第66話 森モンスターの真のボス
「よくも私の可愛い部下達を残忍に殺してきくれたな。今からきっちりお礼をしてやるぞ」
どうやら森のモンスター達には真のボスがいたらしい。その真ボスが森の出口を塞いでいる。倒さなければ森から出られない。
もう戦闘は終わったと油断していた3人は、この突然発生した最終戦イベントに一瞬動揺する。
「は、はは……。やっぱそう簡単には行かないか」
「む、ムチャクチャ強そうです……」
「安心しな。こう言う時のとっておきだ……」
女子勢2人が声を震わす中、ユウタスは自信満々な態度を見せる。
「ほら、今回はこれがある!」
「それは! 天空神の加護!」
「この間、知り合いに会った時に譲ってもらったんだよ」
そう、ユウタスは一緒に地上に降りたトルスに会って、彼が持っていた天空神の加護を譲ってもらっていたのだ。
――当時、自身にとっても切り札であったため、トルスも中々首を縦に振らなかった。
そこで、ユウタスはいくらでも払うと口にする。その言葉に心が動いたのか、トルスは本来の価格の5倍の値をふっかけてきた。多分彼はそれで厄介払いできると思っていたのだろうけど、ユウタスはその額を余裕で支払ってしまう。
こうして売買が成立し、ユウタスは天空神の加護を手に入れたのだ。
「けど、その加護、俺も使ったから中古品だぞ、それでいいのか」
「ああ、お守りみたいなものだからな。多分使わないから」
「……まぁいいさ。好きに使いな」
と、そう言うやり取りがあって、今この冒険で使う機会がやってきたと言う訳だった――。満を持して取り出した、中古で質の低い天空神の加護をユウタスは空に掲げる。
彼の祈りに呼応してすぐに加護の力は発動し、その体が黄金色のまばゆいオーラに包まれた。
「行くぞおおおお!」
超エネルギードーピング状態になったユウタスは、速攻でこの真ボスに向かって攻撃を仕掛ける。その速さは戦士のアレサですら捉えられない。
全く別人の動きになった彼の姿を見た女子2人は、素直に応援に回る。
「ユウタス! やっちまえー!」
「圧倒的に勝ってください!」
「任せろ!」
ユウタスは2人の期待に応え右手を力強く上げたかと思うと姿勢を低くしてそのまま突進、全長10メートルのバケモノにパンチを浴びせまくる。一撃一撃の力が巨人ボスの体に大きなダメージを与え、ボスは痛みで絶叫しながら後方に倒れた。
この時、その質量から森に小さな地震が発生する。
「グオアアアア!」
「トドメだ!」
ここで勝機を感じ取ったユウタスは自身の最大の技でしとめようと、思いっきりジャンプした。一気に地上30メートルほどに飛び上がった彼は、そのまま背中の羽を出し、自由落下プラス自身の飛行パワーで極限まで加速、そのエネルギーを乗せた必殺の一撃をボスに放った。
「神撃! メテオパァァァンチッ!」
その一撃をボスの腹部に当てた瞬間、あまりに強い力がかかってしまったのか、加護がその負荷に耐えきれず砕け散ってしまう。
加護の力がなくなった瞬間、反動がもろにユウタスに跳ね返り、ユウタスは呆気なく弾け飛んだ。
「ぐあああああっ!」
「「ユウタス!」」
楽勝で片付くと信じてこのバトルを観客状態で見守っていた女子2人は、この意外な展開を前に絶叫する。
自爆したユウタスは地面に強く叩きつけられ、そのダメージで動けなくなってしまった。
「アコ、ユウタスをお願い!」
「は、はいっ!」
アレサはユウタスのケアをアコに任せて、自らは真ボスの前に躍り出た。
「あなた、言葉が喋れるんだ。私はアレサ、あなたは?」
「フハハ。これはな、私に歯向かった賢者を食った時に身に付いた知恵だ。私の名前、部下にはチレと呼ばせておる。まぁ、意味はないがな」
「チレ、もうこの森にはあなたしかない。私達を退けてもやがて人間は追手を差し向ける。分かるでしょ……」
「仲間はいくらでも召喚出来るぞ! お前達を食ったらすぐにでも呼び寄せる」
巨人モンスター、チレはアレサの説得に応じず、飽くまでも交戦の態度を崩さなかった。そこで彼女も剣を抜いてチレの前に立ちふさがる。
達人は相手の技量を感じ取れると言うけれど、アレサもまたチレの底知れない強さを前に迂闊に動けないでいた。
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