第54話 石碑の正体
「え~っと、これはですね……」
「時間かかりそう?」
アレサが心配そうに様子を見守る中、一生懸命謎の文字を解読しようと、アコは手帳と実際の文字を見比べて顔を動かしまくっていた。
と、そこに1人蚊帳の外だったユウタスがニュイッと顔を出して、問題の石碑の文字を覗き込む。
「ああ、これ俺読めるわ」
「「えっ?」」
アレサとアコはこの意外な展開に2人声を揃える。そんな女性陣の反応を無視するように、ユウタスは続けた。
「これ、古代の天空文字だよ。俺さ、こう言うの好きで覚えたんだよね。えーと、何々……」
「きいいー! 折角ここで役に立てるの思ったのにぃ!」
思わぬ伏兵の登場に、アコは本気で悔しがる。ユウタスはそんな彼女を気遣う事もなく、石碑の文字の説明を始めた。
「どうやらこの石碑は、この遺跡がちゃんと稼働していた大昔にここに設置されたものらしい。1人しか通れないのはまぁ防犯対策みたいなものなのかな。とは言え、天空人には無意味なトラップだから多分地上人用なんだろうな」
「で、結局これは何なんだ?」
アレサは結論を急いでユウタスを急かす。急かされた彼は、頭をかきながらつまらなさそうな表情を浮かべた。
「文章の中身は記念碑的な当たり障りのないものだよ。どうしてこんなところに設置されてるのか不思議なくらい。けど……」
「けど?」
「多分それはカモフラージュだと思う。ここにないといけないものだったんだ」
現時点では、文字を読めるユウタスだけが1人納得している。その態度に苛立ったアレサは、彼の肩を両手でがっしり掴むと、強い力で激しく揺さぶった。
「だ・か・ら! 結論を言え結論をっ!」
「アレサさん、そんな乱暴は……」
「いや、大丈夫。分かったよ、話すよ」
アレサの性急な要求に屈したユウタスは、石碑に刻まれた文章の最後の部分に指を当てる。
「ここから最後、誓いの言葉が書かれているんだけど、これがキーワードなんだ、多分」
「多分?」
「まぁ実際俺もあんまり自信はないんだけど……」
彼はそう言うと、また頭をかいた。危険を犯して渡ったのに、あったのがただの石碑だけだなんて割に合わないとばかりに、アレサは石碑を両手でバンと叩くとユウタスの顔をキッとにらむ。
「じゃあその誓いの言葉を唱えてよ、早く」
「でも何が起こるか分からないんだぜ?」
「いいから!」
その気迫に負けた彼は、その指示通りに誓いの言葉を唱えた。
「リーゼ・エル・ファル・ラウ……いざ、誓いは果たされる……」
そのやり取りをじいっと見守っていたアコは、ゴクリとつばを飲み込む。
「……何も起こらな……わああっ!」
「キャアアアッ!」
ユウタスが唱え終わってしばらくすると、突然この離れ小島全体が揺れ始め、それと同時に3人の体に不思議なバイブレーションが襲いかかった。そうして無意識にお互いの手を握り合う。
こうして小さな人間の輪が完成したと同時に、3人は別の場所に転移してしまった。この転移時に3人の輪の中心に強い光が発生し、全員が一瞬意識を失う。
「うう、何だったんだ……」
「皆さん……私達、転移しています!」
「確かに。また魔法のトラップかよ……」
3人は手を繋いだまま、同時に意識を取り戻した。謎のバイブレーションも収まったと言う事で、3人は自発的に手を離す。
そうして、転移慣れしたアレサとユウタスはすぐに現状確認をしようと顔を左右に振った。
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