第62話 3人パーティの成立

「着きましたね」


 館の前でアコがゴクリとつばを飲み込んだ。そんな緊張する彼女の肩を、アレサがバンと勢い良く叩く。


「さあ、行くよ!」

「はい!」


 その後、一行は意気揚々と中に入り、依頼主に報告をしに向かう。3人は応接室に通され、詳しく探索した時の話をするものの、物的証拠がなかったのもあって全く話を聞いてもらえなかった。

 聞き入れてもらえない事もあって、ユウタスは少し声を荒げてしまう。


「本当なんですってば! あの遺跡は……」

「じゃあ証拠を見せてくれないか」

「え、えっと……」


 依頼を受けた時に渡された記録用の水晶玉は冒険の途中でなくしてしまい、手元にはなかった。それ故に裏付けが取れないと言う事で、結局依頼の成功とはみなされないと判断されてしまう。

 と言う訳で、成功報酬ももらえずに3人は会社から追い出されてしまった。この扱いにアレサの怒りが爆発する。


「結局タダ働きかよ!」

「でもこれで良かったのかも……。あの遺跡は騒がれない方がいいよ」


 ユウタスは天空神殿で知った歴史の真実を思い、現状を素直に受け入れていた。遺跡の歴史を知ってしまったアコも、彼の意見に同意する。

 それでもアレサの怒りは収まらないらしく、残りの2人を連れて食堂に強引に誘った。


「こうなったらもうやけ食いだよ! 2人も来て!」

「え、えっと……」

「来て!」

「は、はい……」


 怒りに任せたアレサの食欲は凄まじく、10人前の料理をぺろりと平らげる。そのフードファイターじみた気迫に、ユウタスとアコは圧倒されるばかりだった。

 注文した料理を食べきってある程度満足したアレサは、上機嫌で目の前で目を丸くするアコの顔を見つめる。


「アコ、一緒に冒険しない? 仲間になってよ」

「い、いいんですか?」

「当然。アコとだったらいい冒険が出来そうだし。どうかな」

「よ、喜んで!」


 アレサのスカウトにアコも二つ返事で了承する。同席していたユウタスもこの流れを受け入れ、アコのパーティ加入を喜んだ。

 こうして、依頼失敗ストレス発散大会だったこの食事は、新パーティ結成の祝いの席となる。


 食事の後、アレサ達は改めてギルドへと向かう。着いたところで、まっすぐ受付へと向かい、3人パーティになった事を報告。登録を上書きし、こうして3人は正式にパーティとして活動する事になったのだった。

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