第32話 パーティ結成

 ユウタスは、渡りに船だとばかりにアレサの申し出を快く了承する。こうして2人は一緒にギルドに向かう事となった。

 その道中、手持ち無沙汰な事もあって、2人はお互いに自己紹介がてら自分自身の事をPRし始める。要するに自慢合戦だ。


「俺はあの天空島の武闘家新人ランキング5位。しかも登録から半年以内でって言うのはすごい事なんだぜ」

「へぇ、やるじゃねーか。俺は特にそう言う記録めいたのは参加した事はないけど、実力はさっきの戦闘を見ての通りだ」

「いや、分かるよ、アレサは歴戦の戦士だ。実力だって並の男の比じゃない」

「今度はお前の実力も見せてもらわないとな。強いんだろ?」


 2人共相手を尊重しあって、和やかな雰囲気のまま会話は続いていく。自分達の強さの紹介が終わったところで、今度はお互いの持ち技とか戦闘方法とかの話に移った。

 今まで闘技場での戦いばかりだったユウタスに対して、アレサは常に実践の場で戦闘を繰り返している。なので、彼女の方が雄弁になるのも必然だった。


「……んまぁ、やっぱ敵は強いのから倒さないとだよな。ボスを倒せば敵は逃げていく」

「確かにそれも戦略だけど、一撃で倒せそうなら雑魚からって言うのもアリじゃないか?」

「雑魚の数にもよるぜ? やっぱり俺はすぐにボスを倒しにいくね」


 父親からリスクの小さな戦い方を教え込まれていたユウタスは、このアレサの、父とは真逆の戦略に首を傾げる。


「アレサの戦い方、リスクが高くないか?」

「人生なんてギャンブルだぜ。俺はチマチマとしたのは好きじゃないんだ」

「なるほど、そう言うタイプかぁ。強い訳だ。けど、無茶はしない方が良いぜ」


 武闘大会でも似たタイプの選手がいた事を彼は思い出し、その手の選手が晩年に怪我に悩んでいた姿を今のアレサに重ねる。

 常に強い敵に向かう姿勢は強くなるのも早いものの、相手の強さを見誤ると逆に打ちのめされる事も多い。自分の実力以上の敵とぶつかって、再起不能になってしまう事だってある。


 ユウタスはアレサが少女と言う事もあって、そう言う失敗した未来を迎えて欲しくないと心配したのだ。

 当のアレサ本人はまだ本当に痛い目に遭った事がないからなのか、とにかく謎の自信に満ち溢れている。


「俺、そこら辺の嗅覚は鋭いぜ? 今まで大怪我をした事もないしな」

「そっか。運命の神に愛されてるんだな」

「かもな」


 そうやって会話が盛り上がっている内に、やがて2人の前に建物が見えてくる。ユウタスにとっては初めて見る、アレサにとってお馴染みのその施設は、2人が目指していた冒険者ギルドだった。

 地上が初めての彼に、アレサが指を差して説明する。


「あそこだよ」

「へぇ、想像していたのよりこじんまりしてるかも」

「どれだけ大きな規模を想像してんだよ。あんなもんだって」

「案内有り難うな」


 ユウタスはペコリと頭を下げる。お礼を言われてアレサは照れくさそうに頭をかいた。


「な、登録したら一緒に冒険しようぜ! 俺はお前が気に入ったよ」

「いいね! アレサが一緒なら鬼に金棒だ!」


 こうしてパートナーの約束をして、2人はギルドに入る。ここで活動するにはまずは登録をしなければいけないと言う事で、ユウタスは早速受付へと向かった。

 受付の人に渡された手続きに必要な書類を、彼はスラスラと淀みなく記入していく。


「では、チームはどうしますか? 傭兵登録の場合もどこかに所属する必要があるのですけど……」

「ああ、もうそれは決めてあります」


 受付の人に所属希望を聞かれ、ユウタスはすぐにギルド内にいるアレサの方を見る。その視線に気付いた彼女は、自分の番が来たと受付にやってきた。


「ユウタスは俺とチームを組むんだよ」

「まぁ! アレサさんと!」

「何だよ? 悪いか?」

「いえいえいえいえ、そんなそんなそんな……」


 アレサに凄まれた受付の人は超高速で顔と手を左右に振った。そのやり取りから、ユウタスは彼女がここで過去に何かやらかしたのだなと直感で感じ取る。


「これならソロじゃないからいいじゃんよ?」

「ですね! 良き冒険を!」


 こうして正式にチームを組んだ2人は、早速ギルドに来ている依頼から仕事を探す事になる。とは言え、ギルドに来た事自体が初めてのユウタスは何をしていいのか分からず、周りをキョロキョロと見渡してしまうのだった。

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