第24話 本領を発揮するアコ

「うわぁ~。大きな玉が転がってきたぁ~」

「アコ、あんた何やったの?」

「知らないよぉ~。意味深そうな壁画を見つけたからちょっと触ったけどぉ~」

「それ!」


 2人は今、遺跡トラップのお約束の大玉から逃げようと必死になって走っている。シイラは慎重に罠の気配を察知してそれっぽい場所を避けて歩いていたものの、アコは何故かその辺の危機管理がすごく甘く、興味を引くものがあるとつい不用心に欲望のまま動いてしまう。それがトラップを発動させてしまっていた。

 先頭を走るシイラは前方に別れ道を発見。すぐに背後のアコの手を握った。


「こっち!」

「わわっ!」


 2人は脇道にそれた事で大玉に潰される未来を無事に回避する。呼吸を整えながら、リーダーはアコの両肩に手を置いた。


「しっかりして。ここは罠が多いって言ったでしょ」

「うん、ごめん……」


 軽めの圧の一言ではあったけれど、アコはその笑っていない目に寒気を感じる。少し落ち着いたところで、折角なのでここで休憩と言う事になった。

 その後、2人は改めて探索のプランを練る。今一番しなければならない事ははぐれているもう1人の仲間、リルとの合流だ。彼女が今どこらへんを動いているのか、その辺りをシミュレーションして、再び彼女達は歩き始めた。


「ねぇシイラ、この道はどこに続いてるのかな?」

「分からないけど、変なところは触らないでよね!」

「分かってるよもう!」


 信用されていないと感じたアコは感情に任せて遺跡の壁を叩く。この時、またしても運悪く壁の中に仕込まれたスイッチが作動してしまった。

 突然遺跡内に響き渡る重低音が2人を不安にさせる。


「な、何これ……」

「アコ、また変なところ触ったんでしょ!」

「いや、でも……」

「まぁ、いいけど。とにかく気をつけ……うわっ!」


 シイラの説教の途中で天井がいきなり落下してくる。次にアコが発動せたトラップは吊り天井だったのだ。自由落下で落ちてくる天井を2人は思いっきり飛び跳ねてギリで回避する。

 この時、アコの足元にちょうど天井が落ちてきて、彼女は恐怖で絶叫した。


「ひゃああ~っ!」

「全く、命がいくらあっても足りないよ」

「なんかごめん……」

「いいよもう。今度からもっと気をつけてね」


 その後も遺跡の探索を続くものの、このトラップ多発エリア、そのことごとくをアコは発動させてしまう。少し進めばまたしても落とし穴が開き、何とか助け合って穴に落ちずに済んだ。2人が呼吸を整えてその先に進むと、今度は壁から無数の矢が飛んでくる。

 この攻撃的な罠も、シイラの咄嗟の判断で倒れ込んで何とか回避。


 そこからまた更に進むと、またしても吊り天井、落とし穴、壁から矢。油断していると大玉までが転がってくる。侵入者を殺す気満々の遺跡に2人の疲労はピークに達していた。


「本当に、罠が多すぎるよ。何なのこれ?」

「みんなアコが引っかかってるだけだけどね」

「なんでシイラは避けられるのよ~」

「そこはセンスかな。アコも身に着けないといつか死ぬよ」


 シイラの何げない一言にアコは言葉を返せなくなる。自分ではもう一人前と思っていただけに、このトラップ引っかかりすぎ問題は今までの経験で得た自信をなくすのに十分すぎるものだった。

 暗い雰囲気を漂わせたまま、2人は意味深そうな部屋を見つける。この部屋にリルがいるかも知れないと、警戒しながらその中を覗き込んだ。


 その部屋の作りはシンプルで、中には何もなかった。お目当ての人物の姿もない。中を確認したシイラはすぐに立ち去ろうとするものの、一緒に覗き込んでいたアコがバランスを崩してしまい、倒れ込むように2人はこの部屋の中に入ってしまう。


「な、何やってんのよ」

「ご、ごめん。あっ!」


 2人が部屋に入って軽く言い合いをしていると、またしても突然扉が閉まってしまった。自動的に扉が閉まったと言う事はつまり、そう言う罠なのだろう。アコはすぐに立ち上がると閉まった扉を開けようとする。

 けれど、当然のように扉は固く、押しても引いてもびくともしなかった。この事実を前に、彼女は泣き顔で振り返る。


「ど、どうしようシイラ……」

「と、とにかくもう余計なところは触らないで!」

「う、うん……」

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