交流する賞金稼ぎ達

楽しいバカンス

第63話 森のモンスター退治

 パーティーを組んだ3人はギルドに掲示してあったとあるクエストを選び、その依頼を実行していた。それは、森に潜むモンスター退治。最近その森の周辺の村が次々に襲われていて、今までに3つの村が被害に遭い、壊滅してしまっているらしい。

 更には被害に遭った村から一番近い城塞都市にまで影響が及んでいるようで、その都市の市長からの依頼だった。


 モンスターの規模が大きいために難易度はB。本来複数の冒険者でこなすべき依頼を、一番で手を上げたから任せろとアレサが強引に単独クエストで押し通す。

 受付の人は困惑した表情を浮かべ、一週間だけその条件を飲んでくれた。それ以上時間がかかったら、複数の冒険者を送り込むと。


 そう言う経緯があって、パーティは、特にアレサは死ぬほど張り切っていた。どうしてそこまで乗り気なのかと言うと、複数パーティ前提の依頼なので、単独パーティで達成出来れば依頼料が総取りになるからと言う事らしい。

 ユウタスもアコも、この時点で呆れ顔。


 とにかく、そう言う事で森のモンスター退治は始まり、3人は順調に魔物の群れのボスに近付けていた。集団が相手の場合、頭を叩けばその集団は瓦解する。この信念を持つアレサが、独断専行とばかりに森の奥にいるであろう魔物のボスを目指してズンズンと進む。

 当然、ボスに近付くのだから、防ごうとする魔物達は増えていく。そんな雑魚モンスターを、アレサは自慢の剣技でスパスパと斬り倒しまくっていた。


「あはは。これ、楽勝じゃね?」

「いや、油断すんなよ。ボスは強いかも知れんだろ」

「いや、配下がこんな雑魚だぜ? 強い訳がねーよ」


 アレサとユウタスが脳筋な雑談をしている頃、マッパー担当のアコは無言で地図とにらめっこをして首を傾げる。その仕草はとても怪しい。

 雑談をしながらも彼女の様子をチラ見したユウタスは、そこはかとない不安を覚えたのだった。


「アコ、大丈夫?」

「え? は、はい!」


 声をかけた時の不安そうな表情を見逃さなかったユウタスは、前方を肩で風を切って歩いていくアレサに走って追いついた。


「もうちょっと慎重に行こうぜ。マッパーが困ってる」

「は? この辺りは雑魚しか出てこないから大丈夫だって」

「いや、そうじゃなくて……」

「似た景色が続くから迷いやすいってんだろ? 多少迷ったってへーきへーき」


 アレサは勢い良く振り返るとニカッと得意げな顔を見せる。一応、今歩いているルートが正しくない可能性をちゃんと自覚している事を知って、ユウタスはほっと胸をなでおろすのだった。


 森は所々に侵入者撃退用の罠があって、ある意味、それが道標にもなっている。何故なら、敵の本隊に近付いているから罠も多くなると、そう言う考え方だ。

 ただし、それを逆手に取って間違った場所に誘導すると言うパターンの可能性だってある。結局は手探りで進むしかないと言うのが現状だった。


 現在3人がどう言う基準で森を進んでいるのかと言うと、基本的には戦士の勘頼み。この先に強い敵がいそうだと言う、その雰囲気だけで進んでいた。

 ただ、指標が全くないと言う訳でもなく、森自体の地図はクエストを受けた時に支給されている。それのチェックをアコが行っていた。その彼女が、地図を見て首を傾げている。

 雑魚モンスターを倒しまくってしばらく敵が出なくなったところで、突然アコが先行する2人に向かって勢いよく頭を下げた。


「ごめんなさい! コンパスが狂ってました!」


 森の中に重力異常地帯があったのか、それとも別の要因なのか、原因は分からない。とにかく、いつの間にか途中からコンパスが狂っていたらしい。北だと思っていた所が北でないとなると、地図上での現在地が把握出来ていないと言う事になる。

 つまり、3人はとっくに道に迷っていたのだ。


「嘘だろ、おい!」


 ユウタスはその報告に顔が青くなる。この森はかなり広く、迷ったら一生出られないと言う噂まであるくらいだ。アレサはまだ気持ち的に余裕があったものの、最悪の想定をしたユウタスは彼女の手を引っ張った。


「取り敢えず入り口まで戻ろう、今なら間に合うはずだ」

「ちょ、ここまで来てそれはないだろ!」

「アコもそれでいいよな」

「は、はい!」


 アレサの意見だけを無視して、1行は来た道を戻り出した。ユウタスは飛べるので空からすぐに戻る事も出来るものの、1人ならともかく、2人も抱えては飛べないので、地道に歩いて引き返す事になる。

 ただ、アレサはこの決定に逆らおうとしていたので、ユウタスがずっと彼女の腕を引っ張っていた。


「戻るなら2人で戻れよ! 俺はまだ行くんだ」

「はいはい、ワガママは止めて、一緒に戻るぞ」

「は、離せえ~」

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