第52話 門番モンスター

「どうするんだ? あの子、散々迷ってここにいた訳だろ?」

「でもほっとけないだろ? 俺達を信用しているんだし。取り敢えず追いかけよう」

「仕方ないなあ……」


 と言う流れで、アレサ達は走って先を行くアコに追いつく。そうして陽気に手を振って歩いている彼女に声をかけた。


「ちょっといいか?」

「なんですか? アレサさん」

「どこに向かってるんだ? お前は迷っていたんだろう?」

「ああ、なるほど……」


 アレサの一言で大体の事情を飲み込めたアコはピタッと立ち止まる。そうして顎に手を当てると少しうつむき、すぐに顔を上げてアレサの顔を見る。


「この先に、強いモンスターがいて進めなかった所があるんです。私達3人でかかれば突破出来るかなと」

「なるほど、そう言う事か」


 彼女の言葉に先に納得したのはユウタスだった。


「見たところ、君は戦闘に不向きのようだし、俺達がモンスターを倒すよ。案内よろしく」

「分かりました、ユウタスさん」


 こうして、3人はアコが突破出来なかったと言うそのエリアへと辿り着く。道中にもモンスターは出没したものの、アレサとユウタスにとっては準備運動以下のレベルでしかなかった。一撃で倒していくその様子を、アコは目を輝かせながら応援。

 やがて、彼女は目的の場所に到着したらしく、指を指しながら2人の顔を見る。


「お2人共、あそこです! 屈強な獣人系のモンスターが見えるでしょう?」

「おお、確かに……」

「やっとマトモに楽しめそうな相手が出てきたな」


 アレサもユウタスもアコの指差す先にいた2体の門番風のモンスターを目にしてやる気をみなぎらせる。そうして、間髪を入れずに2人は駆け出していった。


「「うおおお!」」


 その雄叫びを聞いた獣人モンスターもすぐさま臨戦態勢を取る。1体は長くてごつい剣を握っていて、もっと接近しなければ戦闘にはならなかったものの、もう1体は弓使いだった。

 そのモンスターは迫ってくる2人を見て、一気に相手にしようと5本の矢を弓にかけて撃ち放つ。放物線を描いて敵対者に向かってくる矢をアレサは剣で、ユウタスはフットワークで見事に退ける。それを見たアコは目を輝かせた。


「すっごーい!」

「そんなへっぽこな矢で俺達がやられるかよ!」

「ああ、余裕で避けられたぜ!」


 2人が先に弓使いモンスターを倒そうと攻撃対象を絞ったところで、剣士モンスターがずいっとその前に立ちはだかる。体の大きさは2人の体の軽く2倍はあろうかと言う巨体だ。筋肉もムキムキでマトモに対峙したら苦戦しそうな相手。

 突然現れたのもあって、アレサ達はバックステップを踏んで巨体モンスターからある程度の距離をとった。モンスターは突っ込んでこなかった2人を冷徹に見定める。


「アレサ、行けそうか?」

「手強そうだけど、無理じゃない」


 緊張感が場を支配する中、その様子を見守っていたアコは2人をサポートしようと辺りを見回した。すると、2人を射抜けずに終わった矢が、その役目を終えて床に無造作に転がっているのを発見。

 すぐにそれを残らず拾い集めると、持ってきた荷物の中から弓を取り出してすぐに狙いを定める。


「2人共、避けて!」


 背後から聞こえた声にアレサもユウタスも反射的に距離をとった。剣士モンスターが動揺しているところに矢が飛んでいき、それは見事に敵の額に突き刺さる。


「うぐああああ!」


 こうして痛みにしゃがみこんだのを合図に、2人は攻撃を開始する。まずはアレサが速攻で斬り込んだ。


「神速一閃!」

「爆裂パンチ!」


 アレサとユウタスの間を置かない連続攻撃によって、巨体剣士モンスターは一瞬で倒される。この様子を目の当たりにした弓使いモンスターは、恐れをなして逃げ出していった。2人は戦意喪失した弓使いモンスターを呆れた顔で見送る。

 こうして呆気なく終わったこの戦闘に、アレサは不満そうな表情を浮かべた。


「何だ、敵討ちとかしないんだな」

「もうちょっと手応えがあるかと思ったのに……」


 2人がこの戦闘の消化不良気味な感想を漏らしているところに、目を輝かせて満面の笑みを浮かべたアコが寄ってくる。


「お2人共すごいです! 流石です!」

「いや、さっきの弓のおかげだよ、有難う」


 アレサはこの戦いの功労者に労いの言葉をかける。感謝されたアコは、嬉しそうにアレサの右手を両手でしっかりと握った。


「アコでいいです、アレサさん!」

「じゃあ、俺の事もアレサって呼んでくれ」

「俺もユウタスでいいぜ」

「了解です! アレサ、ユウタス」

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