第59話 古代天空人の驚異の科学力
「や、やった!」
こうして強敵を倒す事に成功し、アレサとユウタスはお互いに手を取り合ってジャンプしながら勝利の喜びを分かち合う。一方、絶命したカニは、水が蒸発するように神殿の空間に溶け込んでいった。
ひとしきり勝利の余韻に浸った2人は、この戦いのもう1人の立役者の姿を探す。最初に気付いたのはアレサの方だった。
「あ、そう言えばアコは?」
「あそこで倒れてるぞ!」
そう、魔法を使って力を使い果たしたアコはまだひっくり返って白目をむいたまま。アレサは急いで駆け寄ると、手持ちの回復薬をすぐにアコの口の中に強引に流し込んだ。
「んぐぐ! ゲホッゲホッ!」
「良かった、気がついた」
「一体何を……。これリーガルファインじゃないですか! 劇薬ですよ!」
「助かったんだからいーじゃん」
アレサがアコに飲ませた回復薬は効果が強力なため、本当に瀕死の状態の相手以外には飲ませてはいけない扱いの難しい薬品だった。体に合わないとそれで死ぬ事もあるのだ。アレサはこの薬を常用していたため、感覚が麻痺していた。
その後、アコは数回ひどく咳き込むものの、何とか無事に回復する。
「助けてくれた事には感謝します。けど、その薬は私にはあまり使わないでくださいね」
「すっごく効果あるんだけどな……」
「私も薬は持っていますので! 自分で対処出来る時はその薬を使いますので!」
2人がそんな感じで多少ギクシャクしている間、ユウタスはカニが守っていた像に近付いていた。台座の高さだけでも3メートルはありそうなその上に乗っていたのは、首から上と右手が失われた女神像。像の欠損部分は近くの床に転がっていた。
「これは……古代神話に出てくる豊穣の女神……かな?」
ユウタスは女神像の正体を推測しながら、吸い込まれるようにその像の台座に触れる。すると、それがトリガーになっていたのか、この部屋の更に奥に続く扉が自動的に開かれた。
この扉の開く音を聞いて、そっちに興味の移ったアレサは途端に目を輝かせる。
「ユウタスすごいじゃんか。これでこの先に進めるぞ」
こうして3人は奥の部屋に向かって興味の向くままに歩き始めた。ここでもアレサとアコがこの先の部屋について談義を始める。
「やっぱりこの先にあるのはお宝かな」
「古代文明の秘密かも」
「ボスが守ってたんだ、お宝に決まってんだろ」
「それは行ってみないと分かりませんよ!」
2人の意見が食い違っていたせいでまた少し場の雰囲気の悪くなる中、ついに3人は扉の向こうのエリアに到達する。その先で待っていたのはアレサの妄想ではなく、アコの予想に近いもの。無人の制御室のような部屋だった。
部屋の正体が分かり、お宝、金銀財宝の夢の消えたアレサは分かりやすく落胆する。
「何だよこの部屋……金貨も財宝もないのかよ」
「私の勝ちですね!」
「うっせーよ……」
「とにかく、動かせないか試してみよう」
2人の下らないやり取りをまるっとスルーして、ユウタスはこの部屋の装置類を触り始める。この空中神殿は途方もない昔に作られたもののはずなのに、搭載されている科学技術は現代のそれとは全く比べ物にならないほどに高度に洗練されていて、少し触ったくらいでは使い方すらさっぱり理解出来ないでいた。
どうやってもウンともスンとも言わないため、ユウタスは頭を抱える。
「あ~、分からん!」
「これ、多分メイン動力が止まっているから動かないんですよ」
いつの間にか機械の操作にしれっと乱入していたアコが、触った感覚から動かせない理由を推測した。この説をユウタスもすぐに受け入れる。
「確かに、それなら辻褄は合うな。でもここまで来て何の収穫もないなんて……」
自分の力ではどうしようもない事実に少し苛ついたユウタスは部屋の中央にある謎の力で空中に浮いていた制御球を少し乱暴に触れる。
その瞬間、制御球は触った者の生体波形パターンを照合し、部屋に入った3人に向けてイメージを投影し始めた。脳に直接伝わってくるイメージはこの神殿に関するもの。
この突然の現象に、アレサは混乱する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます