第48話 遺跡島上陸
「アレサ!」
「ま、任せろ!」
相棒に頼まれたのもあって、アレサは船の上と言う不安定な足場で剣を向いてモンスターに備える。肝心のサメモンスターは船の周辺をぐるぐると回遊していた。
どうやら隙をうかがっているらしい。相手が海面から出ない事にはどうしようもないこの状況で、船上の2人の緊張感は高まっていく。
「こ、このまま島に向かっていいのか?」
「ああ、あのサメもどきは俺が斬るから安心しろ」
「よし、じゃあ任せたっ!」
覚悟を決めたユウタスは島に向けて本格的に船を漕ぎ始める。この行動はモンスターにとって予想外だったようで、焦った化け物はすぐにでも餌にありつこうと一世一代の勝負に出た。
そうして、そうなる事をアレサは読んでいた。
「よっしゃあ! タイミングバッチり!」
海中からジャンプして船に向かって飛び込んできたサメモンスターを、アレサの剣が真っ二つに斬り裂いていく。
哀れ化け物はこのたった一度のジャンプで餌にありつく事なく、呆気なく天に召されたのだった。
「さ、流石だな」
「ユウタスはずっと安心して漕いていてくれ。障害は全部俺が何とかする」
「おおっ、頼もしい」
サメモンスターの襲撃以降、ユウタスの漕ぐ船を襲うモンスターは一匹も現れなかった。死骸をすぐに海に落としたので、やられてしまったのが伝わって警戒されたのかも知れない。
とにかく、そんな訳で2人は無事に遺跡のある島に辿り着いたのだった。
「ふぅ、やっと着いた」
「ちょっと待った、ここじゃない」
「え?」
真正面の船着き場に停めようとしたユウタスをアレサが止める。その意図が分からずに彼は困惑した。
ただ、何か考えの事があってだろうと素直にその指示に従うと、島の周りをゆっくりと廻り始める。
「で、どこに船を停めればいい?」
「俺達の依頼はまだ把握のしきれてないエリアの探索だ。なら裏口から探すのが手っ取り早い」
「そんな場所が?」
「取り敢えず島をグルっと廻って全体の様子を見てみよう」
アレサ達は依頼主から未完成のマップを参考として渡されていた。そこで彼女は別の入口があるはずと当たりをつけていたのだ。
彼女の指示で島を観察しながら船を漕いでいると、正面の船着き場からちょうど正反対の場所に船を停められそうな場所を発見する。そこには正面の船着き場と違って、冒険者の乗ってきた船は一隻も見当たらなかった。
この場所が目に入った途端に、アレサの目が
「ここだ、ここにつけて!」
「へいへーい」
ユウタスは慎重にその場に近付く。上手く辿り着けたところで接岸作業はアレサが担当した。船をしっかりロープで固定して2人はついに依頼の島に上陸する。こうして、2人の謎の古代遺跡島の探索は始まった。
ずっと船を漕いでいたのにそんなに疲れた素振りを見せないユウタスは、今からの本格的な冒険に自然と顔をほころばせる。
「じゃあ、行こうか」
「ちょっと休ませてくれ、まだ具合が……」
「はは、仕方ないなぁ」
やる気満々な彼と違い、アレサは船に酔っていたのもあって顔色が優れなかった。少し休憩した後、彼女の体調が戻ったところで探索は始められる。
ただ、そう言う流れだったので、ユウタスを先頭に島の探索をする事になったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます