第55話 伝説の古代天空神殿

「ここは、神殿か何かなのか? ユウタス、これって……?」

「ああ、この建築様式から言って、古代天空人の作ったものかも知れない」


 3人が転移したのは、さっきまで探検していた遺跡とは全く違う場所。白を基調とした汚れひとつ見当たらない見た目真新しいその場所は、まさに神殿と呼ぶに相応しい独自の神々しさを持つ荘厳さを醸し出していた。


 天井も高く、真っ直ぐに伸びる柱はどれも太い。室内は明るいものの、どこから光が射しているのかは定かではなかった。入り口から入った訳ではなかったので、現在地がこの建物のどの辺に当たるのかは分からない。

 と言う訳で、最初に3人が最初にやるべき事は必然的に決定する。


「まずは、現在地の把握だな。えーっと……」

「はいはい、マッピングなら私がやります!」

「あ、ああ。頼む」


 アレサが役割分担を決めようと話し出したところ、アコが食い気味に自己主張。その勢いに飲まれて、マッピング担当は自動的に彼女に決定する。こうして、この神殿の探索が始まった。

 さっきまで迷っていた遺跡と違い、神殿はかなり単純な間取りになっていて、別れ道自体はそんなに多くはなかったものの、何しろ一室一室がやたら広くて探索には骨が折れていた。


 しかも、汚れなき神聖な場所のイメージの割に遺跡同様にモンスターが徘徊しており、それが探索の邪魔になってしまう。

 新しい部屋に顔を出した途端に体の硬そうな昆虫系巨大モンスターが襲いかかってきて、ユウタスはそれを避けつつパンチを繰り出した。


「どうしてこんなところにモンスターがいるんだよっ!」

「はん、神殿っぽいのは見た目だけだな!」

「わわわ、私は退避してますねッ」


 幸いな事に、出現するモンスターはアレサ達が対処出来るレベルのもの。適当にあしらいながら、たまに逃げたりして3人は神殿内の構造を少しずつ把握していった。


「この先、まだ未到達です」

「よし、行こう!」


 アコのマッピングに従って進んでいると、外に出る通路に繋がる。3人がその先に進むと、待っていたのは雲の上の景色。どうやら、この神殿はやたらと高い場所にあるらしい。

 この景色を目の当たりにしたユウタスは、何か思い出したのか突然立ち止まった。


「ここは……天空人の伝説の神殿だ」

「何だって?」

「ほ、本当ですか?」


 アレサとアコは彼の言葉に立ち止まる。特に、そう言う事に興味のあるアコの食いつきがすごかった。


「どんな伝説なんですか? 教えてください! すごい昔の話なんですか? 神々は出てきますか? 戦いの記録ですか? 地上とは関係がありますか? それから、えーと……」

「アコ、落ち着け」

「こんなの落ち着いてられません! 私、気になるんです、すごく!」

「ユウタス、何か知っているなら話してやれよ」


 場を収めるのに失敗したアレサは、この場にいる天空人に丸投げする。指名された彼は、手を首の後ろに当てながら知っている事を語り始めた。


「俺が知っているのも簡単な話なんだけど……」


 ユウタスいわく、かつて天空人と地上人が今よりもっと仲良く暮らしていた時代があったらしい。天空と地上は直接的に繋がり気軽に行き来も出来ていたとか。

 その後、色々あってその文明は壊滅。この神殿の正体はその時代のもの――と言う事だった。

 この話を、アコは目を輝かせながらたまにメモを取りつつ、一言も聞き漏らさないくらいの熱心さで聞いていた。


「ムチャクチャ興味深いです、えっと、質問していいですか?」

「あ、ああ……答えられるものなら」

「ではですね、えーと……」


 彼女の質問にユウタスは圧倒されながらも答えていく。何となく2人は話が合って、天空神殿の通路の途中で唐突に始まったこの雑談は、一向に終わる気配を見せなかった。


「それじゃ、それじゃ、あの天空神のモニュメントが地上各地の遺跡にあるって言うのは……」

「いや、俺それ見てないから何とも……」

「なるほどですね、分かりました。それとあの……」


 この手の話に一切興味のないアレサは話の輪の中に入れず、暇を持て余してしまう。そうして、ついに1人だけ先に歩き始めてしまった。

 アコの質問攻めにちょっと辟易へきえきしかけていたユウタスが視線をそらした時、既にアレサは見えるギリギリの距離まで離れていて、焦った彼は急いで追いかける。

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