第57話 ボスモンスターはスケルトン巨大カニ
3人がそれぞれの反応をする中、モンスターは侵入者を感知して襲いかかってきた。大きく振りかぶったハサミの攻撃を、3人は何とかバラバラに動いて回避する。
「でっかいカニだな」
「俺達を倒す気満々ってか」
そう、襲ってきたのはカニのような姿をしたモンスター。体は半透明で、意外とこの神殿の雰囲気とマッチしている。
この手のモンスターにありがちな体の中心にコアっぽい物が見えている事から、きっとそこが弱点なのだろう。
大きさは縦が5メートル以上で、横が10メートル以上と言ったところだろうか。カニらしく武器は両手の大きなハサミ。素早く左右に動いて、まるで何かを守っているようだ。
体が半透明なために、背後にあるものもある程度透けて見える。それをアコが見抜いた。
「カニの後ろに何か像みたいなのがあります!」
「つまり、その像がキーって事か!」
「アコ、やるじゃん!」
封印された扉、その部屋にある意味ありげな像、像を守るボスモンスター。そこから導き出されるもの、それはボスを倒せば何らかの進展があるはずと言う希望。
アレサ達はこの希望に賭けて、それぞれの武器を構える。
「行くぞ! このカニを倒す!」
「ラストバトル……だといいな」
「わ、私も頑張ります……」
アレサは剣、ユウタスは拳、アコは弓を構える。対する巨大カニも、この突然現れた侵入者を殺す気満々だ。
こうして、ボスバトルの幕は切って落とされた。
「うおおお! 必殺、神斬連波!」
「岩壊パンチ!」
「え、えっと、一撃集中!」
武闘派2人がかっこいい技名を叫ぶので、アコも弓を引きながらそれっぽい言葉を叫ぶ。3人の技はすべてカニに命中するものの、流石は甲殻類、どの攻撃も余裕で跳ね返してしまう。
「「ぐああああ~っ!」」
直接攻撃の2人は自分の攻撃が直に反動で弾き返されてしまい、苦痛の声を上げる。アコの矢も全く歯が立っていなかった。こうして大きな隙が出来たところで、反撃とばかりにカニの巨大なハサミが3人に向かって襲いかかる。
「逃げろっ!」
アレサの号令で全員バラバラに回避して、このハサミ攻撃も空振りにさせる事が出来た。カニは目をキョロキョロ動かして、次に攻撃するターゲットを見定めている。
複数戦の基本は雑魚から倒す事。カニもまたそう判断したようだ。
「えええっ!」
アコは自分が狙われている事を直感で感じ取り、すぐに矢を射る。恐怖で手持ちの矢を速攻で撃ちまくった。5本、10本とその矢はカニに届くものの、全て弾き返されてしまい、動きを止める事は全く出来ない。
そもそも、最初からストックをあんまり持っていなかったアコは、すぐに矢を使い切ってしまった。
「うわあああーっ!」
矢がなくなってからはすぐに逃げに徹し、アコはカニの攻撃を紙一重で回避。とは言え、攻撃の手段をなくしたと言う事で、やむなく戦線離脱する事になった。
アレサ達がカニの前に立ちはだかる中、アコは攻撃が当たらないように部屋の隅っこに素早く移動する。
「ごめんなさい、役に立てなくて」
「いいよ、俺達に任せろ!」
「こんなカニくらい、楽勝だって!」
2人はそう軽口を叩くものの、流石はボス的なモンスターだけあって、神殿内で彷徨う他の雑魚モンスターとは強さが桁違い。どれだけ本気で攻撃しても、その硬い甲羅を貫く事が出来ずにいた。
「かってぇ~! アレサ、例の聖水剣は使えないのか?」
「アレはダーク系のモンスターにしか効果ないんだよ。こいつ、どう見たって違うだろ」
「確かに。邪悪な雰囲気は感じないな……」
アレサの切り札が使えない事を知って、ユウタスは軽く絶望する。2人が攻略に苦戦していると、今度はカニの番とばかりに反撃が開始される。さっきまで機敏に左右に動きまくってアレサ達を翻弄していたカニの動きが突然止まったのだ。
このボスの行動に自分達の攻撃が効いてきたのかと勘違いした2人は、とどめを刺そうとカニに向かって突進する。
「今がチャンスだ!」
「うおおおお!」
剣を構えて必殺の一撃のタイミングを図るアレサ、雄叫びを上げて精神を高揚させるユウタス。2人が攻撃の間合いに入った時、それがカニの罠だった事を知る。
カニは誘っていたのだ。自分の攻撃が一番効果を発揮出来る範囲にまで敵対者が近付くのを。十分に引きつけたところで、カニは両手を上げて超音波を発生させる。
カニから発生した強烈な音の鋭い刃は、アレサ達ばかりか、遠くの柱の影で身を守っていたアコにまでダメージを与えた。
「「うわあああっ!」」
「キャアアアッ!」
超音波攻撃で体が硬直したところで、カニはそのハサミでアレサ達を突き飛ばした。2人はそのまま受け身も取れずに壁に激突、大ダメージを食らってしまう。
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