第61話 明かされる意外な真実

 そう、そこにいたのは、島に渡る時に船を貸してくれた漁村の顔であるおばば。神殿からの転移先は、このおばばの家の敷地内の建物だったのだ。

 この予想外の展開に、アレサとユウタスは事実を受け入れられずに呆然とした表情を受かべる。


「一体どう言う事?」

「それを聞きたいのは儂の方じゃよ。どれ、お主らの話を詳しく聞かせてはくれんかの?」


 おばばに求められ、自分達も考えを整理するために、アレサ達は交代交代に島に渡ってからの出来事を身振り手振りを加えながら多少の脚色も加えつつ説明する。

 島の実力者は、その話をウンウンとうなずきながら、真剣に耳を傾けていた。


「……と言う事があって、その球が光ったかと思ったらここに戻されていたんです」

「ほう、なるほどのう。大変な冒険じゃったんじゃな。お主らが無事で何よりじゃ」


 おばばがアレサ達の冒険を労う中、黙って成り行きを見守っていたアコが、ここでその話に割り込んでくる。


「でも、どうしてここに転送されたのでしょう? もしかして特別な場所なんですか?」

「それはな、儂らがその古代人の末裔だからなんじゃ」

「「「え~っ!」」」


 3人が驚いて同時に声を揃える中、おばばがこの村の一族の話を語り始める。その話によると、この村の住人の先祖は全員がその伝説に出てくる古代人の末裔で、当時、魔物が発生してこの場所に逃げてきて暮らし始めたのが村の始まりとの事。長い年月の末に、古代人の伝承もおばばの家にのみ残っているだけになったのだとか。

 そこまで話を聞いたアコは、腑に落ちない事があったのか首を傾げる。


「それと、あの場所に転移したのはどう繋がるんですか?」

「あの離れはな、元々古代人の作った遺跡があって、そこに小屋を建てたものじゃ。昔から色んな不思議な現象も起こっておった」


 つまり、最初からおばばの家の離れと天空神殿は転移ポートで繋がっていたらしい。制御球がアレサ達の記憶を読み取って、この場所に転送したのだろうとおばばは推理する。

 最後まで話を聞いたユウタスは、その説に深くうなずいた。


「なるほど、そうだったのか」

「お主ら、そんな冒険をしてきたなら腹も減っておるじゃろう。儂が飯を用意してやるから食っていけ」

「あ、ありがとうございます!」


 こうして3人はおばばの好意に甘え、たっぷりと食事を御馳走になった。出された料理は漁村特有の素朴な田舎の魚料理がメインだったものの、味付けがひとつひとつとても深く、3人共とても満足そうに口に入れていく。

 それを見たおばばは、とても満足そうな表情を浮かべるのだった。


 料理を食べて満足した1行は、おばばにお礼を言うとすぐに村を出て、依頼主に報告に向かうためにまた来た道を戻っていく。遺跡で出会っただけのアコも、流れでアレサ達と一緒について行く事になった。

 その道中でアレサとアコがそれぞれの話をしていると、そこで意外な事実が発覚する。


「え? じゃあアコも同じ依頼主から遺跡の探索を?」

「話を聞くとそうみたいですね」

「じゃあちょうど良かったじゃん。一緒に報告しようよ」


 こうして目的地も同じと言う事が分かり、話は更に盛り上がる。ただ、アコはそこで淋しげな表情を浮かべた。


「でも、私、本来の仲間とはぐれちゃいましたし……」

「俺達が会った時、アコはずっと1人だったんだろ? その時点でもう仲間はアコの事をあきらめているさ。気にすんな」

「で、ですよね……」


 アレサの説得でアコの表情にも明るさが戻る。やがてこの2人の会話にユウタスも加わり、3人のそれぞれの理解は更に深まっていった。この帰りの道中でも、たまにモンスターに遭遇したものの、冒険を経て更に経験を積んだ3人の敵でなかった。

 こうして、特に苦もなく3人は依頼主の会社にまで辿り着く。

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