第35話 コロシアムに潜む魔物達
「おい、油断するな! まだいるぞ!」
「えっ?」
「キシャアアアア!」
鍛錬室のどこかに魔物の巣でもあるのか、魔物の数は次々に増えていく。2体、3体……10体……これでは魔道士だけでは疲弊してしまうのも当然だ。
この状況を把握した2人は、すぐにお互いに戦闘の構えをとり、早速魔物退治を始めた。
「流星多段撃!」
「剣技! 幻夢月嵐!」
2人はお互いに得意の技を繰り出し、襲いかかる無数の魔物を丁寧に潰していく。一体一体はそれほど強くなかったのもあって、2人はほぼノーダメージで魔物達を倒しまくっていった。
「ギャアアアア!」
最後の一体を倒した時、2人は魔物の出現した原因に辿り着く。そこにあったのは禍々しいオーラを放つ魔法陣。どう考えてもむちゃくちゃ怪しかった。
2人は魔法陣の前に集まると、これをどうするか話し合う。
「怪しいな、これ」
「ユウタスはこう言うの詳しいんじゃないか?」
「いや全然分からん」
「マジか……まぁ消せばいいんだろうな、多分」
こうして魔法陣を消そうと言う流れになった時、さっきまでとは違う巨大魔物が魔法陣から出現する。全長5メートルはあろうかと言うそれを目にしたユウタスは、以前倒した巨大ゲレルを思い出していた。
大きさはあのゲレルより小さいものの、生粋の魔物なだけにその強さは全く予想がつかない。彼は緊張で一筋の冷や汗を頬に流した。
「オイオイオイ、何だこの化け物は……」
「ビビってんのかよユウタス、こう言うのがいいんじゃねーか!」
「ちょ、まっ!」
出現したての巨大魔物は、まだ状況を把握しきれていないのか隙だらけだ。そこを狙って、アレサは剣を構えて突進する。
その無謀さをユウタスは止めようとするものの、彼の声は興奮した女剣士には届かなかった。
「いくぞおおっ! 剣技、幻夢突きィ!」
「ウガアッ!」
切っ先で円を描くようにして切り刻むその剣技は魔物の体をスパッと――切り裂けなかった。硬質なその体はアレサの剣を弾き、彼女は体勢を崩して床に転がる。
このやり取りを見ていたユウタスは過去の戦闘で得た知識を生かして、倒れ込んだ彼女が追撃を受ける前にと動き出した。姿勢を低くして、背中の羽の力も利用した超高速移動を生かした攻撃だ。
「狼牙瞬音突!」
「ガアアアッ!」
ユウタスの直感が当たったのか、この低位置からの渾身のパンチの一撃を腹に受けた魔物はそのまま部屋の壁に激突する。そうして壁に巨大な亀裂を作り、動きを止めた。
「やったか?」
「……グルルルル」
確かにかなりのダメージを与えたものの、魔物の目はまだ死んではいない。ユウタスはすぐに構えを取り直して反撃に備える。
すると、そこで彼の攻撃を目の当たりにしたアレサが何かヒントを掴んだのか、ずいっとユウタスの前に躍り出た。
「オーケーオーケー。さっきの戦闘で大体分かったぞ」
「ちょ、待て。生半可な攻撃じゃ危険だ」
ユウタスは突きの構えを取る彼女を見て、まだ底の知れない魔物に安易に飛び込む危険性を訴えた。
アレサはそんな心配性の彼の方に顔を向けると、ニヤリと強気な笑みを浮かべる。
「まぁ見てなって」
「自信……あるんだな」
「とおーぜん!」
アレサはそう言い切ると、まだ完全に復活しきれていない魔物に向かって突進する。突きの構えをとったまま走り込んだ彼女は、危険を察知した魔物の腕の一振りを紙一重で避けると側面に素早く回り込み、今の攻撃で出来た隙を突いて必殺の剣撃を繰り出した。
「剣技! 戦神の咆哮!」
「グギャオオオオ!」
「やったか!」
その華麗なテクニックに、ユウタスは思わず歓声を上げる。アレサの攻撃をモロに受けた魔物はその場で苦しみもがいていた。その様子からかなりのダメージを負ったようだ。苦悶の表情を浮かべながら激しくのたうち回っている。
けれど、この手の魔物は倒したら姿が消えるはずなのに、一向にその気配は見られない。
「クソ、これでもまだ甘いのか!」
「アレサ、トドメだ、一緒に倒そう!」
「分かった!」
その苦しむ様子から今までの攻撃でかなり弱った事を確信した2人は、同時攻撃でとどめを刺そうと揃って魔物に向かっていく。この時、魔物はアレサの攻撃を受けてついにしゃがみこんでしまっていた。
今なら確実に倒せると、ユウタスは己の拳で、アレサは自慢の剣技で魔物に迫る。
「グルガアアアアッ!」
「「何っ!」」
強烈な殺意の圧を感じた魔物は、反射的に生存本能を爆発させて勢いよく立ち上がった。この想定外な動きに動揺した2人は攻撃のタイミングがずれてしまう。
迫りくる危険を前にそれを排除しようとした魔物は、その驚異的パワーで最接近した2人を一撃で弾き飛ばした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます