第33話 ギルドでの邂逅
「えっと、俺はどうすれば?」
「ま、ついてきなって」
ギルドのベテランのアレサに言われるがまま、彼は黙ってついていく。その先にあったのは各種依頼書が張り出されている掲示板だった。その周りは、当然ながら仕事を求める歴戦の冒険者達で賑わっている。
その活気を、ユウタスは好ましく感じていた。
「この依頼の中から選ぶんだぜ」
「俺は分からないからアレサに任せるよ」
「よし、任しとけ」
彼から仕事を一任されたアレサは、嬉しそうに鼻歌を歌いながら依頼書の品定めをし始める。今日の掲示板に貼られている依頼書は20枚程度。当然、難易度に対して報酬が高めのコスパのいい依頼から先に取られていく。
ユウタスはその様子をじっくりと眺めながら、ギルドの仕組みを学んでいくのだった。
アレサが真剣に依頼書を吟味していると、彼女に人影が近付いてくる。どうやら、それは昔からの知り合いのようだ。
「やあ、アレサ、久しぶり」
「ああ、ロークか。元気そうじゃねーか」
「そりゃまぁね。それよりここを見てるって事は誰かと組んだのかい?」
「まあな」
仲間の話になったところで、アレサは背後にいたユウタスに視線を送る。彼女の元仲間のロークは、その視線を辿って天空人の拳闘士の姿を確認した。
「アレサ、あいつと組むのか」
「ああ、あいつの筋肉見ろよ、只者じゃないぞ」
「か、回復役も必要では?」
ここで、2人の会話に神官のミリアが乱入する。彼女もまたアレサの元仲間で、チャンスがあればまた一緒に冒険をしたがっているアレサ大好きっ子だ。ミリアは瞳をうるうると潤ませながら、彼女に無言で訴える。
この圧に対し、アレサは視線をそらしながら首を触る。
「……まぁ今回はそこまでヤバい依頼はやらないから」
「そ、そうですか……」
やんわりと要求を否定され、ミリアは分かりやすくうなだれる。そんな彼女の肩をロークが優しくポンポンと叩いて慰めていた。
その内、2人はいい依頼を見つけたのか掲示板に貼られていた一枚を剥ぎ取ると、依頼の受付のためにその場から離れていく。
「アレサも頑張れよ」
「お前らも頑張れよ」
そんなやり取りを少し離れた場所から見ていたユウタスは、色々と妄想を膨らませてしまい、彼らが去ってからアレサに近付く。
「いいの?」
「ああ、いいんだ。前の仲間って言うだけさ」
こうしてアレサの元仲間問題が収まったところで、今度はユウタスの知り合いが彼の目に映る。そう、幼馴染でライバルのトルスだ。
彼は一足先にギルドに着いていて、そこで仲間を募集していたチームに入ったようだ。その冒険者チームはトルスを含めて総勢10名の大所帯で、かなりの実力派な雰囲気を醸し出していた。
で、その大人数パーティはもう仕事を決めたようで、今からその仕事先に向かう途中のようだった。ギルドを出ようとしていたその団体の中にトルスを見つけたユウタスは、つい彼を目で追ってしまう。
すると、自分に向けられた視線に気付いたトルスもまたユウタスを発見する。彼は大きなチームに入った事で気まで大きくなったのか、勝ち誇った顔で幼馴染に近付いた。
「先に行くぜ、ユウタス」
「お、おう……」
調子に乗っている友の顔を見たユウタスは、その馴染みように呆気にとられてしまう。うまく返事が返せないまま、トルスはギルドから出ていってしまった。
一方、アレサは依頼書の選別に夢中で、ユウタスとその友達とのやり取りは完全スルー。大所帯パーティで冒険に出たトルスを見ていて、2人だけのパーティで大丈夫かユウタスは不安を覚えるのだった。
彼がもっと仲間を集めた方がいいのかもと考え始めたところで、ずっと依頼書を吟味していたアレサの動きが止まる。
「おし、決めた!」
今の実力と戦力を考えて十分に吟味した彼女が選んだ依頼は、とあるコロシアムに出現する魔物退治の依頼。
依頼書を剥ぎ取ったアレサは、それを得意げに鼻息荒くユウタスに見せつける。
「この依頼なら俺達にピッタリじゃないか? やろーぜ!」
その有無を言わせない圧に、ユウタスは首を縦に振るしか出来なかった。こうして2人の、2人だけのクエストが始まった。
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