が出てくるかもだし、ここは少し値が張っても空路一択となる。
勿論、空路も鳥モンスターが襲って来る可能性を否定は出来ないのだけれども。
2人が目的のレンタル屋さんに着いた時、平日なのもあって店内はガランとしていた。開店したばかりと言う時間的要因も大きいのだろう。
「き、来たな。アコは借りた事ある?」
「わ、私、ないです。お金なかったんで……」
「お、俺もだぜ……」
2人共この手のお店に来るのは初めてだったようで、緊張からか店の間でしばらく動けないでいた。ただ、ずっと立ち止まっていても何も始まらないと、2人は顔を見合わせてうなずき合うと、勇気を出して同時に扉を開ける。
「いらっしゃいませ! レンタル絨毯の店、マアルにようこそ! どのプランにいたします?」
「え、あの、えっと、期間は3日……3日でいいかな?」
「そ、そうですね、多分?」
緊張した2人は受付の人からのいきなりの質問に頭の中が真っ白になる。日程はしっかり計画していたものの、どんなトラブルが起こるか分からないと、頭の中が断言するのを拒否してしまっていたのだ。
「予定が定まっていないのでしたら、プランはこちらの後払いと言うのもありますが」
「あっ、そ、それでお願いします」
「分かりました。では絨毯の種類は何になさいますか?」
受付の人が示した魔法の絨毯のバリエーションは、一番安いボロっちい絨毯から最高級の乗り心地の絨毯までのグレードの選択、それが済んだら絨毯の柄などのデザインの選択に移る。
これは好みの問題なので、2人でああだこうだと意見を出し合いながら納得するものを選んでいった。お店に入ったのが初めてと言う事もあって、あれにしようこれにしようと中々決められない。
最初から決めていれば数秒で終わるこの作業に、30分以上かけてしまった。
「じゃあ、この普通のやつで……」
「デザインはこの赤を基調としたこれでお願いします」
「分かりました、少々お待ちくださいませ」
悩みに悩んだ2人は結局一番普通の、一番標準的な絨毯を選ぶ。受付の人がその絨毯を取りに行っている間、アレサとアコは顔を見合わせた。
「やっぱ、普通が一番だな」
「ですね!」
やがて受付の人が戻ってきて絨毯は2人に手渡される。その初めて見る魔法のアイテムに2人の目はキラキラと輝いた。
「あの、それですぐに使われます? 絨毯の使い方の説明は?」
「えっと、お願います」
「分かりました。まずですね、絨毯をこうやって広げてそこに座りますよね、そこで……」
受付の人からの分かりやすい説明を聞いて、2人は絨毯の操作方法を頭の中に叩き込む。業務用絨毯の操縦は免許がいるものの、家庭用絨毯にそれは必要ない。
なので、絨毯を動かす魔法の素養があれば誰でもすぐに使う事が出来るのだ。
「……以上ですけど、何か質問はございますか?」
「えっと、大体分かった……と、思う」
「私達……バカンスでハロワンビーチまで行くんですけど、魔力的に一気に行けるでしょうか?」
「えっと、じゃあちょっと計測してみましょうか?」
心配性なアコは自分の内在魔力を計測し、絨毯の飛行距離と照らし合わせる。その数値を目にした受付の人は満面の笑みを浮かべた。
「これでしたら大丈夫ですよ。十分に余裕があります。3往復分の数値が読み取れましたので」
「本当ですか! 安心しました!」
「よし、じゃあ行こうか」
「良い旅を!」
こうして受付の人に太鼓判を押されて自信をつけた2人は店を出て、早速地面に絨毯を広げる。そこに乗って早速教えられた通りにアコが魔力を込めると、絨毯はすぐに反応してふわりと宙に浮かんだ。
「あ、結構簡単ですね、これ」
「行けそうか?」
「はい、大丈夫です。アレサにはナビをお願いしますね」
「おう、任しとけ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます