第28話 ガーディアン対アコ

 用意していた武器が全て無効化されてしまい、パニックになった3人は一斉にあちこちにバラけて逃げ出し始めた。


「「「うわぁ~。逃げろ~っ」」」


 ガーディアンは守備範囲から外れれば追跡を止める。そこで、攻撃作戦が通用しなかった場合はそうするようにと、最初から決めていたのだ。


 ただ、守備範囲から外れれば大丈夫と言うのはこちら側が攻撃をしなかった場合に限定される条件だったらしい。前回の経験を踏まえ、ここまで逃げれば大丈夫と言うところまで全員が離れたはずなのに、更にガーディアンは追いかけてきた。

 しかも、その追跡対象は何故かアコ。他の2人が何とか逃げ切れた中、彼女だけはガーディアンに追いかけられて、必死に逃げ回っていた。


「なんで私を追ってくるのよおおお~っ!」


 あり程度逃げ回ったところで、アコは見覚えのある床の模様を発見、反射的にジャンプしてそれを避ける。追いかけてきたガーディアンはそんな無駄な動作はせずに真っ直ぐに彼女に迫ってきた。

 更に、かなりの距離を走って疲れ切ったアコは、床の僅かな段差に足を取られて思いっきり転んでしまう。


「いった~い!」


 迫りくるガーディアン。その手には切れ味の良さそうな剣。腕を振り上げて今まさに侵入者を切り裂こうとした次の瞬間、ぱかりと床に穴が開く。落とし穴トラップの発動だ。哀れガーディアンはそのまま落とし穴に落ちてしまった。

 こうして、彼女はガーディアンの一体を排除する事に成功する。


「お、おお……。やった……」


 落ち着いた彼女は治癒軟膏で擦りむいた膝の傷を治すと起き上がり、仲間の2人と合流するために来た道を戻る。行く手を阻むガーディアンは後一体。この一体への対処はまた3人で集まってから考えようとアコは考えていた。


 しかし、彼女が戻ろうと走っていたところで、会いたくないもう一体の遺跡の守護者に遭遇する。どうやら一体を罠にかけたアコを殲滅ターゲットに認定したらしい。

 顔のユニットが怒りの鬼の形相に変化したそのガーディアンは、両手に切れ味の良さそうな剣を握り、デタラメに振り回しながら彼女に迫ってきていた。


「なんでえええ!」


 その絶望的なビジュアルを見たアコは、焦って周り右すると一目散に逃げ出した。この時、また同じ道に誘い込んで落とし穴に落とそうとしたものの、頭の中が真っ白になってしまっていたせいか、落とし穴トラップとは別の道を走ってしまう。

 走っても走っても見覚えのある床の模様が見つからなくて、彼女は更にパニックになってしまった。


「嘘でしょ? 何で見つからないのおおお!」


 頭の中が混乱して更に疲れが増してしまったのか、アコは気力が尽きてしまい、走れなくなってしまう。肩で息をしていると、すぐそこまでガーディアンが迫ってきていた。この絶体絶命のピンチに彼女は思わず壁に手をついてしまう。

 すると、その部分が押し込まれてまた何らかのスイッチが入ったようだ。この現象にヤバいと感じた彼女はすぐの跳ね退くと、そのタイミングで吊り天井が落下。今まさにアコを襲おうとしたガーディアンはこのトラップに見事に押し潰された。


「ええっ?」


 最初は突然過ぎて唖然としていたものの、罠のおかげで厄介な敵の排除に成功した事が分かると、アコは興奮しながら言葉にならない雄叫びを上げる。


「お、おおお……。おおおーっ!」


 ひとしきり叫んで勝利を実感した彼女は、改めてガーディアンが守っていたエリアに向かって歩き出した。アレだけの強敵が守っていた場所、きっとものすごいお宝が眠っているに違いないと、彼女は期待に胸を膨らませながらスキップしそうな軽やかさで進んでいく。

 そうして、進めなかった先へと向かってみると、そこには立派な装飾が施された大きな扉があり、既にその扉は開かれていた。


「おおっ! やった!」


 その状況から推測するに、どうやら先に仲間の2人がやってきてこの扉を開けて中に入ったのだろう。こうして仲間が無事な事も分かり、アコも急いでその部屋の中に突入する。


「うわぁ~。すっごーい!」


 その部屋はリルのにらんだ通り、遺跡内の宝物庫だった。キラキラと輝くお宝は数々の冒険の経験を積んだアコですら初めて見るほどのボリューム。数々の黄金の装飾品に謎の器具、オーパーツに宝石類。

 総額にしてどのくらいになるのか見当もつかないほどのお宝が、この宝物庫に保管されていたのだ。

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