第64話 アコ、罠にかかる
ユウタスとアレサがそんな感じで二人一組で戻る中、歩くペースの遅いアコは1人遅れてしまう。
「ちょっとま、ああああっ!」
追いつくのに必死で足元を見ていなかった彼女は、木の根に足を引っ掛けて思い切り転倒する。転んだタイミングで段差から転がり落ち、知らないエリアに1人取り残されてしまった。
時間が経って痛みも引いたところで立ち上がったアコは、先行する2人に追いつこうと勘を頼りに歩き始める。
そうして、彷徨っていたところでモンスターの仕掛けていた罠が発動。アコは網にかかって空中に釣り上げられてしまった。
「嘘、そんな……。こんな単純な罠にかかるなんて……私、間抜けすぎる」
網目に指をかけながら、彼女は自分のドジさ加減を速攻で後悔する。侵入者が罠にかかったのをすぐに察知して、吊り上げられて一分もしない内にモンスター達がアコの周りに集まってきた。
やがてゆっくりと下ろされると、身動きの取れないようにロープでぐるぐる巻きにされてしまう。
「いやああーっ!」
アレサを連れて引き返していたユウタスは、ここで違和感に気付き振り返る。そこで、すぐに自分の勘が正しかった事を確認した。
「アコがいないぞ! 何かヤバい気がする」
「嘘? 探さなきゃ!」
「お、おう!」
アレサとユウタスは仲間を探そうと一気に駆け出した。どこではぐれたのかは定かではないものの、こう言う時の2人の勘は鋭い。木々の間をすり抜けて、戦士の嗅覚で不自然にモンスターが集まっている場所を感じ取る。
そこにきっとアコはいると確信した2人は、まるで競争をするかのようにその場所へと急いだ。
「アコッ!」
着いた場所は森の中でも木々の生えていない広場のように開けた草原。そこでモンスターが何かの儀式をしているようだった。その草原の中心に2人の探している少女の姿があった。
幸いな事にただ縛られているだけで、まだほぼ無傷だ。
「アレサ、ユウタス! ごめんなさい!」
助けに現れた2人を見て、アコは思わず名前を叫ぶ。その声にモンスター達も迫りくる敵の存在を感じ武器を構えた。その場にいたのは11体のモンスター。
それぞれに剣と盾を持ち、威嚇するように雄叫びを上げる。そうして、数の力で押し切ろうと突進を始めた。
「ウオオオオ!」
「雑魚がいっちょ前に人質とか取ってんじゃねーよ!」
「少しは楽しませてくれよっ!」
いくら武装していても、元々の強さはさっきまで倒していた森のモンスターと同じ種族。結局は武闘派2人の敵ではなかった。迫ってくる敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、こちらもほぼ無傷で11体のモンスターを全て倒しきった。
戦闘も終わり、アレサは剣を鞘に収める。
「ま、準備運動くらいにはなったかな」
「アコ、大丈夫か?」
「ご、ごめんなさーい!」
ユウタスにロープを解いてもらいながら、アコは大声で謝罪する。そんな態度に、体育会系な2人は少し困惑する表情を浮かべた。
「いや、謝るのはこっちだよ。ごめん、いなくなったのにすぐに気付かなくて」
「で、でも……私がトロいから迷惑を……」
「お互い様だろそれは。俺達は全員が油断していたんだ。それだけの話だよ」
こうしてそれぞれの過ちを受け入れあって、3人は肩を組み合う。それからタイミング良く全員でうなずき合うと、冒険は再開された。
一旦入り口まで戻り、そこからはコンパスに頼らない探索を進める。そうやって、ある程度まで森の奥に足を踏み入れたところで、木々が不自然な程きれいに切りそろえられた場所に辿り着いた。ユウタスは、その人工的な光景を警戒する。
「何か、誘っているみたいだな」
「面白そうじゃないか。行ってみようぜ」
「こんな美味しいお誘い、受けるしかないだろ。先に行くぜ!」
「ちょ、しゃーないな……」
「わ、私達も急ぎましょう!」
アレサ1人だけ先に行かせる訳にもいかず、2人もすぐに彼女を追いかける。何とか追いついて3人でこの道の先に向かうと、やがて開けた場所が現れた。そこで1行を待ち構えていたのは、お約束のように一体の巨大モンスター。
アレサは剣を引き抜くと戦闘態勢に入り、間合いを測る。ユウタスもファイティングポーズをとって、この巨大モンスターの攻撃に備えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます