第34話 魔物の出るコロシアム
受付で手続きを済ませて、早速2人はコロシアムに向かう。依頼書の難易度設定は比較的軽いとされるCランクではあったため、多くの冒険者が腕試しに選ぶものの、今まで誰も達成していないと言う謎の依頼。
しかも、この依頼に挑んだ者はみんな行方不明になると言う噂までついていた。
この難易度設定は依頼主自身が設定するため、そのランクと実際の依頼の難度が違う事もよくあるらしい。
受付でも何度もこの依頼でいいかと確認されて、アレサはほとほとうんざりしていた。
「難易度Cなんてただの肩慣らしなのに、ウザいんだよ本当」
「俺はあの受付の人は信頼出来ると思うんだけど」
「だから心配し過ぎなんだよ。もっと俺の実力を信用しろって話」
「なるほどなぁ……」
彼女の憤慨具合から過去の経緯を何となく察して、ユウタスは軽く相槌を打った。取り敢えず何かトラブルの発生する可能性を考えて、途中の武器屋でいざと言う時のための装備を買い整える。
道具屋にも寄って回復薬を購入、準備万端で2人はコロシアムに向かった。初めて見る地上の闘技場を見たユウタスはため息を吐き出す。
「ここかぁ……」
「今は物騒な殺し合いの見世物はしなくなったけど、昔はしてたらしいぜ」
「へぇ……」
見たところ、かなり昔に作られたこのコロシアム。細部を見れば傷んでいる部分も見受けられるものの、全体的に見ればままだまだ現役で通用しそうな程しっかりとした作りになっている。
ただ、見た目は歴史と伝統を感じさせる立派な建物ではあるけれど、その影では悲惨で血なまぐさい謂れを今に伝えている、そう言う闇の怨嗟のようなものをユウタスは肌で感じ取っていた。
彼は顎に手を当てて興味深くコロシアムを眺める。その闇の正体を注意深く探るように。
「ここは闇が深そうだな……」
「とにかく、依頼人に会ってみようぜ」
「あ、ああ……」
アレサに急かされて、2人はコロシアムに入っていく。そうして、まずはこの仕事の依頼主であるコロシアムの支配人のもとへと向かう。事務室の奥の支配人室に、その依頼主は座って待っていた。
案内の人に通されて中に入ると、この施設の最高責任者でもある依頼人は椅子からすっと立って2人を歓迎する。
「やあ、はじめまして。私が当コロシアムの現支配人、ハロムです」
「えっと、私がアレサでこっちがユウタスです。で、早速仕事の話を……」
「え、ええ。そうですね……では椅子にかけてください」
支配人のハロムは2人をふかふかのソファに座らせる。そのタイミングで彼らの前に秘書の人がお茶を運んできた。
ハロムもまた自分の椅子に座ると、今回の依頼の話を深刻そうな顔で話し始める。
「あれは3ヶ月前の事でした……突然コロシアムに魔物が出始めたのです……」
魔物が出現する理由は今も不明のまま。今まではこの魔物に対して魔道士が対処していたものの、それも限界が近いとの事だった。
今回の依頼はこの魔物出現の原因を探る事と、魔物を出現させなくする事。見事成功すれば高額の報酬を約束すると言う、その条件を聞いたアレサの目がランランと輝いた。
「私達にお任せください! 必ずや確実な成果をお目にかけましょう!」
「その言葉、心強い! ぜひともお願いします!」
意気投合したアレサとハロムは固く手を握りあった。その完成された世界にユウタスは全く入り込む事が出来ない。
なので、彼は静かにこの問題の解決に向けて思案を巡らせる。
仕事内容が分かったので、2人は早速調査へと向かった。最初の目的地は、よく魔物が発生すると説明を受けた場所、コロシアム西南エリアにある鍛錬室だ。ここは普段、出場選手が軽くウォーミングアップしたりする部屋として使われている。
部屋の前について扉を開けると、いきなり魔物が襲ってきた。
「キャシャアアアア!」
「いきなり魔物?!」
「任せろ!」
ユウタスは魔物に向かって自慢の一撃をお見舞いする。天空人特有の特別な念の入った気合の一撃で、魔物は呆気なく粉砕された。
「何だ、全然弱いな」
「へぇ、やるじゃねーか」
「よせやい、照れるぜ」
アレサは初めて見るユウタスの一撃を見て、流石に傭兵として呼ばれるだけはあるなと感心する。ただ、褒められた彼が体をくねらせて照れまくっているので、すぐにその感心を撤回しようとも思うのだった。
そんなくねくね天空人の向こうに動く影を発見したアレサは、すぐにマジモードに移行する。
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